蜃気楼をつかまえろ | ナノ
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私達を狙っていたビームは外れて、ただの野原に直撃した。
見上げれば、サンジがパシフィスタの頭部を蹴ってビームの方向を変えてくれていた。


「ぐうっ…!」


するとサンジが顔を痛みで歪めながら空中で足を押さえた。
パシフィスタがサンジに向かって口を開く。


「サンジ…!」


私は地を蹴って飛び出したままの勢いでサンジの首に手を回した。
どさあっ!と地面に倒れると同時に、パシフィスタのビームがさっきまでサンジが居た空間を突き抜ける。


「ぐ…っ、悪ィ、名前」


眉を寄せたままそう言ったサンジはそのまま血を吐く。
首を横に振りながら、私はサンジを木の影までずるずると引っ張った。


「サンジ…絶対此処から動かないでね…!」


そうして私は走り出す。
血の混じった声でサンジが私を呼び止めるのが聞こえたけど、振り返らなかった。

ブルックがパシフィスタの意識を私とサンジから自分に移していてくれて、パシフィスタは今ブルックを追っている。


――悪魔の実の感じは確かにしない…。
でも今…パシフィスタに向けて『拒絶』をしたら確かに少し、ビームの威力が霞んだ。


「ぐわっ!」
「…ブルック…!」


刀を抜いたブルックがパシフィスタに飛ばされた。

ぐきりと嫌な音が響いたことにぐっと眉を寄せるけど、パシフィスタから離れたことに安心した。


――…きっと、出来る…。


パシフィスタがウソップとゾロに向けて口を開いた。
光が集まっていく。


「リジェクション!!」


走って走って、ウソップとゾロの前に飛び出したままパシフィスタに向けて手を翳した。

半分の威力、それでも大きな威力のビームが私達の間を貫く。
爆風が起きて、飛ばされるウソップとゾロ。

同じように飛ばされながらそれを見て、私は安心すると、近くの木にガッと着地した。
そしてそのまま直ぐに木を蹴ると、パシフィスタの肩に膝をついて、顔に手を翳した。



―――キュイイイン、
「…!」



聞こえた機械音に咄嗟に体を右にずらすと、直ぐ横をビームが通り抜けた。


「名前!危ねえ!何やってやがる、退けろ!」
「名前さん!危ないです!」
「名前っ!何やってんだ、止めろ!」
「…がっ…名前…!」


サンジ、ブルック、ウソップ、ゾロが口々に叫んでくる。
動こうとしているけど、皆体がボロボロで地面に崩れるだけ。


お願いだから…みんな、動かないで…!


手を向けてきたパシフィスタの手の平には、口と同じようにビームが発射される穴。


「リジェクション!」


ガガ…!と音を立ててパシフィスタの動きが止まった。
手を翳すと、何時かの蔓男の能力を吸収した時のような熱さが手を通じて入ってくる。


…パシフィスタが改造されたロボットなようなものなら、外側から攻撃をするより、内側に攻撃をして回路をショートさせるのが良い。

――パシフィスタの体内にビームを返して、自爆させる。

自爆させると同時にリジェクションをかければ、パシフィスタから離れた皆に、きっと被害はいかない。






「――…おやぁ?おかしいねぇ、あの子の能力は悪魔の実の能力者にしか効かないんじゃなかったかなぁ…」
「……名前…!」


「――アイツ…!」
「え、なに、なにっ?!フランキー、名前は何を…」
「パシフィスタの体内に、吸収したビームを返すつもりだ!」
「っでも名前の能力は能力者にしか…パシフィスタは兵器じゃないの?!」
「分からねェが…確かにさっきパシフィスタのビームの威力は落ちた。けどあんな距離で自爆なんかさせたらアイツまで吹っ飛ぶぞ!」
「っそんな…!名前、やめなさい!」


「――止めろ!名前、止めろよぉ!!」
「っおいマサカリ!アイツは兵器じゃねェのか?!」
「…お前の問いに答える義理は無ェな、麦わらのルフィ。わいは世界一口が堅い男…戦桃丸だからな!…パシフィスタは確かに兵器だ。名字名前が何故能力者じゃなくても攻撃を止められるのかは分からねえが、自爆させられちゃ困るな…」
「あんな至近距離で自爆なんかさせたら…名前も、っ…死ぬわ!」
「っ!止…めろ!やめろ!名前、止めろぉお!!」






―――やらなきゃ。
やらなきゃ、皆が死んじゃう…!
そんなの…絶対嫌だ。

…ごめんねレイリー。
忠告してくれたのに…大将が居る前で能力者以外の攻撃を止めて、吸収して。
海軍が知ってる私の能力は増大と減少、停止だけなのに。

でも…でもね…私は―――





「――…リバース…!」





仲間を、守りたいんだ。




100104.