大学生ネタです。
赤黒で行こうと思いつつ黄黒もいいな、火黒にしたいけど、
でもこの設定で火黒だと火神君が苦労し過ぎてかわいそうだよ
と思わずにはいられません。
黄瀬君がヤンデレとか言いたいことはありますがタイトル通り……黒子は誰とも付き合ってません。でも、付き合っても良いと思うのです。
続いたらそういう話が出てくるかもです。

ちなみに誰とも付き合ってない



あれ、どうしてこうなったんですか?、そう黒子は隣にいる火神に問いかけようとしてやめた。
意味がないからだ。

「やあ、テツヤ。これが僕達二人のマイホームか。少し小さいね」
「そう思うなら出てけ」
「僕達二人だって言ってるだろ。君の荷物は隣の部屋に移動してる」
「マジかよ」
「……本当です。火神君の荷物ありません」

一緒に荷造りをしたので黒子にも分かる。

「というより、赤司君、勝手にボクの荷物開けないで下さい」
「風水的に問題ない配置にしてるよ」
「ありがとうございます。……でも、そういうことじゃないです」
「隣は好きに使っていい。この家の合鍵も持ってていいだろう」
「はぁ……いや、ちょっと待て。お前なに考えてんだよ」
「何ってルームシェアだ。僕とテツヤでこの部屋を半分ずつ使う。
 ……一人が淋しい年でもないだろ? 隣で満足しろ」
「いやいや、待て! オレと黒子で借りてんだぞ。なんなんだ、てめーは王様か!!」
「歴戦の王者扱いしたいなら甘んじて受け入れよう」
「なあ、黒子。誰に言えばコイツ引き取ってくれんの?」
「赤司君、どうしてもですか?」
「高校一年の冬、約束しただろ?」
「約束というよりも一方的な宣言でしたが……有効ですか」
「当然だ。……というわけで、僕とテツヤが一緒に暮らして君は隣だ」

火神に対して追い払うように手を振る赤司。

「飽きるまでといいたいところですが、困りました。
 赤司君は大学卒業までこの生活を続ける気です」
「疲れるわ」
「火神君、ファイトです」
「オレだけ? 頑張るの、オレだけ??」
「引越しそばを食べよう。出前と作るのはどっちの予定だ?」
「んで、コイツこんなにマイペースなんだよ」
「赤司君、火神君が作ってくれるって言ってます。
 ボクは一緒に買い物に行きますね」
「早く帰ってくるんだよ」

戸惑いながらも怒る火神を黒子は外へと連れ出した。
新生活が始まろうとしていたドキドキは別のモノに変わってしまった。
それもそれでいいかもしれない。



黒子と火神がルームシェアをすることになったのは、深い理由があるわけではない。
あえていうなら黒子側の打算によって成り立っている。
歩いてマジバに行ける立地ではあるが毎日マジバは両親に禁止されていた。
ギリギリで毎日バニラシェイクが許可されているぐらいである。
家を出るなら男でも自炊をすること、それが条件だった。
黒子に家事能力を鍛えろと言ってきたわけではなくちゃんとしたご飯を食べろと言う話だ。
少食な黒子のことを思っての発言ではあるがここで一つ問題が出る。
当の黒子本人に料理を作る気がなかったからだ。
料理に対しての向上心は欠落していて覚えようという気がまるでなかった。
そこでターゲットになったのが火神である。
火神には内緒の話だが両親には料理は火神がすると言い含めている。
元々一人暮らしをしていた火神だったが大学に通うには黒子が提案したマンションの方が都合がよく、
家賃を半額になるなら火神の両親としても助かると計画はとんとん拍子だった。
高校三年間で黒子の性格は身に染みていたからか火神はなんとなく家事全般は自分がやるのだろうと
理解している空気を出していたので同居に対して不安はなかった。

「赤司君、淋しかったんですかね」
「あいつあっちの学校行くかと思った」
「多分なんだってやってみたいって思ってるんじゃないですか?」
「本当にお前と暮らしたいだけだってのか?」
「赤司君ですしね」

黒子は納得していたが火神はよく分からないと顔に書いていた。

「お蕎麦に文句付けてもちゃんと全部食べてくれますよ」
「……あ、っそ。薄味がいいのか?」
「京風ってやつですかね」

赤司の味覚が結構大人びているのを思い出す。
火神はいじめられるかもしれない。

「薄かったら薄かったで文句言いそうだな。くそっ」
「すでに分かってましたか」

それでもちゃんと作ろうとする火神に黒子は微笑んだ。





「黒子っち、お帰り!!」
「え? 黄瀬君?」

買い物の荷物を火神に預けて黒子が鍵を取り出そうとした瞬間、隣の部屋の扉が開いた。
顔を覗かせているのは間違いなく黄瀬涼太。
赤司が火神の荷物を引き払ったという部屋とは逆側だ。

「黒子っちとこれから一緒に暮らせるなんて夢みたいっスよ」

嬉しそうに笑いながら黄瀬は黒子の手を引っ張った。
意味が分からないままに黒子は隣の家の玄関の中に入ってしまう。
助けを求めるように火神を見るが火神自身も状況についていけていない。

「はい、オレとお揃いのスリッパっスよ」
「は、はあ」
「おい、黄瀬……おま」
「あ、火神っちは来客用ね。はい、どうぞ」
「ありがと……って、違う!!」

黒子は水色のゆるい顔をしたキャラのもこもこのスリッパに足を入れる。
黄瀬は同じ種類の黄色のスリッパを履いていた。

「ちゃんと食器はオレと黒子っちだけのセットじゃなくって来客用もあるっスよ」

ほらほらと見せてくるペアグラスとそれ以外。
火神が「こいつヤバいんじゃねえの」と黒子に耳打ちした。
それは黒子も感じている。

「黒子っち、オレと一緒に」
「暮らしません」

黄瀬が言い切る前に黒子は返した。
それに対して不思議そうな顔で黄瀬は首を傾げた。
火神はそわそわと玄関を振り返る。

「ボクは火神君とルームシェア中です」
「知ってるっスよ。だから、その家捨ててオレと一緒に居ようよ」

堂々と一切悪びれることなく言ってくる黄瀬に少し背筋が寒くなる。
同じ部屋なのか一瞬わからなくなるほどに黄瀬の家はデザイン的な家具に溢れていて、
渡されたクッションなどもちょっと気持ち良かったりする。
人の家なのを忘れて落ち着いたカフェ気分になれるある意味理想的な部屋。
黄瀬はマメに掃除をしそうなので常にこの居心地の良さは維持されそうだが黒子も負けるわけにはいかない。

「ダメなものはダメですよ」

すでに家には赤司がいる。
赤司を放っておく方が黒子には怖い。

「黒子っちがオレと一緒に居ない現実の方がダメっスよね」
「お前の考え方がダメだよ」
「黄瀬君、ときどき肩叩きぐらいしてあげますから諦めてください」
「お爺ちゃんかよ!!」
「いやっスよ! オレは黒子っちと一緒に暮らす!! 火神っちにも邪魔させねえから!」
「年に一回ぐらいは顔を見に来ますから」
「隣なのにそんな頻度かよ」
「火神君、どっちの味方ですか!? 黄瀬君に甘い顔して言質とられたら今後一生朝ご飯は味噌汁ですよ?」
「黒子っちがスープがいいなら合わせるっスよぉ」
「いいえ、ボクはヨーグルト派です」
「そこはもっと食えよ」

火神にツッコミを入れられながら黒子は帝光時代を思い出す。

「黄瀬君は『毎朝オレに味噌汁を作ってください』と言ってくるタイプです」
「はあ? そんなに味噌汁好きなのか?」
「違うっスよ。告白っスよ!!」
「味噌汁好きだって?」
「火神っちの帰国子女!!」
「そうだけど、なんだよ。……日本のルールかなんか?」
「ボクが和食定食に悪戦苦闘してくる時に味噌汁愛を囁いてくる。
 ……黄瀬君って本当にイヤミな人です。そんなに好きなら食べてくれれば良かったのに」
「違うっスよ。それに食べたら殺されるじゃん」
「赤司君と緑間君に怒られるぐらいいじゃないですか。
 青峰君は手伝ってくれてました」
「あれは本当にお腹空いてたんじゃないっスか?」
「黄瀬君なんか知りません」

思い出して苛立ってきた。

「黒子っちぃ。一緒に暮らそ? ね?」
「黄瀬君、料理できるんですか?」
「お惣菜を綺麗に皿に盛りつけるぐらいオレにだって出来るっスよ」
「作る気はさらさらないんですね」
「ホテルのレトルト食品とか美味しいっスよね!!」

赤司と同じタイプの人間だと黒子はしみじみ思った。
やはり火神以外の選択肢などない。

「引越しそばを食べましょう、火神君」
「あ、……あぁ。…………いいのか?」
「黄瀬君、手を放してください」
「…………嫌っスよ」
「放してください」
「いや」
「放してください」
「い」
「放してくれないと黄瀬君のケータイを壊して保存用のメモリーがあったらそれの中身を見ます」

淡々と口にする黒子に黄瀬は慌てて手を放した。
火神と二人で玄関に向かう。黄瀬のすすり泣きが聞こえるが振り返ってはいけない。
振り返ったら最後この部屋からは出られなくなるだろう。

「なんだ、今の」
「分かりません。緑間君曰く黄瀬君への魔法の呪文らしいです」
「効果は抜群だ」
「ですね」

頷き合いながら黒子と火神は自分の家に戻ってきた。
赤司が椅子ごと倒れていた。

「どうしたんですか? 赤司君、大丈夫ですか??」
「息、息してるか?」
「……滅茶苦茶寝てます」
「寝息かよ!! って、これ寝相?」
「赤司君は今まで誰よりも遅く寝て誰よりも早く起きる人でした」
「とりあえず叩き起こせよ」
「………………そこはキスじゃないのか?」
「赤司君、狸寝入りですか?」
「お前達が帰ってくるのが遅いのが悪い。どこまで行っていたんだ」
「すみません。隣に拉致られてました」
「隣か……僕が契約した方じゃない部屋からカリカリと聞こえてきて不気味で
 死んだふりをしたくなるほどだ」
「死んじゃだめですよ、赤司君」
「隣って黄瀬か」

火神は嫌な顔をしたがお腹が減ったのかキッチンへと向かった。
黒子も早く食べたかったので異論はない。
隣のことは一旦忘れてテレビでも見ようと立ち上がった。

「テツヤ、これからどうするのか考えているかい?」
「これから、ですか? 就職先でしょうか」
「分かっているならいい。僕のところに永久就職だ、いいね?」

赤司の実家が何をしているのか黒子は思い出そうとして、
そもそも知らないという結論になった。
青峰や黄瀬と赤司がどんな家の人なのか考えたりもしたが、
本人から正解を聞いたことはない。

「赤司君、具体的に何をしているんですか?」
「そうだね。……テツヤは夜の方を重点的に頑張ってくれればいいよ。
 家事は人に任せていい。テツヤはテツヤのできることだけすればいい」
「夜ですか……。昼間はダメなんですか? 夜は短いですよね」
「テツヤも積極的だね。一日中だっていいよ。僕は受けてたとう」
「それは身体が持ちませんよ」

具体的に職種を聞いたもののはぐらかされてしまったが、
勤務時間は聞き出せた。
赤司の一存で変わるらしい。
夜に人手が足りないのだろうか。
よく分からない。

「週休二日制ですか?」
「ある程度は間があった方が捗るかもしれないね。
 最初は覚え込ませるためにみっちり仕込ませてもらうけど」
「その方が効率は良いですね。休みが挟まると感覚を忘れたりしますから」
「テツヤは飲み込みが早いから心配はしていない」
「あんまり大役に抜擢されると……恐れ多い気分になります」
「大丈夫。テツヤの緊張も全部解きほぐしてあげる」
「赤司君のことは疑ってません。ボクが上手くできる自信がないだけです」

何をするのかさっぱり分かっていないので仕方がない。
だが、赤司は口を割ることをしない。
もう一度ちゃんと聞こうかと思ったが火神が蕎麦が出来たと呼ぶので黒子は言葉を飲み込んだ。

「就職の話はまた大学で進みたい先がなかったら聞かせてもらいますね」
「僕の隣以上の場所はないよ」
「そうかもしれませんけど、何もしないで決めたくないです」
「テツヤのそういうチャレンジ精神はいいと思うよ」
「ありがとうございます」
「いいから、早く持ってけよ。蕎麦伸びるだろ」
「ザル蕎麦じゃないのか」
「温かいのダメでした?」
「…………今日は気分がいいので許すが次はない」
「そんなにかよ。へぇへぇ、次は冷たくします」
「火神君は眩暈がするほど良い人ですね」
「お前、黒子、それ褒めてねえからな」

言い合いながら三人は席について蕎麦を食べ始める。
火神が七杯目をおかわりする頃にやっと二人は三分の一を食べた。

「赤司って少食だったか?」
「猫舌です」
「あぁ、悪い……だから、冷たい方が良かったのか」
「火神君はちゃんこ蕎麦になってますね」
「なくなっちまうからまた茹でねえと……」

食べている途中に箸をおいて赤司が立ち上がる。
壁をジッと見つめる赤司に黒子も隣に並ぶ。

「どうかしましたか?」
「うるさいな」
「赤司君?」
「おい、蕎麦伸びるぞ」
「箸を持ったまま歩くな。……いや、その箸でこの壁を突け」
「はあ? 行儀悪いな」

もう何も疑問がなくなったのか赤司の言う通り火神は壁に箸を向ける。
少し箸が壁に当たったかと思えば崩れた。

「え?」
「え?」
「はい?」
「音としてスプーンで壁を削っていたのだろうな。
 リフォーム代はちゃんと払ってもらうぞ」
「赤司っち?」
「涼太か。…………テツヤ、僕とお前のプライベートが浸食される。
 部屋を移動しようか」
「そうですね。黄瀬君はリフォームしてくれないですね」
「いや、お前なにしてんだよ」
「赤司っちが言った通り壁に穴開けたっスけど」
「何してんだよ!!!」
「この壁を取っ払えば同じ家に暮らしていることになるっスよね」
「ならねえよ!」
「そうだ。隣人が同居人を気取るなど図々しいぞ、涼太」
「押しかけた奴が言うなよ」
「黄瀬君に監視されるのは嫌なのでベニヤ板でも張り付けておきますね」
「なんで、なんで赤司っちいるんスか? おかしくない?!」
「おかしいのはお前の行動だ」
「赤司も十分におかしいだろ。黄瀬も壁壊すなよ」
「……お蕎麦が伸びてしまいます。食べましょう」
「ズルいっスよぉぉ」

壁に空いた穴から目玉だけがギョロリと見える黄瀬は本体がモデルだったとしても恐ろしい。
黒子は溜め息を吐いて火神に「お蕎麦はまだありますよね」とたずねる。

「火神君、自分のおかわりのついでに黄瀬君の分も作ってあげてください」
「黒子っち!! 黒子っちっぃ!!!」
「壁の穴を広げるんじゃない、涼太。玄関から入ってくることを許す」
「わーい、やった〜」

恨みがましい声が一転していた。

「あぁ、面倒くせえな」
「お蕎麦はいっぱい買ったじゃないですか」
「ちげーよ、バカ」
「なんですか、その言い方は」

黒子は火神の脇腹を殴る。
何故か反対側から赤司も加勢してくれた。
いいポイントにでもハマったのか火神は崩れ落ちながら「あぁ、まったく」と疲れた声を溜め息と一緒にあげた。



2012/10/27
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