いいから、京都へ来い


それは朝四時の電話。
いつでも彼は唐突だった。
黒子は受け取り損ねているだけで、
彼からしたら前振りなど十分にしているのかもしれない。

『おはよう、テツヤ』
「………………はい」
『いま何時か分かるか?』
「知りません。……おやすみなさい」
『四時四十四分だ』
「そうですか、おやすみなさい」
『中途半端な時間に寝ると困るだろ。二度寝はよくないよ』
「そうですね、電話切っていいですか?」
『誰からの電話か分かってる?』
「……赤司君」

電話の向こうからの不満そうな気配に黒子は身体を起こす。
自主的に朝練をするにしても三十分は後が良かった。まだ眠い。

『朝起こしに来てくれる幼馴染って理想だよね』
「桃井さんはそこまでしてるんですかね? 今度、青峰君に聞いてみます」
『テツヤ、僕を起こしに来てくれない?』
「…………残念ながら僕は赤司君の幼馴染じゃないです」
『起こしに来てくれない?』
「赤司君、起きてますよね」
『テツヤが来るまでもう一度寝てるよ』
「……ボク、部活の練習とかあるんですけど」
『新幹線は指定席だから、遅れないようにね』

言われて昨日に赤司から届いていた封筒を思い出す。
すぐにでも開けるべきだった。
あるいは届いた時点で赤司に連絡でも入れればこんな電話も来なかっただろう。
そう考えるとこれは拗ねられているのか。

『じゃあ、おやすみ』
「じゃあ、京都で」

監督に怒られるのは承知で今日は一日を京都で潰すしかない。
練習しない日など作りたくはないが赤司が言うなら仕方ない。
送られてきた切符も無駄に出来ない。




そんなこんなで、東京駅から新幹線。

「なぜ京都に行かないといけないのだよ」
「別に緑間君、来なくていいですよ?」
「まあまあ、いいじゃないスか。旅は多い方が楽しいっスよ」
「なあ、テツ。その駅弁うめーの?」

黄瀬から朝にメールが来たので黒子は赤司から京都行きの切符を貰ったことを話した。
それが何処をどう回ったのか緑間と青峰にも知られることになり、
四人で揃って京都に行くことになった。
神奈川の黄瀬が新横浜から来なかったのは単純に自分一人が途中参加になるのが嫌だからだ。

「おは朝ならちゃんとオレのケータイでチェックできるんスから」
「なんでお前たちは身軽なんだ」
「緑間君だって来ている癖に」
「食ったし、オレは着くまで寝てるわ」
「青峰君、ボクの膝より座席を後ろに倒した方が」
「あ? いいだろ、別に」

当然のように黒子の膝の上に頭を乗せる青峰。
嫌そうな顔をする緑間と黄瀬。
席割りの時も揉めた。
ジャンケンで勝った青峰が黒子の隣になったのだ。

「ずるいっス!! ずるいっス!!! オレも」
「緑間君……」
「嫌なのだよ! どうして黄瀬に膝枕などしないといけないのだよ」
「違うっス。緑間っちに頼んでないっスよ」
「緑間君を膝枕したいんですか?」
「お断りなのだよ」
「違うっスぅぅ!!!!」
「黄瀬、うるせーぞ」

青峰に中身の入ったペットボトルを投げつけられて黄瀬は嘆く。
そしてそのまま電車に揺られて二時間弱。
四人は京都駅に着いた。

「赤司君が『ラーメンとコーヒーはどっちがいい』って」
「なぜその二択なのだよ。豆腐は?」
「テツ、ラーメンにしようぜ」
「もっと京都っぽいものがいいスよー」
「わかりました。赤司君にはタコ焼きにするように答えておきます」
「京都っぽくないのだよ!!!」

土産物屋で手に入れた今日のラッキーアイテムの提灯を片手の緑間を無視して黒子は赤司にメールを送る。

「赤司君からは『バスに乗って来い。タクシー使うぐらいなら人力車にしろ』って」

この時間に人力車がある筈もなく、
そもそも駅周辺での客引きは不味いのではないのかと緑間が言う。
つまりバス一択ということだ。

「テツ、ラーメンは?」
「ラーメンもあるらしいですよ」
「あるんスか!? いや、ラーメンは何処にでも……?」
「京都のラーメンは京都にしかねえだろ。黄瀬バカか」
「赤司が何を考えているのか分からないので一日乗車券を買うのだよ」
「緑間っち、観光する気まんまん!!」
「あ、赤司君から『こっちのお汁粉は粒がない』って注意が」
「どういうことなのだよ?!」
「関東と関西の違いっスね。粒ありはぜんざいスよ」
「どっちもあんこだろ」
「粒がないなら振らないで済む分、楽なんじゃないですか?」
「楽しみが減るだろ!」

力説する緑間に知らないでお汁粉を注文してガッカリする姿が見たかったと黒子は思った。
青峰が「そもそも、ぜんざいってなんだ」と黄瀬に聞いて黄瀬がケータイで調べて写真を見せる。

「この店、店員かわいいな」
「寄っていくっスか?」
「そんな時間はないのだよ。お前たちに任せたらいつまでも目的地に着かない」
「緑間君の言う通りです。早く赤司君が明石焼きを食べてるところを見るんです」
「黒子っち、タコ焼きと明石焼きは違うっスよ」
「そうなんですか?」
「赤司焼きは赤司が作るのか? それとも赤司が焼けるのか?」
「青峰は絶対に勘違いしているのだよ」
「オレも詳しくないっスけど……えー、出汁で食べるのが明石焼きらしいっス」

黄瀬はケータイで調べたらしい。律儀に答えている。

「言っている間に目的のバス停を通り過ぎそうです」
「そこはボタンを押すのだよ、黒子!!」
「そういや、バスの乗り方って東京と違うな」
「緑間君が一日乗車券買ってくれたので特に考えなくていいですよね」

言いながらバスから降りていく一行。
人の通りはまだ疎ら。



「店はまだ開いてないんですね」
「赤司もいねーし、適当に朝飯食おうぜ」
「電車の中での弁当は朝食じゃないのか?!」
「緑間っち、お汁粉はなかったっスけど、おでん缶ならあったっスよ」
「ありがとうございます、僕は冷たい方で」
「冷たいおでんって……テツ」
「悪くないですよ」
「青峰っちのもちゃんとありますよ」
「なぜ京都でこんな微妙なものを食べないといけないのだよ」
「赤司君のせいですね」

溜め息を吐く緑間から異論は出ない。
赤司が言うなら諦めるしかない。
長い付き合いでみんな身に染みている。

「すまない、待たせたね。……テツヤ」

振り向けば赤司がたこ焼きを食べていた。
湯気が立っている。ソースの香りが漂う。

「赤司、お前いま、このたこ焼き屋から出てきたよな」
「住んでるんスか?」
「そんなわけないだろ! 叩き起こして作らせたのか? それは非常識なのだよ」
「テツヤが食べたいと言うから。……ほら」

手招かれて黒子はたこ焼きのタコだけを貰う。
丁寧に箸で真ん中から裂かれてタコは取り出された。
綺麗な箸使いだった。

「まるごとはあげないんスね」
「熱いかと思って」
「このタコ美味しいです」
「全部食べていいよ」

渡された船の形をした器にいれられたたこ焼き。
黒子が食べようと箸でつまんだ瞬間に横から青峰に食べられる。
悪くないという顔をしていたがたこ焼きの残りを数えて少し眉を寄せた。

「オレ達にはねえのかよ」
「みんなには食べ歩きマップをあげるから五時間後にここで集合」
「修学旅行の自由行動か!! まったく、お前は」
「ひとりひとり別々に作ったよ」
「まるで暇人!!!」
「涼太、なんだって? 清水の舞台から落としてやろうか?」
「緑間っちのツッコミはスルーでオレだけ?」

赤司に睨みつけられて黄瀬がたじろぐ傍ら、黒子と青峰はたこ焼きを食べ尽くした。

「いい機会だから京都のお汁粉……ぜんざい?を食べるのだよ」
「真太郎、この店はお持ち帰りもある」
「丁寧っ!!! 緑間っちだけ贔屓っスか?」
「うるせー、黄瀬。一人で八つ橋食ってろ」
「そうしたら敦と会うかもね」
「紫原君も来てるんですか?」
「秋田から呼んだんスか? マジで?」
「元々二人はこっちに観光予定があったらしい」
「? 氷室君と一緒なんですか?」
「彼の観光に付き合っていたらしいけど、生八つ橋の食べ歩きに目覚めて帰りの予定を遅らせてる」
「食べ歩き? 八つ橋ってそこらへんで買えるんじゃいんスか?」
「色々な味があるからね。そこの店でしか取り扱いがない限定品とかもある」

赤司の言葉に「へぇ」と一同、感心するが、
紫原の食べ歩きマップも赤司が作ったのかと思うと怖くなってくる。
決して暇じゃないはずだというのに、このきめ細やかさ。

「じゃあ、五時間後な」
「青峰君、迷子にならないで下さいねー」
「これって一人で回るんスか? 黒子っちぃ」
「真太郎」
「分かったのだよ。黄瀬、一緒に行くぞ」
「汁粉めぐりっスか……」

去りがたいと黄瀬が黒子を見つめてくるが緑間に引っ張られて行く。
静かになったからか時間になったからか、たこ焼き屋が開く。
青峰にほとんど食べられて黒子はあまり口にしていない。

「食べる? それとも蕎麦? 連れて行きたい豆腐屋は夜しか開かないんだ」
「赤司君が食べたいものでいいですよ……寝ますか?」
「三人がテツヤに着いて来るとは思わなかった。
 こんなことならもっと面白いことを仕掛けたんだけど」
「ボクも思ってませんでした」
「来るんだったら切符あげたのにね」

あくびをする赤司が新鮮だった。
疲れを見せるタイプではない。

「少しの間、幼馴染になってくれる?」
「桃井さんみたいに上手くできますかね」

今日の王様のワガママは『幼馴染』であるらしい。
どこがどうなって『幼馴染』が欲しくなったのかは知らないが、
自分が出来そうなことなので特に問題はない。
休日がまるまる潰れてしまうが王様のわがままに付き合うのも悪くはない。
こんな呼び出しなどなければ京都の地に足を踏み入れることもなかったのだから。
枯れた噴水の広場のような場所で黒子は赤司に膝枕をする。
はたして桃井が青峰にこんな風に接するかは知らないが、
赤司がして欲しがっているのはこういうことだ。
綺麗とは言えない場所で身体から力を抜く赤司がおかしい。
ホテルに行くことも場所を移動することも億劫なのだろう。
何かあったのか、あるいはこれからあるのかもしれない。
鳥の羽音や修学旅行生の弾んだ声。
クレープの焼ける匂いにお香を焚いたようなの独特の空気。
学校から近いか遠いかはともかくとして、赤司が今いる場所。

もっと早く来たかったかもしれない。






目の前で機嫌よく湯豆腐を食べる赤司。
ご満悦だった。
黒子はお腹が空いたが言い出せない。
赤司がくれるはずがないと分かっているからだ。
紫原ではないのだから空腹を訴えれば分けてくれるかもしれない。
けれど、黒子は言えない。
ふと、赤司の視線が豆腐から黒子に移る。
向かい側に座るように言われる。
お腹が空いているのにこれはちょっとした拷問だ。


「テツヤ、おはよう。……食べる?」

今のものが夢なのだと瞬間的に分からなかった。
膝にいたはずの赤司が起き上がっている。
どのぐらいの時間が経ったのか。

「ありがとうございます」

目の前に差し出されたクレープとからあげ。
京都っぽいとは思えないが近くで売っていたのだろう。
食べてみれば美味しかった。
甘いクレープを食べていると塩っぽいものが食べたくなる。
からあげに掛けられている塩だけではないスパイスが調度よく目覚めたばかりの黒子の胃を刺激する。
食べきれないかと思ったがいつの間にかなくなっていた。

「ボク、赤司君を起こしてないですね」
「いいよ。テツヤはタピオカドリンク飲めた?」
「ありがとうございます」

バニラシェイクを恋しく思いながら赤司から貰ったタピオカドリンクを飲む。
少しぬるいので知らない間に随分と眠っていたのだろうか。

「ん? 起きたのか?」
「緑間君?」
「黄瀬はファンだと言う女子に渡してきた」

物扱いだ。

「真太郎が買ってきてくれたんだ」
「ご馳走様です」
「で、赤司。お前の目的は何だ」
「テツヤと二人でだらけた生活をしたかったんだけど」
「嘘を吐け」
「みんなが来るとは思わなかったよ」
「……京都は遠いからな」
「大きい試合がないと殆ど会うこともないですね」
「高校を卒業したらもっと会うことはなくなるだろうな」

三人とも肩の力を抜くように溜め息を吐く。
今更なことだ。
卒業後の進路など。
別れていく道など。
中学を卒業する時にみんな分かっていたことだ。
バスケを辞める日が来ても、バスケを忘れては生きられない。

「ボクたちはボクたちのままですよ」
「それだと真太郎は困るよな?」
「困っているのは赤司の方だろ」
「え?」

赤司と緑間が戸惑っている黒子に先程とは違う呆れの混じった溜め息を吐く。
分かり合っている人間たち特有の空気に黒子は居心地が悪くなった。
この二人はそういうところがある。
青峰や火神のような感性とは違う。
頭がいい人間特有の思考の先回りによる無言の会話。

「赤司君と緑間君って……本当仲良いですよね」
「妬いてる? 僕はテツヤと真太郎の物理的な距離の近さの方が羨ましいよ」
「自分で京都の学校を選んだくせに」
「それはそれ。別にテツヤから離れたかったわけじゃない」

その言葉が本当なら嬉しかったり悔しかったり色々と湧き上がる気持ちはある。
だが、時期が時期だ。
もっと早く聞いていたのならコロリと気持ちは転がったかもしれないが、今では無理だ。
捨てられないものが多すぎる。見つけたものは大切過ぎる。

「そろそろ青峰もストリートバスケに飽きた頃だろう」
「青峰君、こっちでバスケしてたんですか?」
「赤司は食べ歩きだと言っていただろ。アイツの飢えはバスケでしか癒せないのだよ」
「真太郎はなんだかんだで、みんなを見ているよね」
「ズルい。青峰君、一人で楽しむなんて」

青峰が目の前に居ないので抗議の意味を含めて赤司を睨みつける。
それに楽しそうに赤司は笑う。
こんな笑い方を見るのは久しぶりだ。

「誰にでもガス抜きは必要なのだよ」

その緑間の言葉がなんだか重く響いた。
気を張っていたのは誰なのか。
赤司か黒子か青峰か。
あるいは緑間自身なのか。
ふと、肩の力を抜いて深呼吸。
一人は淋しく、王者は孤独、天才は浮いていて地上には降りてこない。
見上げられるのが勝者。
見下されるのが敗者。
今日のこの日に勝負はない。
肯定される勝者も否定される敗者もいない。




結局、なんで京都に来ないといけなかったのか明確な理由を赤司が口に出すことはなかった。
単純に顔を見たかっただけなのか。
振り回したかったのか。

青峰は良い出会いでもあったのか満足気で、
黄瀬は緑間に捨てられたとうざったく黒子に訴えた。
途中から合流した紫原は買った端から八つ橋を食べていたが幸せそうだ。

「お、おぉぉ、京都限定まいう棒ぉ」
「よかったな、敦」

氷室は紫原の荷物なのか菓子の箱を大量に持っていた。
火神が見たらツッコミを入れることだろう。

「赤ちん、大好き〜!! 来て良かった!」

腕いっぱいにまいう棒を抱えながら喜ぶ紫原。

「黒蜜生八つ橋味ですか」
「甘そうなのだよ」
「ピリ辛漬物味もあるよ〜」

ご満悦な紫原に氷室が言い難そうに「そろそろ時間が」と口にする。
飛行機を使って帰るらしい。大変だ。

「漬物……キムチっスか?」
「それは定番じゃん」

ぼりぼりとまいう棒を食べながら紫原は氷室について歩いてく。
振り返って「またね」と手を振る巨人は人生を謳歌しているのだろう。

「なんか、オレ全然、京都を味わってないっスよ!! 黒子っち、舞妓さんの格好を」
「しません」
「青峰の方が似合うんじゃないのか?」
「冗談キツイっスよ!! 大女すぎっス」
「黄瀬君が着ればいいです」
「テツヤの舞妓さんか……帯を回し取りたい」
「赤司は少し落ち着くといいのだよ」
「オレだって!! オレだってクルクルしたいっスよ!!」

吼える黄瀬に青峰は「お前ら馬鹿だよな」と尤もなツッコミ。
だらだらとした会話は中学時代、
みんなで楽しんでバスケをしていた頃を思い出す。
一緒の帰り道。
コンビニでの買い食い。
充実した毎日。
変わらない空気。
変わっていく世界。
時は流れて同じ場所には戻らない。

「じゃあな」

ホームに入ってきた新幹線を見て青峰は並んでいる列に向かう。
それに黄瀬も続く。
緑間は少し赤司を振り返り何かを言おうとしてやめる。
赤司が黒子の手を掴んでいたからだ。
振り払うのが簡単だとしても黒子がそうするとは思えない。


「赤司が見送りなどおかしいと思ったのだよ」
「涼太が言ってた舞妓さんじゃないけど、一緒に着物で出掛けようか」
「お豆腐を食べにですか?」
「美味しいよ」
「…………赤司君、学校を豆腐で決めましたか?」
「美味しい店なら東京にもあるけど、ひっそりとした静かな店は京都が一番だ」
「確かにお汁粉は美味しかったのだよ。ただの漉し餡を溶いたようなものも良かった」
「真太郎もまた来るといい。今度は僕が呼んだ時に」
「黒子とだらけたい、か。東京の学校でならいくらでも出来ただろうに」
「好物は毎日食べる必要はないだろ」
「毎日豆腐食べているのにですか?」
「妬いてる? テツヤからそういう感情を向けられるのは格別だね」

なかなか来ない緑間と黒子に新幹線の入り口から黄瀬が顔を出す。
うるさくなる前に緑間は「帰るのだよ」と黄瀬を新幹線に押し込む。
丁度よく発車のベルが鳴る。

「ちょ、ちょ!!! 黒子っち! 黒子っちが!!!!」
「元々このつもりだっただろうな」
「当然なのだよ」
「二人ともなんで冷静なんスか!!」
「アイツはそういうやつだ」
「黄瀬がうるせーからだろ」
「なんで、オレのせい?!」

黄瀬の叫びを無視して青峰は黒子の分の隣の座席も使って大胆に身体を伸ばす。
文句を言っている黄瀬に弁当についてきたお茶の缶を投げつけて「寝る」と一言。
緑間も緑間で視線は窓の外で黄瀬と会話する気はない。
半泣きで黄瀬は黒子にメールを送る。送り続ける。

そして約三十分後。

「返信が来たぁあぁ!!」
「うるせー」
「近所迷惑なのだよ」
「あ、……でも、文面は赤司っち?」
「なんだって?」
「えっと『これで我慢しろ』って」

添付された画像を見てまた叫ぶ黄瀬。
緑間と青峰に無言で殴られる。

「うなじとくるぶし……か」
「チョイスが渋すぎっスよ」
「着物に着替えたのか。これなら黒子も明日には東京に戻っているのだよ」
「どんな話の流れっスか?」
「赤司が殿様ごっこしたいって言ってたじゃねえか」
「マジっすか」
「ただの女中と見せかけて黒子はくノ一で赤司を暗殺に来たのだよ」
「なんスか、そのストーリー」
「赤司そういうの好きそうだよな」
「オレには分からないっスよ」

うなだれる黄瀬にメールはもう一通。
着物を乱れさせている黒子に何かを食べさせている赤司。
羨ましいやらずるいやらという気持ちの前に『どうしてこうなった』と言いたくなる、
寝転がって足を開いている黒子。
乱れた着物の中はギリギリで覗けないアングルなのが憎い。
ついケータイを傾けてしまう黄瀬は端から見て、なんというかシュール。


2012/07/04
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