蜃気楼をつかまえろ | ナノ
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「ナミー」
「あら、名前が持ってきてくれたの?サンジ君は?」
「…色々あって」
「?そう」


サンジが煎れた紅茶セット片手に図書館に入ると、眼鏡をかけ海図を描いているナミ。
その机の横に紅茶を置いて海図を覗き込んだ。


「こんなの描けるんだ…」
「ふふん、凄いでしょ」
「絵とかも上手なの?」
「…アンタ最近スルー上手くなったわね。んーまぁ普通よ?あ、じゃあ名前描くわ!」
「おー」


手近にあった紙に簡単に描かれていく人間は、ぼうっとしていてた。
少し黙って、不自然に明るく笑った。


「うわーこの人ぼけっとしてるね」
「アンタよ名前」
「……私もナミ描く」


ペン立てから一つ取り出し、ナミが描いた…私の横にかりかりと描いていく。


「…出来た」
「どれどれ…って名前!あんた喧嘩売ってんでしょ!何よこの目と鼻と口だけののっぺらぼう!」
「ナミ」
「………なるほど?絵下手なのね、名前」


ひきつった顔で笑みを浮かべるナミに「じゃあチョッパー」と言ってがりがりとペンを滑らせる。
柔らかそうな毛もちゃんと表現して、でもポップな可愛さは残す。
タン、とペンを置いた。


「出来た」
「どうせまた…ってうま!なによこれ!」
「チョッパー」
「ちょ、私も描き直しなさい!コラ!」
「やだ」
がちゃり。
「…あら、何してるの?あなた達」
「あ、ロビンー見てこれ。チョッパー」
「名前が描いたの?ふふっ上手ね」
「それなのに私はこれよ?見てロビン」
「ふふっ良く描けてるわね」
「やったー」
「ロビンまで…!」


優しく髪を撫でてくるロビンと項垂れるナミをそのままに、びりっとチョッパーの絵を切り取る。


「チョッパーに見せてくる」
「きっと喜ぶわ」
「あ、ナミあげるよそれ」
「要るかあ!」



















「チョッパー」
「お?名前!」
「じゃん」
「…ん?これおれか?!」
「可愛く描けたよー」
「か、可愛いなんて言われても嬉しくねえぞ!このやろがぁ!」


医務室のドアを開けば薬草を磨るチョッパーと、隣にウソップが居た。
チョッパーが描かれた小さな紙をウソップが覗き込んで


「名前上手だなー!なあっ俺も描いてくれよ!」
「んー」


紙をひっくり返してチョッパーの裏側にガリガリとペンを滑らせる。


「出来た」
「お、って鼻ながっ!」
「似てるぞウソップ!」
「こんな長くねえよ!」


びしびしとウソップが紙を指す先には、鼻が紙の中じゃ終わっていないウソップ。

ふらりと笑ってまたドアから出た。
そして顔だけ出す。


「あげるよそれー」
「じゃあおれ貰うぞ!」
「うっこれを貰わないと死んでしまう病が…」
「えへへぇ、医学書に挟んどこー」
「無視かぁあ?!」



――あ、ブルックのバイオリンの音が聞こえる。
行ってみよー。




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