※アリババと白龍
※マギ
※コミック12〜13あたりのそんな雰囲気
※雰囲気で読んで下さい
※捏造
バルバッドでの一件から自分が次期王子であると誰もが認めてくれているのは、あの町に行くと感じる。それは、幼い頃の差別のようなその視線や謂れを思えば幸せなのかもしれない。それをさせてくれたのは、自分をまっすぐ進むように背中を押してくれたのは、もういない親友の彼らに違いないのだけど。
「始めまして。練帝国第四皇子、練白龍と申します。宜しくお願いします」
そう一礼をしながら声をかけて来た青年が、あの黒いマギのいる国の人間だとはあまり想像出来なくて。それよりも、皇子だという彼が何でも器用に熟す人であることに驚いた。自分もあれからスラムで暮らしていたのでそれなりに王族の兄たちよりは出来るとは思うけれど、それでも料理も裁縫もなんて。よほど彼の姉は彼に自立して欲しいと願ったのだろうかと思う。
料理も裁縫も人並みに、出来ていた。いや、人並み以上だ。彼の詳しい出自は知らなかったが、彼も差別を感じているのかもしれないと、思った。彼は人当たりは至極丁寧で、真面目な青年だ。皇子だからと着飾る素ぶりもない。スラムで育った自分としては非常に有難いものだった。
ザガンを白龍が得て、その後の彼が国に戻る最中の船の中から、陸に上がり戦闘後のその時に白龍は敵である相手を非情にも斬首した。敵の魔法にかかっていたからこそと彼は言ってそこから立ち去った。それでも納得出来なくて、アラジンに頼んで白龍を追い掛けた。同じ、迷宮を攻略した仲間なのだからとそれだけでは出来ないと思ったから。このまま、対立なんて嫌だった。こっそり、アラジンに絨毯で連れて来てもらって様子を伺う。そこには、無心に槍の型を続ける白龍がいた。目には涙が零れ、腕からは血が流れている。あれは魔力操作の酷使によるものだと、以前ザガンの迷宮でのやり取りをモルジアナから聞いていたので知っていた。やめろ、やめてくれ。迷宮で彼が怪我をしたのも見ていたのに、何故か嫌で(しかも今は片腕を失っているのだ)気付いたら白龍を抱きしめていた。びくりとした、その彼の瞳に自分が映る。それは当たり前の事。当然だ。向かい合えば、誰がいようとも相手の目の中には相手の姿が映り込む。なのに、それなのに、それが酷く嬉しくて衝動のままに彼にキスをしていた。女のそれよりもかさかさしているのに、甘くてもっと欲しくなった。ああ、俺もしかして男が好きなのかと自問自答していると、どんと突き飛ばされる。
「…っ、なにするんですか!」
「俺は白龍が好きだ!だからあんな別れ方したくない!」
唐突に、彼に愛の告白をして、だけどやってしまった、なんていう後悔はない。それが自然の流れのようだった。
「俺は男です」
「知ってる。それに、料理も裁縫も上手で、姉貴思いで、泣き虫で、優しい奴だ」
泣き虫、の所で白龍がむっとした顔をした。ならなぜ、俺を好きなんて言うんですか。俺は、きっとあなたとは一緒にはいれない。確かに、王子という立場はおなじでしょう。けれど、俺と貴方では立ち位置も周囲の思惑も全てが違う。俺は貴方の様には優しくなれない。だから、ここでお別れです、アリババ殿と真っ直ぐに見つめられてそれはもう半分は現実になるものだろう。けれど、嫌でその身体を押し倒してしっかり着込まれている服を緩めてその、肌へ唇を寄せた。どうか、そんな悲しい事は言わないで欲しい、と囁いてまだ驚いたままの彼の唇に再び、キスをして愛を囁いた。
いかないでくれと
END
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