カプセルトイ、いわゆるガチャガチャから黄瀬が現れた。
黄瀬が現れた。黄瀬が現れた。黄瀬が現れた!!!
増殖するように様々な年代の黄瀬に囲まれながら黒子が思うこととは……。
一方そんなことを知らない黄瀬は黒子に急に避けられて色々と道を踏み外す。
黄瀬涼太のスパイ大作戦という名のヤンデレ行為。

※タイトル同じ青峰のものとは関係ないイロモノエロラブ黄黒です。


幻想遊戯ガチャガチャin黄瀬 パーフェクトタイム
サンプル



――ちょっと、待ってください!

 そう口にしようとして出来なかったことが黒子の運命を決めたのだとしたら神様は残酷すぎるだろう。そもそも神様は存在しないのかもしれない。存在していたとしたらこの奇跡はきっと神様の悪戯だ。祟りかもしれない。
 神様の道楽に消費される自分を嘆くべきなのかすぐにでも現実逃避をやめて目の前の黄瀬涼太に対処するべきだ。
「黒子クンって男もイケる口っスか?」
 厭味ったらしく言ってくる黄瀬に黒子は頭が追い付かない。一番初めに言うべき事は「貴様、名を名乗れ」と時代劇風に言うことによって冷静さを演出するか「お久しぶりですね」と驚いていないように平静を装うか。どちらにしても本当に何も感じないなどは黒子であっても無理だった。どんな理由があって数年前の人間が目の前に現れるのだ。見下しまくって上から目線の黄瀬涼太。それは確かに懐かしい。最初はそんな態度でしたね、キミ、と言いたくなる。
 驚いている黒子を押し倒して服を脱がせて、正直意味が分からない。急に現れた黄瀬に対して黒子は対応できないまま何故か性器をまさぐられた。反応してしまっている気まずさとどうして黄瀬が今では懐かしい帝光の制服を着ているのかなどツッコミどころは多すぎる。
 目の前の黄瀬が昔の自分を演じているというのが一番分かりやすく無理のない仮定だったが問題は一つ。
「どこから現れたんですか?」
 部屋の扉は閉まっている。窓も閉じたままだ。
 黒子は別に意識を失ったりしていない。瞬きをしたら目の前に黄瀬が居た。意味が分からない。
「どーだっていいじゃん」
 一蹴されてしまった。黄瀬自身も分かっていないのだろう。いつもの黄瀬なら「どうしてっスかね」と一緒に考えてくれたはずだ。黒子の意見をどうでもいいとは言わない。
 入部当初の黄瀬と自分の距離感をじわじわと思い出していく。人の話を聞かないわけではない。これは聞く意味があまりないと思われている。取るに足らない意見などよりさっさと先に進みたい。舐めきった態度だが、このままではマズいだろう。どう考えても。
「キミは自分が何歳か言えますか?」
 今はまず状況確認をするのが一番大切なことのはずだ。
 黄瀬が現れる直前に黒子がしていた行動といえば「カプセルトイ」を開けることだった。ついついやったシークレットガチャ。お金を入れて回す瞬間はドキドキとするものだ。
 その場で中身を見なかったのは火神に声をかけられたからだ。いつものようにマジバーガー。
 バニラシェイクに舌鼓を打っていたらカプセルトイのことを忘れてしまった。家に帰って半分以上興味を失ったとはいえお金を出して買ったものなので中身を確認しようとして気が付いたら黄瀬が居た。色々とおかしい。
(ガチャポンって回す瞬間のドキドキにお金を払っているんですよ。つまりは中身が何であってもいい。ボクはそんなことを思っていました。それは強がりです。外れを引いてガッカリしたら明日に火神君にあげようと思うことでボクのマジバ一回分の消費から目をそらすことにしたんです)
 そうやって蔑ろにしたことによって天罰が下されたのなら目の前の黄瀬は神の遣いなのだろうか。こんな性格の悪そうな天使は嫌だ。平気で人の性器をこすりあげている時点でどちらかと言えば悪魔だ。
「汚いとか思わないんですか?」
 完全に勃っている黒子が言う台詞でもない。
「黄瀬君、変態ですか?」
「アンタに言われたくねえーんだけど」
「分かりました。ボクは変態です。で? キミは変態ですか? そうじゃないなら――」
 早く手を放せと告げたいところだったのだが黄瀬は目を細めて「開き直りっスか」と不快気。地雷ボタンでも連打した気分だ。強めに性器を握りしめられて腹を舐められた。
 何をするつもりなのかと黄瀬の頭を叩きたい。
 身体は心に反して完全に腰が抜けていて指の一本もまともに動かない。誰かに触られることなど想定していないのだから仕方がないと言い訳をしながら涙目で黄瀬の名前を呼ぶしかない。反省して今すぐ部屋から出てってくれたりするならこの不思議な状況を一緒に解き明かそうなんて歩み寄れたりもする。そう、だから黄瀬はすぐに動くべきだ。
「黒子クン、気持ちいいんだ?」
 嘲り混じりに言われたところで身体は感じるように痙攣するだけ。ふざけるなと蹴り飛ばすことが出来れば苦労はしない。腰がヒクついて今にも暴発しそうなのを耐えるのが黒子に出来る精いっぱいだ。誰かに触られたことなどないし自分でもあまり触らない場所への直接的すぎる刺激はすすり泣くほど気持ちがいい。
 知らなかった。誰かに触られる快楽も何もかも、知らなかった。知ってしまったらどうなるのか。背筋がぞわぞわとして落ち着かない。
 これから黄瀬の顔などまともに見えないだろう。
 嫌でもなんでも意識してしまう。これがそのためだけの壮大な悪ふざけだとしたら神様は意地悪すぎる。黒子の気持ちなど知ったことじゃないと
「キミは……っ、なんなんですか?」
「余裕あるっスね」
 あるわけがないと見て分かるはずなのにこの態度。小憎たらしい。思い切り顔を殴りつけて逃げられたならこんな気持ちにもならないと黒子は震えながら思った。
 服が脱げて空気に触れている肌が落ち着かないのに気持ちがいい。頭がどうにかなっている。激しく責め立てて欲しいと望んでいるのが目の前の黄瀬の姿をした誰かにも分かっているいるらしい。
「いつまで余裕でいられるっスかね」
 喉の奥で笑うその嗜虐的な顔は黒子に対して満面の笑顔を向けてくる黄瀬と被らない。けれど、こういう一面があったのは知っている。自分に正直に思ったことをすぐに口に出す黄瀬は灰崎とよくぶつかっていた。
 懐かしく思うほど昔ではないはずなのに黒子は妙な気持になる。肉体的に高ぶっているせいで精神もまた何か作用している。だからこそ、動けない。
 考えて固まって、なんとかなると思いたいわけじゃなかったが黒子は目の前の黄瀬を見つめながら目をそらしていた。
 いま黒子が考えていることはこの事態への収拾ではなく全然別のことだった。考えているのは黄瀬涼太のことだ。次に黄瀬に会ったらどうすればいいのかとそんなことを考えて黒子は戸惑っている。論点はそんな場所ではないのに。勝手なことをされて黙っているのは癪だったが改めてみる黄瀬がどうにもむず痒くて今との違いがどこから来たのか思い悩んでしまう。黒子を認めたからこそ黄瀬は黒子に対する態度を軟化させて好意を前面に出してくれた。なら、これはどういうことになる。
 柄が悪くて乱暴で制御のきかない灰崎と黄瀬を同類だとは思わないが初対面の印象としては似たようなものだった。そんな黄瀬がどうして黒子に対してこんな風に触れてくるのか。泥沼にハマりに行っている危機感がありながら考えずにはいられなくなった。身体の芯からせり上がってくる感覚を黒子は持て余しながら黄瀬のことを考えることでやり過ごそうとする。
 灰崎から暴力的な面を抜いて天才的なスポーツセンスを授けたら黄瀬なのかもしれない。外見も黄瀬のほうがいいのかもしれないが男の美醜など黒子はどうでもいい。問題は心意気だ。そういうところも黄瀬は悪くないのは知っている。ムラッ気があるような気がするのはいけないが黒子がとやかく言うまでもなく本人は自覚済みだろう。
 他人の息遣いがこんなに気になるものだと思わなかった。
 黄瀬のパーソナルスペースは狭いのか距離を詰めてくることが多かったが密着すること自体は意外に少ない。パーソナルスペースが狭いと見せかけて人を一定以上近づけさせない男なのかと思ったがこの有様はなんだ。
 どうして昔の黄瀬の形をした存在が自分を触ってくるのか、そしてそれに対して黒子は拒絶できない。
 気持ちがいいからか、黄瀬の姿だからなのか思い悩んでいる。問題はそこではない。カプセルトイの異常性をちゃんと理解しないといけないのに目先のことばかりに囚われる。誤魔化して見ようとしないでいた場所に無遠慮に触れられて無理矢理に鷲掴みにされた気分だ。
「なーに、考えてるんスか」
「キミ、最低だなって」
 強がりを口にしながら皮膚がビリビリと感じる。
 痛いわけじゃない。気持ちがいいと思うには覚えのない感覚で黒子を戸惑わせた。
「大丈夫っスよ。優しくしてあげる」
 甘ったるい声が聞こえてきた。
 黒子の頭を優しく撫でながら「落ち着いて、力抜いて」と耳元で囁く黄瀬はこれから何をするつもりなのだろう。
 薄っすらと理解しながら黒子は動けずにいた。待っているようだと自分でも感じたが身体がいうことを聞かないのだからどうしようもない。言い訳のように繰り返すことで自分を納得させる。黄瀬が黒子の尻をつかんだ。触れて撫で上げられたところで何も感じることなどない、そう思っていた。性器を撫でられた時だって気持ちが悪いだけのはずだと言い聞かせても身体は快楽に震える。口角を上げて黒子に触れる黄瀬に舌がもつれて言葉が出てこない。
「……っ、……ぁ」
 耳たぶを噛まれたと思ったら黄瀬の舌が耳の中をくすぐる。ぬるぬると動く舌に気持ち悪さを感じるのに伸し掛かられた体勢のまま黒子はただ目を閉じて耐える。らしくない。ここは黄瀬を遠ざけて優位に立つべき場所だ。無言で耐え忍ぶ場面じゃない。主導権を渡してしまうわけにはいかないと分かっているのに黒子の口から漏れたのは嬌声。
 身体中がビクビクと痙攣して、まるで別物。自分じゃない。自分じゃないならなんなのか。黄瀬の玩具だろうか。玩具の中から出てきたのは黄瀬の方なのにおかしい。
 不条理だと抗議の気持ちで黒子は何とか身体を動かす。
 やっと黄瀬を払いのけられると思った気持ちは裏切られた。黒子の手は黄瀬の白い帝光のブレザーをギュッと握っただけだ。怖がって、黄瀬を頼るような自分に黒子は内心でどうしてと叫ぶが実際には息を押し殺そうと必死になっているだけで何も言えない。
 優しく頭にキスをしたあと、下腹部を撫でながら黄瀬の指先が黒子の後ろの穴をなぞる。黒子の精液で濡れた指はなかなか中には入らない。出す場所であって入れる場所じゃないので当たり前だ。
「落ち着いて、力抜いて」
 そう繰り返されたところで黒子の緊張は解けない。
 考えたように唸った後、黄瀬は黒子にキスをした。キスをしながら指を動かしていく。黄瀬の舌と指、どちらに意識を集中すればいいのか分からない。
「黒子クンは頭を真っ白にすることも出来ないっスか?」
 嘲り交じりの吐息の中にある興奮の度合いを嗅ぎ取って黒子は身体から力が抜けた。
 黄瀬ではないかもしれないが確かに黄瀬だ。
 昔にもし万が一なんてことがあったらこうなっただろう、そんな風に思うと苦しくなる。
「なんスか?」
 目の前の黄瀬を否定したいのか肯定したいのか分からなかったが黒子の目になぜか涙が滲んだ。
 あるはずのないことの縮図が今なのだとそう知らしめられたようで切ない。本来ならあるはずのない触れ合いを黒子は確かに望んでいるのかもしれない。拒絶ではなく求めるように黄瀬の背中に回している自分の手は無意識の本音だ。黒子に本当を教えている。


 カプセルトイから『黄瀬涼太』が現れたのは間違いない。
 黒子は分かっていた。
 分かっていながらまたしても黒子はカプセルトイに手を出した。その心境は自分でも不思議だったが分かりきっているようでもある。あえて口にするのは恥ずかしい。
 カプセルを開くと出てきたのはランドセルを背負ったハーフパンツ姿の黄瀬だった。もちろん、高校生の黄瀬のランドセル姿ではない。小学生の黄瀬。体が大きくなり始めている最中なのか微妙に小さ目なハーフパンツを窮屈そうに履いている。この存在に何かをするのは犯罪だ。黒子はすぐさま「さよなら」と口にしたが小さな黄瀬に泣かれた。
「返品は不可っスよぉぉ」
「そうは言っても子供のキミに」
「子供じゃないっスよ。ココはもう大人っス」
 そう言って自信満々に下着をおろして自分のモノを見せつけてきた何故かすでにスタンバイ状態だ。
「毛だってちゃんと生えてるっスよ」
「大人を毛の有無だけで判断するのはよくないです」
「えー? もしかして、生えてないんスか」
 馬鹿にされてつい黒子は反論する。
「生えてます」
「じゃ、見せて」
 素直にズボンを下げかけて首を振る。
「出来ません。……帰ってください」
「なんで見せれないんスか!! 本当は子供ちんこなんでしょ」
「むしろ、なんでキミはすでに皮が剥けてるんです」
 唇を尖らせて黄瀬の股間を見る。そそり立つモノは中学生の黄瀬と同じぐらいのサイズに感じた。高校生の黄瀬はもっと大きいのかそれとも同じなのか気になりかけて黒子は咳払いをして誤魔化した。
「見せません」
「別に見せても減らないっスよ。ほらっ」
 下半身にタックルを仕掛けてくる黄瀬に黒子はベッドの上に倒れた。静止も間に合わず黄瀬は黒子のズボンと下着を下した。足を開かせる幼い手に従うわけにはいかないのに黒子は唾を飲み込みながら倒れた体勢のまま黄瀬を見た。
「毛は生えてるっスけど、もじゃもじゃじゃないっスね。ちんこはもっとデカくなる? どうなんスか?」
 そう言いながら黄瀬が黒子の性器に触れる。
「ダメですってば」
 小さな手に握りこめてしまえるような自分のサイズに悲しくなりながらやわらかな黄瀬の手に血液が下腹部に集まっていくのを感じる。子供相手に最低だ。
「あ、ピクピクしてる。気持ちいいっスか?」
 笑顔で無邪気に問いかけられて黒子は自分が涙目になっていくことを知る。こんな事ならカプセルトイに手を出すべきではなかった。
 カプセルトイだって無料じゃない。ちゃんとお金を払って買っているのだ。お金で奇跡を買っていると表現するとひどく俗物めいて感じるが事実だ。
 黒子は何かを期待してカプセルトイを手に入れていた。
 秘密にされている中身が知りたかった。
「キミ、こんな事したいんですか?」
「興味ないっスか? 他人の体って、自分のと違うなら見たいと思わないっスか?」
「思いません」
「でも、オレに触れられて嬉しそうにしてるよね?」
 幼くて自分よりもはるかに子供なのに黄瀬は甘えるようなしぐさに隠れて見下すような視線を感じる。人と比べて自分の方がスゴイのだと言いたいだけなのだろうか。
「だって、こんなリコーダーの先っぽぐらいの大きさでいいと思ってるんスか? 本当はもっと大きくなるんでしょ」
 そう言って黄瀬は黒子の性器を強く握る。
 中学生の黄瀬にもこんな風に握られたことはあるが手の力が弱いのか手のひらの大きさが違うからか黒子は痛みではなく気持ちの良さを感じていた。先端の敏感な部分を親指でぐりぐりといじられると痛みに悲鳴を上げてしまうのに性器は硬さが増していく。
「ね、大きくして見せて欲しいっスよ。ねぇ、ねえ」
 出来るんでしょと黄瀬は子供の姿そのままで催促してくる。泣きそうになりながら黒子は「黄瀬君、ダメです」と訴える。拒絶のような言葉を吐きながら黒子は身体を完全にベッドに横たえて黄瀬の手をどかすのではなくシーツを握りしめている。腰は少し前方に突き出すようにして黄瀬に触れやすいように角度を調整しているようだ。
 不機嫌そうに眉を寄せた黄瀬は黒子の性器を口に入れた。
 じゅるっと汁を吸うような音が立つのが信じられない。
 腰がヒクついた。強い刺激に満足するように、もっと欲しがるように、何かを期待して黒子は息を詰める。
 ランドセルを背負った子供にいいようにされているのに黒子は完全な拒絶もせずに受け入れていた。
「イッちゃう?」
 先端をぺろぺろと舐めながら言われて黒子は首を横に振る。黒子の強がりが気に入らないのか黄瀬は「もうなんなんスか!!」とご立腹だ。
「気持ちがいいってオレのこと好きって言ってよ! ケチっ」
「気持ちがいいと好きがなんで」
「いいから言って! そうしないと続きしてあげないっスよ。本気だから!」
 拗ねた子供は手に負えない。
 どうしてか黄瀬は黒子の性器をジッと見て「オレのこと好きなら大きくなるし気持ちよくなるっスよね?」と聞いてくる。中学の黄瀬が黒子のことを男で反応する変態と言ったのとは対照的だ。
「黄瀬君?」
「ムカつくからもぎ取るっスよ」
「や、やめてください。どうしたんです」
「これ以上大きくならないのはオレのこと嫌いだから?」
「……ちがいます」
 瞳から大粒の涙をこぼしながら黄瀬が黒子を見る。
「その――今のキミの姿に罪悪感が」
「萎えるっスか? ランドセルなのに? グッとこないっスか? ランドセルっスよ」
「残念ながら」
「じゃあ、ランドセルおろすっスよ。ぶっちゃけ、重いし」
「中身入ってるんですか」
「なんスか? 使いたいんスか? オレのこと好きで好きでどうしようもないって頭を下げるなら使ってもいいっスよ。そのためのものっスから」
「キミは小さい頃の方が偉そうですね」
 中学時代も小生意気だが目の前にいる小学生はそれ以上だ。ランドセルの側面にくっつけてあったリコーダーを黄瀬は構えた。
「どうっスか!! オレ、格好いい?」
 下半身丸出しでリコーダーを戦隊もののヒーローのように構えるのはアホ臭かったがこれからリコーダーをどこにどうするのか考えると黒子は身構えるしかない。
「どうして欲しいっスか?」
「リコーダーは遠慮したいです」
「じゃあ、オレがいいっスか?」
「それも……ちょっと」
 やはり黄瀬の下半身はともかくまだ子供だ。
「なんでそんな酷いこと言うんスか!」
 リコーダーで黄瀬は黒子の性器を叩き出した。
 子供は容赦がなさすぎる。
「痛いです」
「気持ちいいのより痛い方が好きっスか?」
 そんな事ないですと言おうと思ったがリコーダーで叩かれるたびに黒子の性器は硬く張りつめている。先ほど舐められた黄瀬の唾液ではないものが黒子の性器を光らせていた。年下に「変態」と罵られながら黒子は射精した。




(略)



「どう思う!? 黒子っち、おかしくない? これってイジメっスよね。黒子っちがオレをイジメてるよね。オレに会いたくないとかありえないっスよ」
 テーブルを叩きながら黄瀬は訴えた。
 バニラシェイクを飲んでいるんじゃないかとマジバに立ち寄った時にちょうど火神を見つけて相席したのだ。火神は黒子とよく一緒にマジバに行くとも聞いていたので待っていれば黒子が現れたりしないだろうかと期待もした。
 そんな上手い話もなく黒子の気配は周囲にない。
 部活のある平日と完全な休日の違いかもしれない。
「お前がうぜーのがいけねえんじゃねえの」
 火神は会話するのも面倒くさいという顔をした。
 優しさが足りなさすぎる。
「火神っちは毎日黒子っちと会ってるありがたみが足りないっスよ。久しぶりに会ったらさ『黄瀬君、前会った時よりも格好良くなりましたね』とか言われたいじゃん!」
 言ってくれたことなど一度もない願望だ。
「黒子に褒められたいのと有難味ってどんな繋がりだよ」
 うんざりしたような火神にどうして分からないのかと黄瀬は力説するが反応は悪い。
「あー、バカには理解できないって言う」
 諦めるように黄瀬は肩を落とした。
 当然、火神はムカついたのか表情を険しくさせる。
「お前に言われたかねえよ!! 急に来てなんだよ」
「黒子っちが! オレを無視したんだよ。大事件っスよ」
「あっそ」
「心配してよ!! オレと黒子っちの絆が崩壊しちゃう!!」
「お前らに絆とかないだろ」
 チーズバーガーの包みを剥がしながら火神は言う。
「このいじめっ子! 火神っちは人の形をした悪魔っスね。鬼畜!! 外道!! 自分が言われて嫌なことを人に言っちゃダメって教わらなかったんスかッ」
「いや、オレは言われても構わねえぞ? 気にしねえ」
「黒子っちの光のくせに!?」
「相棒だってのはオレも黒子もお互い分かってる。誰かに外から否定されても『だから何だ』って感じだろ」
「案外、ドライっスね」
「そうか?」
 ジト目で黄瀬を見ながら火神はチーズバーガーに齧り付いた。トレイに山盛りにされたバーガー全てを消費しようとする火神の姿に黄瀬は食欲がなくなる。溜め息を吐きながら手の中にある物を黄瀬は火神に渡した。
「これあげるっスよ」
「バニラシェイク?」
「黒子っちが居たらあげるつもりだったけどいないからね」
「自分悪くねえのにこんなの用意したのか」
 呆れたような火神はバニラシェイクに口をつけた。
「コーラのがいいな」
「帰国子女発言っスか?」
「なんだ、そりゃ。で、お前、これから帰んのか?」
「そうっスねえ。どうしよっかな」
 黄瀬が黒子の機嫌をとる義理などないのだが無視されるのは淋しい。何か誤解があるなら解かないといけない。
 このままで済ませるわけにはいかない。
「火神っちにお願いしていいっスか? そのバニラシェイク代がわりにさ」
「おま、…………変なことは無理だぞ」
 飲んでしまった後にこの提案は卑怯だろうが火神なら口にする前でも了承してくれたかもしれない。
「火神っち、やっさしい」
 笑う黄瀬に難しい顔で火神は「黒子の態度もどうかと思うしな」と言った。
「相棒のことちょっと心配?」
 ドライに個人主義かと思えばそうでもないらしい。
「――黄瀬が関係すんのか知らねえけど、この頃、黒子はおかしいんだよ。部室で着替えするのがスゲー早い」
「はい? 何それ。黒子っちの着換えの状況監視してんの? 火神っち、変態? 危険人物? 訴えていいっスか」
「ちげーよ、あいつ基本がのろいってかマイペースだろ」
「何が? 着替えるのが?」
「後から着たオレの方が着替え終わるの早かったりするぞ」
「そうなんスか……。中学の時はオレが黒子っちに急かされてたんスけどね。ずっと黒子っちに話しかけててロッカー開けなかったりして怒られたり」
「バカだろ」
 呆れたというよりも真顔で指摘されて黄瀬は切れる。
「ヒドッ! バカじゃないっスよ。オレと黒子っちはクラス違ったから部活前のロッカールームが喋り場っスよ」
「喋り場ってなんだよ」
 そのままの意味でしかないが帰国子女には伝わらないらしい。
「女子で言う女子トイレとか給湯室的な雰囲気?」
「給湯室?」
「マネージャーがよく○○君格好いいよねーって話す場所っス。スポーツドリンクとかお茶とか作りながら。ちなみに大体、オレの名前が挙げられるっスね。あ、言うまでもない場合もあるかも? 男はロッカー前が喋り場っスね」
「うぜー」
 濁った目の火神に黄瀬は「誠凛さんは監督とマネージャーが一緒だったね。部員数が少なくてもマネージャー一人は大変っスよね」と噛み合わない会話の理由に思い至る。問題はもちろんそこではない。
「確かにロッカーでした会話だったけど。まあ、話し戻すけどよ。……世間話だな、黒子に『お前、なんか着替え、早くなったな』って声かけたら、なんか……どうっては言えねえんだけど不自然だったんだよ」
「詳しく」
 真剣な顔で黄瀬は火神に詰め寄る。
「理由はわからねえんだって……」
「使えないっスねー。もうちょっと何とかならねえんスか」
「ふざけんな」
「火神っちも心配。オレも避けられた原因が気になる。なら、やるのは一つっスよね」
 とるべきは最終手段。究極奥義以外にない。
「なんだ?」
 黄瀬はポケットからボールペンを取り出して火神の方へ転がすようにテーブルに置く。
 首を傾げる火神に対して「火神っちにお願いって言うのは」と切り出した。願い通りに運ぶかどうかは半分以上賭けだったが火神は深く考えずに頷いてくれた。おまじないと言ったのが良かったのだろうか。
「このボールペンを黒子の筆箱に入れるんだよな?」
「そう、ここを押してからっスよ? ちゃんと分かった?」
「聞いてるよ。そんな重要なのか?」
 分かっていない火神に黄瀬は強くうなずく。
「超重要っスよ。明後日、マジバで待ち合わせね! 一日黒子っちに持ってて貰って」
 そんなに上手くはいかないと黄瀬は思っているがやらないわけにもいかない。黒子の話を聞く限り誠凛もまったく宿題が出ないということはない。家で絶対に筆箱から筆記用具を取り出すはずだ。そうなれば見覚えのないボールペンに触れるかもしれない。触れなかったとしても黒子の近くにこのボールペンが行くということが重要だ。それには黄瀬だけでは無理がある。誠凛に忍び込んでこっそりというのは出来なくはないが現実的ではない。一度バレてしまえば同じ手は使えないぐらいに危なっかしい。火神にお願いする利点は一度バレたとしてもなんとかなりそうなことだ。火神のボールペンが一本紛れ込んでしまったぐらい黒子は深く気にしないだろう。別の学校である黄瀬のボールペンがなぜか黒子の筆箱に移動していたというミステリーよりは現実的にありえる。
「はいはい。昼休みか夕方ぐらいにここ押して筆箱入れて翌日に回収してお前に渡すんだな。そんなに何度も言わなくても平気だって」
 簡単な作業だと思っているのだろう。事実、火神の立ち位置なら不自然さを感じさせずに出来る。
 今日に火神と会えたのは幸運だった。
 火神自体にはとてつもなく不幸な出来事だとしても黄瀬にとっては天からの助け。
 自分の決断を後押ししているようだと黄瀬はプラスに考えた。ポジティブに物事を捉えられるは才能だと黒子にも褒められた。
 長所はどんどん伸ばすに限る。
「オレの命は火神っちに預けてるんスよ!」
 そのぐらい重要だと言い含めるがいまいち分かっていない火神は眉間に眉を寄せて息を吐き出した。 黄瀬の熱意が空滑りしている。もっと何かを言おうと思ったが墓穴を掘ることになりかねないので黄瀬は黙った。
「大袈裟だな。……これ、ただのボールペンだろ?」
「――じゃ、おまじないよろしく〜」
 黄瀬は立ち上がり火神に手を振って店を出る。
 はぐらかしたのはバレバレだったとしても不審に思われただけだ。これだけ頼み込んだのだから火神はやってくれるだろう。それで勝率は五割。上手くいくかは分からないが何もしないよりはいい。
 何でもやってみて駄目ならともかくやらないで諦めるなんて間違っている。黒子のそういう諦めないところに黄瀬は惹かれていた。だから、自分も諦めるわけにはいかないと黄瀬はそう思った。

 そのために選んだ手段は間違っているのかもしれない。




(略)




 黄瀬は扉を開いて部屋の中を見渡す。 
 自室よりは狭いものの適当に整頓されて部屋。
 地味で普通の代名詞のような空間に立ち込める独特の匂いは壁やシーツに染み込んでしまっているのだろうか。

「黒子っち、退いて、そいつ殺せない」

 チキチキと音を立てて黄瀬はカッターの刃を出した。
 小学生ほどの黄瀬を抱きしめながら本を読んでいた黒子が黄瀬の姿に固まっている。唇が「どうして」と動く。声は出ていない。驚いて意味が分からないのだろう。
「どうして、じゃないっスよ」
 黒子の髪を撫でていた黄瀬が顔を上げてカッターを持つ黄瀬を睨み付ける。これは中学生ぐらいだろうか。帝光中学の制服を着ている。それなら黄瀬の行動は大人げないかもしれないが自分の顔をしていてもこれは自分ではない。だから細かいことなど全部無視だ。
「とりあえず不愉快なその顔をズタズタにしてやるっスよ」
「自分の顔に対して何言ってんスか?」
「黒子っちぃ〜、あのお兄さん怖いっスよぉ」
 態度悪く人生を舐めたような顔をした中学生の黄瀬と猫を被った小学生が黄瀬がそれぞれ声を上げる。黒子はまだ驚いたままだ。
「まったく、不法侵入っスかねー」
 やだなぁと小学生の黄瀬は黒子に抱き付いて服の中に手を入れた。固まったままだった黒子が目を見開いて頬を赤くして慌てだす。
「黄瀬君、ダメですよ」
「ダメって何がっスか? 黒子っちのココは悦んで――」
「オレは小さい頃そんなんじゃなかったっスよ!」
「嘘だー。父さんのAVも姉ちゃんのエロ本もばっちり見てたじゃん。エロ本で文字を覚えたレベルだよ」
 小生意気な小学生は自分だと言われれば確かにそんな気がする黄瀬涼太ぶりだった。だからこそ、腹が立つ。
「違うから! 黒子っち、信じちゃダメ!!」
「字は普通に学校とかでしょ。……絵が綺麗だなってエロ本は読んでたけど」
「読んでないから! 黒子っち!! 本当、信じてッ」
 中学の黄瀬も小学生の黄瀬も高校生の黄瀬を助けてはくれない。






続きは本編で。
イロモノエロ半壊転(誤字にあらず)黄黒。
ラブラブです?
ヤンデレ風味でエロエロなのは確かです。
発行:2013/05/05
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