パラレル設定。緑黒兄弟もの。 IF設定(黒子保育士・緑間医者など)を取り入れつつ完全パラレル。 兄黒子で弟緑間not血の繋がり。 歪んだ家族愛なのか、同性愛なのか、傷の舐め合いなのか。 前回に引き続き黒子視点。 まだ緑間中三です。高一になると高尾が来て(?)緑黒に一波乱あったりします。 ボクと弟とそれ以外と・1 黒子テツヤには血の繋がらない弟が居た。 名前は緑間真太郎と言う。 名字が違うのは黒子と緑間の両親が籍を同じくする前に鬼籍に入ってしまったからだ。 本来であるなら二人が縁を結ぶことはない。 そのままそれぞれの親戚にでも預けられテツヤは黒子の家に真太郎は緑間の家で育っただろう。 そうならなかったのは両親の二人ともが天涯孤独に近しかったからだ。 二人の両親の境遇はどこか似ていた。 愛した片割れが子供だけを置いて消えてしまう。 その傷を埋めるように二人とも子供への愛情の向け方が下手くそだった。 子供が少し手がかからなくなったところで恋人が出来、そして結婚というところになって二人して逝ってしまった。 どこか皮肉だと思うしかない。 まるで納得できない気持ちをどうにかするように緑間真太郎は「運命なのだよ」と口にした。 そうすることで自分の気持ちを安定させているようだ。 占いに傾倒し始めたのはその頃からかもしれない。 以前から好きではあったが絶対とまでに縛られてはいなかった。 自分達は運命というものに翻弄されているのだろう。 黒子はそう思った。 大学にて。 「テツは将来どうする気でいる?」 「あれ、言いませんでした? ボク保育士になるつもりです」 「ふーん、似合うような似合わないような」 「赤司君は良いんじゃないのかって」 「赤司……? 誰だ、そりゃ」 「あぁ、えっと……弟の友達です。大人びている子ですよ。青峰君も会ったことあります。覚えてません?」 「あの面倒くさそうなヤツか?」 思い出すように青峰が口にする。 赤司征十郎が面倒なのかどうなのかと言われれば黒子にとっては手のかからない良い子だと言えた。 泊まりに来ても礼儀正しく迷惑に思ったことはない。 むしろ年下にもかかわらず相談に乗ってくれるようなところもあり、マイナスの印象は皆無だった。 「アイツ、多分合わねえわ」 「そうでもないと思いますよ」 「お前んちの弟も面倒くせえタイプだから類友だな」 「別に緑間君は面倒じゃないです。不器用なだけですよ」 青峰の言葉に黒子はムッとした。 言葉少なく饒舌に語る時は嫌味たらしく皮肉気なところがあるが心根は優しいのだ。 「面倒くせえじゃん」 「もう青峰君なんか知りません」 プンっと横を向く黒子に「何やってんだ」と火神から声がかかる。 目の前に置かれるお弁当箱に黒子は「ありがとうございます」と頭を下げて受け取った。 中身を見れば三食ご飯。 そぼろと卵と桜でんぶ。 「かわいい」 「テツ、一口くれ」 「青峰! お前の一口は一口じゃねえだろ。これ食ってろ」 からあげを持って行かれそうだったが火神がパンを投げつけて阻止してくれた。 「幻のコロッケパンじゃねえか」 「普通に買えたぞ?」 「あー、お前の講義の時間ならそんなもんか」 「いつもご馳走様です」 青峰はパンを黒子は火神作のお弁当をそれぞれ口にする。 「教員免許みたいなのいんのか?」 「とりあえず必要な資格は今のまま進学していけば全部手に入ります」 「へえ、すげーな」 「受験資格を手に入れて資格取得までしないとウチは卒業できないんですよ」 「知らねえー」 「まぁ、青峰君はなんとかなるでしょうね」 「何の話だ?」 「テツは保母さんになるんだとさ」 「保父です」 「あぁ、保育士か。いいんじゃねえの? ガキ好きだよな」 火神が席について鞄の中からフランスパンに色々な具が挟まったサンドイッチを食べ出す。 食べたそうな青峰の視線に気づいたのか溜め息を吐きながら半分渡した。 「特別好きだというわけではありませんけれど……」 「そうなのか? じゃあ、テツはなんで」 「家から近いところにある幼稚園でバイトしています」 「へえ、初耳。時給良いのか?」 「あまり良くないですね。仕方がないと思います。どこも経営大変ですから」 「慈善事業かよ……あ、テツん家って結構金あるんだっけ?」 「そういうわけじゃないですけど、夜間保育などしていませんから帰るの早くていいですよ」 「黒子はそこに就職する気なのか?」 「そのつもりです。そこで働くだけなら資格とかいりませんけどいつ潰れるか分かりませんから」 「ひでぇ」 「緑間君のことを考えるなら管理栄養士の方を目指した方がいいかもしれませんけれど……」 「あ? なんで?」 「彼、料理できませんし」 火神の作った弁当を食べながら「ボクも得意とは言えませんし」と続ける。 習っていても悪くない程度の出来にしかならない。 食への興味が薄いのだろうか。 放って置くと黒子はバニラシェイク、緑間はおしるこしか食べない。 そのことが何故か赤司に伝わったらしく二人して正座させられた。 年下に怒られることよりも緑間にちゃんとしたものを食べさせないといけないと思った。 緑間の友人である紫原が始終お菓子ばかりを食べて巨大になったのを見ていたからだ。 「おしるこばかり飲むのをもっと早く止めていればボクの身長を超えることなどなかったのに」 「いや、アイツがでけえのは汁粉関係ねえだろ」 「バスケですか? バスケやったからですか??」 兄として緑間に身長を抜かれた時、黒子はだいぶショックを受けた。 黒子の影響でバスケをし始めたと言いながら勉強の間の息抜きに赤司と紫原と一緒にバスケを始めた緑間はどんどん大きくなった。 それまでずっとバスケをしている人間の身長が伸びるのなど嘘で、身長の高い人間がバスケをしていると思っていた。 「テツ、キレんなよ」 「お前もバスケやってたんだろ?」 「あー、火神。そのネタは振るな」 青峰が苦笑する。こんな気の遣い方をされるのも嫌な気持ちになる。 卑屈な自分の気持ちを黒子は見ないふりをした。 「? まあ、いいけどよ。またオレの家に来て料理の練習すんのか?」 「とりあえず緑間君におふくろの味を堪能してもらいたいんです」 「おふくろの味ねえ」 火神の家も片親で父親しかいないらしい。 料理は独学で学んできたようなのでその火神から料理を学んでも「おふくろの味」にはならないだろうが言葉のあやだ。 「緑間君に笑顔で美味しいって言ってもらいたいんですよ」 「アイツいつも不機嫌顔じゃねえか」 「違います。青峰君がいる時はちょっと気が立っているんです」 「あの弟な……オレにも喧嘩腰だよな」 「青峰君と火神君は似てますから……たぶん、ちょっと苦手なんですよ」 「テツの周りにいる奴に対してみんな苦手なんじゃねえの」 「生き辛い子です」 「……いいけど。今日はオレ、飲みに誘われてるから明日か明後日な」 「大丈夫です。今日は赤司君が料理を作ってくれます」 「年下に作らせんなよ」 「赤司ってアレか? オレにいきなり包丁投げてきた?」 「何してんだよ」 「強盗だと思ってビックリしたらしいですね」 終電を逃したらしい火神を黒子が部屋に泊めたらいつの間にか家が修羅場。 そんなことがあった。 赤司も紫原の緑間との付き合いは黒子よりも長い。 いわゆる幼馴染というヤツだ。 黒子が部活で帰ることが遅くなっても緑間が淋しくならないように黒子は二人に合鍵を渡していた。 緑間はいらないと言っていたが一緒に将棋をしたりご飯を作ってくれる赤司は非常に助かる存在だ。 そんな赤司は我が物顔で朝食を作ってくれていたらしいが、黒子の部屋から見知らぬ男、火神が出て来たことに動転して包丁を投げつけて応戦したらしい。 明らかに過剰防衛だったが赤司もまだまだ子供だ。手が滑ったのなら仕方がない。 「ビックリしたぐらいで殺しかけられるのかよ」 「黒子が庇っても物凄い顔でオレのこと見てたぞ、アイツは一人二人殺ってる」 「殺してませんよ。子供のお茶目ぐらい笑って許してください」 「…………確かに黒子は保育士が合うかもな」 「あぁ、テツはいけるな」 赤司から殺意を向けられたことがある二人は笑って許すのは無理だとお互いに頷き合った。 2013/2/22 |