「あれ…皆も残ったの?」
「おう名前。俺はコーラエネルギーを満タンにしとかなきゃならねェんでな」
「俺もその手伝いだ!名前はどうしたんだ?」
「……眠かった」
「「ああ…」」
船首から芝生甲板に下りる階段でフランキーとウソップが樽にコーラを次々に貯めていた。
目を擦りながら答えれば凄く納得されて、なんだか複雑な気持ちだ。
――ケイミー、パッパグ、ハチの助言で魚人島に行くにはまず此処、シャボンディ諸島で船をコーティングしてもらわなきゃならないらしいと分かった。
ハチの知り合いのコーティング職人さんの所へルフィ達が今向かっている。
―――がちゃ、
「あれ…サンジ」
「お前も残ったのか?」
するとキッチンからサンジが出てきて、ウソップの問いにサンジは静かに煙草の煙をふかせた。
「あー困ったなあ。買い物に行きたいんだけどお宝を船に置いていくのも心配だなあ。誰かお宝を守ってくれるナイトは居ないかなあー?」
「イッツミー!!」
グッと親指を立てたサンジにウソップが呆れる。
私は笑いながら『イッツミー』と真似して言えば、ぐしゃりと誰かに頭を撫でられた。
「アホがうつるぞ」
「ゾロ、」
「クソマリモ…って何処行くんだテメー!」
たっと陸に降りたゾロにウソップも一緒に怒る。
ゾロは至って冷静に此方を見やり、
「散歩」
一言そう言ってくるりと背を向け歩き出した。
「おいコラー!」
「待てクソマリモー!」
「だあっ、うるせえな!此処のそれぞれのグローブには番号が書いてる。それを覚えときゃガキでも帰ってこれるだろ!」
「おおーゾロくんが成長した!」
「迷ったら直ぐ人に聞けよー!」
ウソップとサンジのその言葉にゾロは苛立たしそうに顔を歪めると、ズカズカと大股で去っていった。
その姿を見送りながら、私は近くに浮いていたシャボン玉に触れた。
「…お?」
するとシャボン玉が私を包み込むようにぶわりと大きくなって腕を飲み込んだ。
ずぶずぶと飲み込まれていくのが顔にも近付いてきて思わず目を瞑る。
「って、おわーっ?!名前がシャボン玉の中にィ?!」
ウソップの驚いた声が聞こえて目を静かに開ければ、私はシャボン玉の中に居た。
ふわふわと緩やかに漂う感覚に目を瞬かせる。
「へへっ、なんだよォ!こん中入れんのか?」
ウソップが近くに浮いているシャボン玉に手を伸ばす。
けどシャボン玉はぼよんと反動で離れていってしまった。
「…このシャボン玉は硬ェだろ。さっきルフィがシャボン玉に乗ってたからな」
サンジが言った言葉に中からつんつんとシャボン玉を押してみるも、取り込まれた時のようにはいかなく、ぶよんと弾力があるだけだった。
するとふわりとシャボン玉が浮き上がる。
「な…?!おい!」
「…多分大丈夫だよフランキー。これで私も散歩してくるー」
「そうは言っても…」
「サンジ…私はゾロじゃないから大丈夫だよー」
段々と離れていく皆に手を振った。
「―――……ん…」
微睡む意識からゆっくりと浮上する。
ふわふわと心地良い浮き方と、柔らかい匂いにいつの間にか眠っていたらしい。
「……何処だ、ここ」
瞬きを何度かして、ピントが合ってきた景色に体を丸めたまま呟く。
まずサニー号が見えない。
まあこれは何となく有り得そうなことだ。
でも周りに他のシャボン玉が見当たらない。
下を見ればちらほらと見えるから、此処は結構高い位置みたいだ。
「お…?」
すると下に白い服が大勢集まっていて、陣形を取りひとつの建物を囲んでいる。
海兵だ…しかもかなりの数の。
大砲も何個も用意してるし…何かあったのかな…。
―――バチン!
すると呑気な思考に喚起するように、乾いた音が耳に響いた。
そして次の瞬間、私の体は重力に従い真っ逆さまに落ちていった。
101225.