蜃気楼をつかまえろ | ナノ
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びゅううと耳の横を通り過ぎる風の音。
近付いてくる藁のような天井の建物。


あー…これヤバいよね、きっと。
シャボン玉も何故にいきなり割れる。


きっとナミからしたら呑気だって言われる思考のまま、近くに浮いていたシャボン玉に手を伸ばす。
速い落下速度の中で私の腕に着いたシャボン玉を下に翳した。



―――バチンっ!



天井で一度バウンドしてから、乾いた音で弾けて、お陰で速度が急激に緩んだ。

シャボン玉のバウンドで少しまた飛ばされた私は、何故だか空いていた天井の隙間から建物内に入り込んだ。
再び感じる浮遊感。


……苛めか。
もうシャボン玉無いよ。




「「「名前!!」」」


すると麦わら海賊団の皆の声が聞こえて、次の瞬間私はぼすっと横抱きに誰かの腕の中に着地…?した。
衝撃に思わず閉じていた目を開ければ、


「……お前か」


にやりと口元を上げる、赤髪がつんつんと上を向いた男の人が私をキャッチしていてくれた。


「おいお前!名前を離せ!けど受け止めてくれてありがとな!けどおれが受け止めたかっ」
「うるっさい!」


ルフィの声が聞こえて顔を向ければ、丁度ナミの拳を喰らっていた。


ていうかあれ…皆居る。
コーティング職人を探しにいったルフィ達も、散歩しにいったゾロも、船に居たウソップ達も、皆居る。


おぉ、と思いながら、赤髪さんにキャッチしてもらったままだと思い出して、降りてお礼を言おうとして


「クク、」


降りれなかった。
って、何でだ。

私を見ながら満足そうに笑う赤髪さんが口を開いた。


「お前だろ?懸賞金5億Berryの賞金首…『モリガン』」
「、…」


久しぶりに聞いた単語に静かに見上げる。
するとまた違う男の人が立ち上がった。


「『モリガン』、意味は破壊だが司るものは勝利をもたらす神の意だな…。麦わら屋の一味に入ったとは聞いていたがそれらしい姿は見えなかったからな…お前か」


アニマル柄の帽子を被った男の人に見つめられる。

『モリガン』
私のひとつの呼び名。
意味はこの人が言った通りで、破壊と、そして勝利をもたらす。
手配書を越えていつの間にか広まっていた。

するとアニマルさん(って何か変だな)がにやりと笑った。


「ユースタス屋、ソイツは俺が貰う」
「オイ!お前何言って」
「クク、悪ィがコイツを欲しがってるのは俺も同じだ。やるかよ」
「お前も何言ってんだ!名前はおれの仲間だぞ!」


ムキーっと怒るルフィに周りを見てみれば、他の麦わら海賊団の皆も、怒っていたり、赤髪さんとアニマルさんを睨んでいたり、ロビンに至っては何時もの微笑みのまま腕を前で交差していてる。

私は視線を赤髪さんに戻して、立派な毛皮がついたコートを引っ張った。


「私は麦わら海賊団の仲間だから、駄目だよ」


そう言えば、皆が凄く嬉しそうに笑った。


「…あ、でも…」
「………」

ふにゃり、
「助けてくれて、ありがとう」


この人がキャッチしてくれなかったら、私はきっとこの堅そうな地面にべしゃっ!だった。
それは嫌だ。


すると麦わら海賊団の皆が何故か怒っていた。
直ぐ笑わない!とか、名前の馬鹿!とか、なんでそう…とか言っている。


……なんでだ。
この一言に尽きる。


すると赤髪さんが可笑しそうに肩を震わせて笑った。


「呑気な奴だ」
「あー…よく言われるよ」
「だろうな」


そうして、私を横抱きにしたまま入口に向かって歩き出した。
ぎゃーぎゃーと騒いでいた皆がぴたりと止まって、そしてまたさっきより大きくぎゃーぎゃーと騒ぎ出した。
そんな皆に赤髪さんは振り返ることなく言葉を紡ぐ。


「クク、俺達は海賊だぜ?欲しいものは…力づくでも手に入れるまでだ」


そうして歩く赤髪さんは、私を見ずに口を開いた。


「俺はユースタス・“キャプテン”・キッド。此処を出たら海軍に包囲されてる。お前の能力を試してみてェ」
「名前!」
「あ…ルフィ」


すると後を追ってきたルフィが私の名前を呼んだ。
キッドの肩越しのルフィは眉を寄せながらキッドから私を奪い取る。


何でも良いけど…私普通に歩けるよ…?


ぎゅうぎゅうに抱き締めてくるルフィ。
すると奥からアニマルさんが歩いてきた。


「名前、俺はトラファルガー・ロウだ」
「ん…よろし」
ごん!
「……いだい」


よろしく、と言おうとしたらルフィに頭突きされた。
最近ルフィの中では頭突きが流行っているのかな…いやまさか。




「―――出てきたぞ!」
「あれは…船長だ!先陣切って出てきやがった!」
「それに…名字名前だ!」


段々と騒がしくなるざわめきに、ルフィが私を優しく降ろすと「此処で待ってろよ」と何時もの笑顔と共に頭を撫でる。


「オイ、頼むぞ」
「名前、俺もだ」


すると階段を下りていくキッドとローに振り向かれながら言われた。
ルフィが怒りながら後を追っていく。


「お前ら引っ込んでて良いぞ!おれがやる!」
「オイ、聞こえてんのか。お前らに引っ込んでろと言ったんだ」
「もう一度俺に命令してみろ。お前から消すぞ、ユースタス屋」


あ…なんかこの三人、似てるかも…。



「「「此処は、おれ一人で十分だ!!!」」」








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