ごっこ遊びの延長線上。 「なんでも言うことを聞きます」なんて言われたら暴走するに決まってる。 実際の黒子はそんなことは言っていないがなし崩し的にそうなった。 肉欲に二人してハマりこんでしまっていた。 好きな気持ちを伝えないままひたすらに校内でエロライフ。 ※肉便器、その甘美なる響きにあらがえる者はなかなかいない。 純情、従順、素直、献身、快楽の奴隷、考えなし、肉欲中心両片思い 玩具/尿道/授業中の悪戯/校内エロマップ/羞恥プレイ/為にならないエロ家庭教師 人を選ぶようなエロの表現が多々あり。 試験管を黒子の中にinしたりします。 (黄黒は仲良しです! 酷い描写、痛みがあることはしません) 黄瀬君専用なので男性向け的な肉便器っぽさはない……純愛と言いたいところですが、エロに偏り気味は否めない。 依存症-------黄瀬君専用肉便器サンプル シーンは飛び飛び抜粋 気持ちのいいことに対して黄瀬は耐性がなかった。 女性が周りにいたとしても自分から近づこうとは思わなかった。周りにどう見えたとしても人に深入りしないように生きていた。黄瀬は黒子のことを最高の親友だと思う。自分のことを心配してくれて自分のために進んで汚れ役をしてくれる。 黒子だって気持ちがいいのかもしれないが絶対に黄瀬が得をしているだけだ。だって、そう、普通に考えたらおかしい。 『ボクを黄瀬君専用の肉便器にしていいですよ』 そんなこと普通出てこない言葉だ。黄瀬は聞き間違いを疑った。どんな会話の流れならこうなるのかといえばエッチの最中だ。黄瀬が黒子に夢中になって溺れている時にこんなことを囁かれてしまえば自然と素直にお願いしてしまう。 ツンツンとした態度で黄瀬を翻弄したと思ったら黒子は優しく黄瀬を受け入れてくれた。持て余した欲望を自分の肉体で受け止めると言ってくれた。これが友情でなくて何だろう。 (持つべきものは友達っスね) 感動している黄瀬を黒子は教室に戻るように急かす。 結局サプリメントを飲み続けないといけない。 飲み始めてから体質は変わった。 疲れにくくなった。だるいような気持ちは消えた。 ただ、射精時の快楽が大きい。 それだけをし続けたいぐらいに性行為が気持ちがいい。経験などがないせいで黄瀬は自分で自慰ができない。この頃は黒子とのことを想像することで勃ったりするが自分で触れてもたいした快楽を得られないのを知っているので家でいじったりしなかった。黒子も全部自分が処理をすると言ってくれたので任せてしまっている。普通に考えればおかしいのかもしれないがこれでいいのだ。 『尿意をもよおしたらトイレに行っておしっこします。それと同じで勃起して射精したいならボクを呼んでください。ちゃんとボクが処理してあげます』 朝早く部活の朝練の前に手や口で出させてもらった。 黒子の技術は一級品で堪えることもないせいか黄瀬はすぐに達してしまう。 部活の後にもわずかな時間で黒子にお願いして抜いてもらう。その手腕は百戦錬磨を自称するのも理解できるぐらいに上手い。黄瀬の忍耐力が低いのではない。黒子がすごいのだ。そして今。昼休みにもなっていないのにもうすでに三回も黒子に面倒をかけている。 (全然疲れてない……) 活力が身体に満ちていてまだまだいける。 隣にいる黒子を見て抱きしめたいなんて気持ちが芽生えたが人の目がある廊下でそんなことをすれば殴られるに決まっている。今日はもうなしだと非情な宣告を受けたら黄瀬は部活を休むかもしれない。そのぐらいに身体のうずきは黄瀬を蝕んでいた。 これもこれで一種の病気なのではないのかと考えなくもない。口にしたら最後、黒子に見限られてしまうかもしれない。 「黄瀬君、大丈夫ですか?」 「……大丈夫じゃないっスよ」 強がらないで素直に自分の状態を口にする。けれど、時間もないのですぐにでも黒子に触れたい、なんてことをアピールすることはできない。怒られてしまうのが分かっているのにそんな発言できるはずがなかった。 「噂になると困りますから今度は別の場所で待ち合せましょう。音楽準備室なんてどうですか?」 「あ、いいっスね」 音楽室は防音だ。音楽準備室は音楽室の隣にある楽器などをしまっている部屋のことで元々の音楽室に壁や扉をつけて部屋を分けたもののことだ。 昼休みや放課後は吹奏楽部が練習をしているので出入りがあるが普通の休み時間は授業でもなければ無人のはずだ。 「学校のいろんな教室を制覇してくのもいいっスね」 調子に乗るなと言われるかと思ったが黒子は瞳を輝かせて頷いてくれた。意外に黒子もチャレンジ精神にあふれる男だ。 新しいことをするのが好きなのだ。そうでもないと黄瀬に付き合ってくれなかったかもしれない。 「じゃあ、黄瀬君」 黄瀬の教室の前で別れるのは黒子が紳士的だからだ。 自動ではない扉を通るまで押さえていてくれるような優しさに気づいてしまうと心が穏やかなものになる。黒子のいいところというのはとてもささやかで分かりにくく、だが同時に絶対的だ。黄瀬が気づきもしなかった部分に黒子テツヤはいる。考え方は違っているがそれがとても心地良い。 「またね、黒子っち」 黒子のおかげで平常心で授業に臨める。 勉強というよりも頭を使うことが黄瀬は苦手だ。 だから授業もそんなに好きじゃない。だが、黒子と約束した。小テストでいい点をとったら休日は丸々一緒にいてくれると黒子は黄瀬に言ったのだ。いつも一緒に遊びに行くのを断られていた黄瀬としては嬉しくてたまらない。楽しみだ。 (黒子っちとどこ遊びに行こう) もう小テストでいい点を取ったつもりで考える。 週末から泊りで遊びも許してくれるだろうか。 それなら星が綺麗な山がいい。 ロマンチックに満天の星空を二人で見るのだ。 空気が綺麗な山のペンションで二人っきりを満喫するのだ。 人目を気にすることのない場所が黄瀬は楽だった。 外面を取り繕うことなくありのままの自分でいられる。黒子にはすでに情けない姿もバレているので気にならない。怖くない。もう今の黄瀬がこの世で怖いのは黒子に嫌われることだけだ。それはエッチなことができなくなるからじゃない。黒子が黄瀬の中で唯一の人間だからだ。 黒子のことを考えると胸があたたかくなる。安心できる。それは下半身の疼きとはまた違う。性欲ではない胸を満たす気持ち。それの名前を黄瀬はまだ知らない。自分が今まで人からぶつけられていたものが何であるのかも分かっていない。 黄瀬にとって恋愛というのは一番近くてそして何よりも遠いものだった。 近くの席に座る女子が「黄瀬君どこ行ってたの?」と聞いてきたが曖昧にはぐらかす。黄瀬の反応が不満だったのかヒソヒソと噂話をされたがそれだけで終わった。 教師が来たというのもあるがみんな溜め息を吐くだけで力なく自分たちの席に戻ったからだ。黄瀬の周りに集まって質問攻めにしてこない。以前なら教師が居ても居なくても喧しいぐらいに黄瀬のそばにいた彼女たちは静かになった。 (これが普通っスよね) モデルだろうと外見がよかろうと一時的に騒がれるならともかく常時構われる状態は異常だ。 (いくらオレが格好良くても何もしないでボールペンを回してるだけで「キャー」なんて言われるのはないっスわ) 自分の周りは異常だ。それを黄瀬は確信して気持ちが悪かった。以前、それを黒子に愚痴ってお腹をくすぐられた。 『黄瀬君なんて、こうです』 真剣な顔でくすぐりにくる黒子が可愛くって仕方がない。 授業中でも考えるのはやっぱり黒子のことだった。 早く黒子に会いたいと思いながら黄瀬は携帯電話をいじる。 怒られるので非常時以外は黒子に連絡を入れないが黒子のメールを読み返すぐらいいいはずだ。これが黄瀬の勉強へのやる気の出し方。 黒子のおかげで学校に来やすくなったと思いながらパスワードをつけた画像フォルダに無意識でアクセスしてしまう。授業に集中していないのがバレバレだが注意されることはない。 黄瀬にケンカを売ると女子からクレームがつくからだ。 女子に睨まれると怖いのはどの業界でも同じだ。 彼女たちはネットワークで繋がっている。 どんな内容かは知らないが黄瀬のことも別のクラスの女子たちと情報を共有しているらしい。 教師も人間だ。面倒事には関与しない。授業を妨害しているわけではない黄瀬の行動に口うるさくはしてこない。 画像フォルダに入っている写真は全部黒子のものだ。ちゃんと本人に撮影許可を撮っている。 撮った後に慌てたり恥ずかしがったりしながら何度も「消してください」と言われているが黄瀬は一度も消すなんて答えたことはない。はぐらかしてここまで来た。撮りためた秘密のお宝は誰にも見せられない状態に日々進化していた。流出すれば黒子に迷惑がかかる。 服を脱ぎながら挑発するように笑う黒子。 上目遣いで黄瀬の性器を口に入れている黒子。 舌先を白濁液で汚している黒子。 黄瀬の上に乗って動いている黒子。 後ろから黄瀬に犯されている黒子。 白濁液まみれで黄瀬を横目で見る黒子。 肩に上着だけかけて裸のまま水分補給をしている黒子。 個人的に好きなのは黄瀬に触れている姿ではなく服を着ている最中の黒子だ。初めて繋がった日であり、黒子を撮影したのもこれが初めてのものかもしれない。この写真が何より一番大切だ。黄瀬が撮影しているのに気付いてはにかんでいる。この後、黒子は一人で帰るのではなく立ち尽くしている黄瀬に手を伸ばして「帰りますよ」と言ってくれた。 思い出すだけで涙腺が緩む。 制服をきっちり着た黒子は気持ちを切り替えたようだった。黄瀬は切り替えたのではなく切り捨てられたと思った。呆れられてもう終わりだと告げられたのだとマイナス思考になった。それは黄瀬の勝手な思い込みだ。黒子は黄瀬のことなど忘れたような表情の動かなさを見せていた。今までの時間がなかったことにされたのだと黄瀬は傷ついたが手を伸ばしてくれた黒子にちゃんと考えてくれていたことを知る。 別々に帰って明日からは今回のことには触れない。そうやって離れていくような気配が黒子にはあった。だから思わず黄瀬は携帯電話を構えて写真を撮ったのだ。目の前にあることを忘れないための写真。 当たり前なのかもしれないが感動してしまった。忘れられていない、呆れられていない、そのことが嬉しかったのだ。黒子に初めて触れたときに黄瀬は泣いた。 恥ずかしいとか情けないとかいろいろと この時に手を繋ぎながらもまた泣いた。 ありがとうという感謝の言葉だけでは足りないものがあった。胸が熱くなってじわっと広がる。流れ出した涙にはちゃんと意味があるはずだが黄瀬はまだ分からない。 略 黒子は自分の最低さを理解している。 ノートをとりながら黒子は授業を聞きいていない。 何も頭に入ってこなかった。黄瀬のことばかり思い出す。黒子は黄瀬のことを騙していた。知られたら絶対に嫌われる。 ――黄瀬涼太は人の好意を信じない。 人間が嫌いなのではなく「愛情」というものを神聖視している。黄瀬が想像する愛というのは清らかで美しく高潔なものであるべきなのだ。肉欲はそこに挟まらない。 相手と会話をするだけで幸せになれるそんなものを黄瀬は愛と呼ぶ。黒子はきっとそんなものを与えることは永遠にできないだろう。 自分が薄汚いものだと黒子は自覚している。 だから、黄瀬のことを身体だけでも欲しかった。 心はいまさら求められない。告白したところで黄瀬の考えを変えられそうにはなかったから今のままでいい。 長くは続かないものだと分かっている。 だとしても、感じていたい、触れていたい。 黄瀬になら何をされてもいいぐらいに好きだと思っている。 伝えてしまえば何もかも終わる。 黒子は嘘つきだった。そして、これからも嘘をつき続ける。黄瀬の勘違いを利用し続ける。そうしないと保てない関係だ。 味方だと思って黄瀬は黒子に心を許しているがその実、誰より一番、黒子が黄瀬を裏切っている。 黄瀬を見ていてわかったのだ。黄瀬は自分のことを好きな相手を嫌う。好かれていることが当たり前だから驕っている。 強引に迫ってくる女性全般を忌避し、それを見て苛立って冷たく黄瀬をあしらっていた黒子に対して心を開いた。黄瀬は馬鹿だが純真だ。頭が回らないので黒子に騙されるが打算の匂いに敏感だった。 だから、自分のことを褒める人間があまり好きではない。褒められるのは当然だと思っている。そして、褒めた後に自分をどうにかして操ってこようとしていると察している。それは正しいかもしれない。 以前の友人という距離感よりも近くにいて分かったことだが黄瀬に取り入ろうとしている人間は多い。甘い汁があるのかどうかは知らないが黄瀬と一緒にいることで女性との出会いは増えて交友関係は広がるだろう。黄瀬涼太を踏み台にするのだ。そういう打算から黄瀬は距離をとる。利用されるのが嫌なのではなく単純に格下の人間が嫌いなのだ。 立場だけしか見ていない人間も軽蔑している。 外見だけで自分を評価する人間を侮蔑している。 同時に黄瀬は自分の魅力というものを理解して自覚しながら勘違いしている。本人にそのつもりがないところが最悪だ。 自分が選ばれた存在で人よりも優れていることを意識しながら周りに対して「どうしてこんなことができない」なんて勝手なことを思っている。 黒子からすべて傲慢に見える黄瀬の考え方だが黄瀬にとっては今まで実際に味わってきた中で当たり前のことなのだ。 積み上げられたプライドはそう悪いことじゃない。 だが、黄瀬は屈折していた。自分自身に自信がない。 そうでもなければ人の好意を無下にはしない。 黄瀬はとても潔癖症だ。 愛情は純度百パーセントでないと認めない。わかりやすいものが頭を使わず理解できるからいいのかもしれない。 だからこそ実力主義の世界が好きなのだろう。 頑張って出した結果を認められる場所。実力社会。 そこで自分のテリトリーを広げるのが黄瀬だ。 自分一人で何でもできる黄瀬から見て人の機嫌を取ることで生きながらえる相手は理解できないはずだ。頭ではわかっていても嫌悪する。自分に取り入ろうとする人間を拒絶するのもそこからきている。 (ボクがしているのは黄瀬君に対する嫌がらせになるんでしょうね……やっぱり……) 黄瀬が口にした心に抱えた悩みは黒子がどうにかできるたぐいのものではない。それなのに黒子は理由をつけて協力者という立ち位置にいた。 黄瀬のことが好きだからだ。 好きだから黄瀬がモテている姿が嫌でイライラして冷たくしていた。黄瀬は黒子が自分のことを嫌いなのだと思って安心して近づいてきた。そのあたり、黄瀬のひねくれたところが見える。 自分のことを好きな相手のことを黄瀬は信用していない。 色んな人に愛されているくせに黄瀬は愛に飢えているなんてふざけたことを口にする。告白してきた女子生徒に申し訳ないと思わないのだろうか。思ってないのだろう。彼女たちが自分のことを好きだと信じてなどいないから何を言われたところで黄瀬の心に届かない。 考えるとこれはどちらも不幸だ。黄瀬自身も黄瀬を好きになった相手も不毛だ。けれど、黄瀬本人にその自覚はない。 略 見ないでと言われたことを無視して黄瀬は黒子が処理をしている姿を見ていた。ウエットティッシュで体をふいている姿に興奮してしまうのが申し訳ない。 黄瀬も自分の股間をタオルでふいたりチャックの近くが精液で汚れていたのでティッシュでぬぐったりした。 黒いズボンなので目を凝らすと気になるがシャツを外に出してズボンの前を隠すようにした。ちょっとダサいが家までの辛抱だ。ジャージを着るのもいいかもしれないと思ったが部室のロッカーに取りに行くことになる。 別に黒子は女の子らしくない。中世的な印象は多少はあるがそれでも触れた感覚も性格もどこもかしこも男らしい。男でしかないのに黄瀬を待たせているからか恥じらいながらも早く身支度を整えようとする姿はいじらしくてかわいいと思った。抱きしめて守ってあげたくなる。黒子が弱いと感じているのではなく黄瀬が自然とそうしたくなる。先ほど幽霊がどうとか言い出した黒子に黄瀬はとても興奮した。 怪談話でもしながら犯して泣かせてやりたい気分になったが黄瀬がそこまで怪談ネタが得意ではなく話の引き出しもなかったのでやめた。脅かしてやろうと思ったことを隠している黄瀬にとって黒子の反応はピンポイントで良心を責めたてるものだった。黄瀬に身を任してくれた黒子の信頼を裏切らないためにもこれから先ずっと黒子が怖がるようなことはしないと決める。黒子に頼られたい気持ちになったばかりに黒子に危害を加えるなんて本末転倒だ。 (なんか…………意外) 黄瀬の中の黒子はどこか飄々としていて「お化け? 友達ですよ」と答えそうなところがある。表情が読みにくいだけで黒子もいろいろと考えているのだ。 (……好きな子とか、いたり?) 顔に出さないだけで居るのではないのかと黄瀬の思考は飛躍する。もし、黒子にこんなことするのはイヤだと言われたら、そして、その理由が恋人が出来たからだと言われたら黄瀬は人生に絶望する気満々だ。自信を持って言える。黒子に見捨てられたら生きていけない。性的なことじゃない。心の支えが音を立ててへし折られてしまう。 「……く、くろこっち。オレのこと、捨てないで」 後ろから黒子を抱きしめると不機嫌そうな顔で振り向かれた。怒っている。もう終わりだと悲観する黄瀬に「急にどうしたんですか」と黒子が声をかけてくれる。 「黄瀬君、ちょっと……キミ、泣いてるんですか?」 「エッチなことばっかしてオレのこと呆れてる気がした」 毎日毎日、黒子を付き合わせてしまっている。とりあえずは一か月だけという話だったが黄瀬は期限が来ても黒子を離すつもりなどない。拝み倒して継続させてもらうと考えていた。そんな浅はかで自己中心的な考えは読まれているはずだ。 黒子はものすごい頭がいいわけではなかったが真剣に物事を考えるタイプだ。 「ごめん、黒子っちにわがままばっかり言って、ごめん」 嫌われたくない。そう思うと強気な言葉は出てこない。 これが黒子じゃなければ来るものも拒んでも去る者は追わない。他人に対する興味が黄瀬は欠けていた。 自分の体臭が魔法のように相手を魅了すると信じていたのでどんな言葉も信頼も愛も薄っぺらで気持ちの悪いものだ。 黒子は違う。そうであって欲しい。黒子が自分の特別であればいいと黄瀬は何度も思っていた。 「離してください」 抱きしめていたいのに嫌がられることに少しだけ安心する。 「まだボタンが……」 「オレがハメてあげる」 後ろから黒子のシャツのボタンを留めていく。 とてもドキドキして落ち着かないのに後ろから黒子のことをしているのだと意識すると気分が上向く。 「黄瀬君、なんか楽しそうですね」 「黒子っちに触れてると安心するっスね」 安心毛布、ブランケット症候群などと呼ばれる現象かもしれない。姉に黒子の話ばかりして笑われながら言われた。 『その子はアンタの精神安定剤なのね』 依存しすぎていると言われても他にどうすればいいのか分からない。黒子が許してくれることに甘えて際限なく求めてしまうがそれを責めることが出来るのも拒絶できるのも黒子自身だけだ。黒子が黄瀬を拒絶しないのに黄瀬が求めるのをやめるはずがない。 「黄瀬君、ずるいです」 心を見透かされている。黒子の言う通り黄瀬はずるい。優しいから黒子が困っている自分を見捨てるわけがないと高をくくっている。かわいそうな自分を演じているわけじゃなかったけれど黒子の同情を引こうとしてこれ見よがしに傷をさらした記憶はある。自分はこんなに困っていて傷ついているのだから助けてくれるのが当たり前だ、そんな論調で黒子にお願いした。抜け出したかったのだ。心の通わない会話から逃れたかった。 (愛して欲しい、愛して欲しい――だれに?) 黄瀬の心はまだまだ未発達なのかもしれない。 頭を悩ますことをしてこなかったせいで考えが足りない。 本当は誰の目にも明らかなのかもしれない答えに辿り着けないでいた。 「勉強、頑張るから……一緒に旅行に行こう」 「子供だけで遠くに行くのはダメです」 「もう大人っスよ」 黒子の制服を整えながら黄瀬は笑う。 「遠くに行くのは大人になってからです」 頑固だと文句を言おうとしたが「大人になったらいいんスか?」と黄瀬は聞き返す。 「はい、大人なので遠くでのお泊りも大丈夫です」 大人になるまでこの関係が続いているかいないかはともかく黒子は頭ごなしに黄瀬の望みを否定しているわけじゃない。 「行きたいなら、二人でいろんなところに行きましょう」 言いながら黒子は黄瀬の手を握る。 それが嬉しくて泣きそうになってしまった。 嫌がられているわけじゃない。 (モデルのバイト代…………全部貯金して、黒子っちとの旅費にしよう。大学なら、大人かな……成人しないとダメかな) 考えるとワクワクしてきた。 「じゃあ、小テストでいい点を取ったらウチに泊まって!!」 笑って黒子は「はい」と言った。条件を付けるのでもなく、考えるだけでもなくちゃんと約束してくれた。黒子はきっと嘘をつかない。頑張ったら頑張った分だけ黒子は黄瀬の願いを叶えてくれる。 それは優しいからで、友情だ。 考えると嬉しいはずなのに少しだけ空しくなる。 何も悪くないのに何かが零れ落ちたような空虚感。 略 黄瀬は何も悪くない。黒子がないものねだりを続けているだけだ。黄瀬涼太が欲しがる真実の愛なんてどこにもない。 あるいは、そう。黒子は自分だけが持っているのだと黄瀬に打ち明けてしまいたい。 (――これは依存だ。ボクは黄瀬君に依存している。黄瀬君もボクに依存してる。そう、ボクが仕向けている) 誰が悪いのかといえば黒子自身だ。 全部、黒子が悪い。そして、黒子のシャツをはぎ取りながら満足げな顔をしている黄瀬も悪い。 鎖骨に肩にわきにおへそにキスをしていく黄瀬は悪い奴だ。 こちらの気も知らないで楽しそうな顔をしている。 黒子に触れるのが嬉しいのだ。 服を脱がされ外気に触れて鳥肌を立てる黒子の皮膚を撫で上げながら黄瀬が目を細める。 ライトの明かりはろうそくの炎よりも大きくてしっかりしているが天井にある照明に比べれば明るさは足りない。 全体を明るく照らす蛍光灯ではない一転集中のライト。 照らされて浮き上がる黄瀬の輪郭は妖しく艶めかしい。 思わず見入っていると黄瀬の顔が近づいてくる。キスをされるのかと思ったが黄瀬の唇が触れたのはおでこだった。そして次に耳。くすぐられているような触れ方に黒子はわずかに身体を後退された。 朝練がないせいで黄瀬は加減などしないに決まっている。 あと、三十分で人が確実に十人ほどやってくる場所で黒子は黄瀬に裸にされていた。黄瀬はズボンと下着だけをおろす。 黒子は周囲を汚さないために自分にコンドームをつける。その上でタオルを巻きつけて輪ゴムで固定する。 不格好な見た目になるが動きが激しいとゴムがずれてしまう。正確にいえば黄瀬が黒子が射精した後にお構いなしに動かすから精液を受けたゴムが外れてしまうのだ。 ただでさえ萎えて外れやすくなっているのに乱暴に動かされれば当然とれて中の精液をまき散らすことになる。 ダメだと黒子が言っても黄瀬は聞いていない。 いいや、黒子が言っているつもりになっているだけできちんと声は出ていないのかもしれない。 いっぱいいっぱいになってしまって要領を得ない喘ぎだけをあげる自分を想像すれば黄瀬に無視されるのも仕方がないと思える。 「なんか、これ……とりたいっス」 ジッと黄瀬は黒子の完全武装を見る。 あきらかに目立つのでそう言われても仕方がない気はした。 「ちゃんとオレが黒子っちを綺麗にするから、外そ?」 せっかく汚れないように対策を立てた黒子の苦労を考えることのない黄瀬にイラッとした。誰のせいだと思っているのかと問い詰めたくなる。 「大丈夫だから、外そ?」 ちょっと小首を傾げながら口にするのが黒子の苛立ちを倍増させた。女性の仕草ならかわいげもあるが黄瀬は正真正銘の男だ。デカい図体でかわいらしく振る舞う。女性的であるとかなよなよしいわけではない。子供が舌足らずに甘えてくるような形なのが嫌になる。 思わず「仕方がないですね」と折れてしまいたくなるのだ。黄瀬涼太の持ち合わせるずるさが黒子は憎たらしい。好きだとしても時々、殴りたくなってしまう。甘えた声で泣きつけばいいと思っているずるさが見えるのだ。 「黒子っち、ねえ? ダメっスか?」 この甘えた声が黒子への武器になるとわかってやってる。 「キミのその言い方、ムカつきます」 「ムカつかないでムラッとしてよ」 萎えることを言われると取れてしまうかもしれない。 手でタオルをガードする黒子に黄瀬は「オレも脱ぐから」と譲らない。ダメに決まっている。仕度に時間がかかったらそれだけでリスクが上がる。 ここは学校だ。 あと、一時間程度で授業だって始まる。 部員たちが来るまでなら、あと二十分もないかもしれない。 「オレが脱がないなら黒子っちも脱がないでよ!」 よく分からないことを言い出すのは黄瀬の得意技だ。 説得するにも骨が折れる。 黒子は仕方なく「言い争ってたら時間なくなります」と服を着こむ。なんだかんだで朝練の後にいつも黄瀬にしていぐらいの時間しかなくなってしまう。制服のシャツのボタンを留めながら口だけでいいかと聞けば「なんでっ」と叫ばれた。 文句を言い続ける黄瀬に明日があると伝えてもイヤだと首を横に振られた。 「ほんっと、黄瀬君ってわがままです」 溜め息をつきながら黒子は黄瀬の股間に触れる。 「いやいやいやっ」 駄々をこねる黄瀬を黙らせるために舌を出しながら黒子は性器の近づく。だが、口に入れないし、舐めたりしない。 口を開け続けたことで唾液が出るがそれは手で受け止める。 汚いような気もするが同じことを黄瀬の前でする時は唾液で濡らした手で性器をしごくためだ。ローションを日常的に持ち歩いていなかったので唾液を潤滑液代わりにしていた。 そのことを思い出した黄瀬は唾を飲み込んだ。唾液に濡れた手でこすりあげられる気持ちの良さを思い出したのだ。 どうされたいのか言ってみろとばかりに黒子は動かない。 主導権をとるというのはこういうことだ。 上目遣いで見つめていれば黄瀬が顔を赤くしながら「お願い、舐めて」と頼んできた。 「……なめ、るだけじゃなくって、……うんっ、そう、そこ」 唾液で濡れた手で黄瀬の竿をこすりあげながら黒子は頭を上下に動かした。舌で舐めるのではなく吸うようにしながら動くとアゴが疲れる上に息苦しい。 だが、目に見えて黄瀬が気持ちよさそうなので我慢できる。 嬉しそうな黄瀬の顔に黒子は萎えそうだなんて思っていたことが嘘のように自分の下半身に血が集まっていくのを感じた。黒子の名前を呼びながら足を震わせている黄瀬にもうすぐだと動くスピードを上げた。 ちょうど黄瀬が黒子の口で射精した瞬間、室内の照明が一斉につけられた。 一度出したモノを止めることもできず黄瀬はそのまま射精を続けるが表情は死んでいる。口の中に入り切れない精液を黒子は片手で受け止めながらもう一つの手で自分の服と鞄を引き寄せた。すぐには着替えられないが頑張るしかない。 扉が開けられた瞬間に黄瀬は「すみませんでした!」と大きな声で謝った。 入ってきたのは想像通りに美術部の方々だ。 黄瀬がいることに驚きつつも先に謝られたこともあるからか「どうしたの?」と口々に聞いた。近寄ってくる気配を感じて黄瀬が大きな声で「そこに!」と口にする。 「ボールペンとか落ちてないっスか?」 自然に黄瀬が黒子のほうを見る。黄瀬の考えを察して黒子は自分の筆記用具からボールペンを取り出して音を立てないように転がす。 「昨日、たぶん……ここでなくしちゃったみたいなんスわ」 やってきた美術部は黄瀬と同じクラスの二人組らしい。 納得したように床を探してくれた。 「あ、あったよ。黄瀬君」 ボールペンを握って持って来ようとする相手に黄瀬は「助かったっスよ。消しゴムもないっスか?」と聞いた。黒子は自分の消しゴムを握り、今度は床にはまだ投げない。 「黄瀬君、真っ暗のまま探してたの?」 気さくに黄瀬に声をかけながら部屋の隅などを見てくれている彼女たちを傍目で見ながら黒子は制服を着こんでいく。 「スイッチがどこにあるのかわからなくって……あ、ライトごめん。勝手に使っちゃった」 両手を合わせる黄瀬に対して「あー、いけないんだ〜」「それ、動かすの禁止なんだよー」なんて言われているが「ちゃんと直しておいてあげる」とフォローされている。外見がいいだけで人生は違うのか黄瀬の人徳のなせる技なのか。 「部活の人以外はこの時間、入っちゃダメなんだよ」 いつも授業で使われている部屋であってもそういった決まりがある。何かあった時に問題になるからだ。 「ごめんっ。誰にも言わないで! マジで探しに来ただけなんスよ」 焦った黄瀬の声に笑い声が二つ分響く。 女の子は二人いるだけで華やかだと思うと悔しくて黒子は黄瀬が下着の中に汚れたままの性器を入れようとするのを阻止した。手を止められて視線だけで黒子を見る黄瀬。何をするのかと言いたいのだろう。なんとかやり過ごせそうなのに下半身丸出しのところを見られたら最低だ。 黄瀬の性器を黒子はまたくわえる。そして、吸う。 じゅるっと響く音に黄瀬がビクついているのが笑えた。 やめるようにと小声で言われたが無視だ。 変な動きをしたら注目されてしまうのにこんな中で勃起してしまった黄瀬が悪い。 「うーん、ごめん。黄瀬君、消しゴム見当たらないよ」 「そっか……ちょっと、このまま探してていい?」 「いいよー。うちら、スケッチ取りに来ただけだから」 「他の子たちが来る前に引き上げないと面倒かも」 「黄瀬君、有名人だからねー。モデル頼まれちゃうよ」 取りに来たというスケッチブックは入り口付近に積んであったものらしい。ボールペンはここに置いておくとテーブルの上においてくれた。渡しに黄瀬のところまでこなかったのは空気を読みすぎてて怖い。本当は黄瀬が何をしているのか、ココに黒子もいるのだと知っていたりするのではないだろうか。そんなことを想像させられる。 「ちょ、……もうっ、黒子っち。……何すんのッ!!」 「キレイにしてあげようとしたら勃ちました」 「いや、……それは、だって」 口の中で言い訳するような黄瀬に黒子は「やめますね」と言えば「お願いします」と頭を下げられた。黄瀬は快楽に弱い。頭が悪いのかもしれない。 (おバカさんだからボクみたいなのに捕まるんですよ、キミ) 微笑みを隠すことなく黒子は見せつけるように黄瀬の性器をしゃぶる。おいしくなくて楽しくもないのに苦痛はない。黄瀬を操っている気分にすらなった。 略 口元を手で押さえていると授業中なのに鉛筆を持つこともできない。 声を抑えるのに精いっぱいで先生の声も聞こえない。 昼食の後は眠りやすいからと黄瀬に言い含められてつけることになった道具は黒子の想像を超えていたい。 身体の中で暴れ回るローターの振動。 イボイボがあるディルドをいい具合いに黒子の内壁にこすりつけてくる。口から泡を吹いて失神しそうになるのを授業中だと思うことで耐えていた。すぐにトイレに行って中に入れられたディルドやローターを取り出したい。頭が真っ白になって何も考えられないからとにかくリセットしたい。 この状態を周りに悟られないで済んだのはいつも注目されないでいる影の薄さのおかげだ。 だが、ローターのモーター音が周りに聞こえていないか気になって落ち着かない。本当はみんな知っているのではないのかと疑心暗鬼になる。知っているのに言わない理由もない。集中できないからやめるように周りだって思うはずだ。ローターの振動ではなく携帯電話のバイブだと感じるだろう。 携帯電話がなんともなかったら身体検査をされて音の原因を探られる。そうしたらバレてしまう。授業中にこんな変態的なことをしているのをみんなに公表されて明日から学校に来れなくなる。 そうなったらそうなったで黄瀬は責任を取ると言った。 責任などとれるわけがない。 毎日、黒子を犯しに家にやってくるのは責任なのか個人的な楽しみなのか。 そんなことより重要なのが授業中にもかかわらずこんな状況になっている自分だ。 拒絶することだってできたのにされるがままになっている。 そうすることで黄瀬にとって都合のいい相手を演じようとしているわけじゃない。 ただ黒子はしたかった。 エッチなことがしたかったのだ。 黄瀬を引きずり込むだけでは飽き足らず自分も奈落へと落ちていく。快楽は止まることがなかった。足を組み替えるだけで気持ちがよくて泣き出すほどにいい。ローターの振動が脳天を揺さぶる快感で何度味わっても足りない。 性器の根本を締め付けて射精できないようにしているのに気持ちがよくなるのは止められない。 (ま、また……イッちゃう) 身体をビクビクと痙攣させて黒子は机に突っ伏した。 息を吐き出しながら達した余韻に浸っていれば、授業が終ったらしく周りが教科書やノートをしまって立ち上がって動き出した。 何をする気力もなくぐったりしている黒子の耳に女生徒の黄色い声が届いた。 「王子様が迎えに来たっスよ〜」 機嫌よく現れた黄瀬に何かを言う気力もない。 発行:2014/03/30 |