不幸と幸福は数珠繋ぎ | ナノ
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「ハンジ、良かったら少し体を診て欲しいんだけど」
「えっナマエの体を!?見るよ、もちろん見る見る!大丈夫、なるべく痛いようにはしないから!」
「あ、実験とか解剖じゃなくてね、手当てをお願いしたいんだ」


言えば笑顔のまま固まったハンジに、悪いことしたかな、なんて頭の隅で思った。




壁外調査の際、私は一人で馬を走らせる。
もちろん少し走ればそこには同じ調査兵団の人がいるけれど、二、三人で固まって移動することはまず無い。
調査兵団に入団した時、自分からエルヴィンに頼んだのだ。


自分でもここまでくるとスゴいと思うが、私は巨人を集めやすい。
例えば一体の巨人がいて、その巨人からの距離が100メートルの人と300メートルの私がいた時、必ず奴らは私の方に来る。
さすがに、あまりの近距離に別の誰かがいた時には、そちらを放ってまでは来ないけど。



まあそういったわけで、いかに巨人に遭遇しないかが大事な壁外調査において、私の体質はとても有効に働く。
エルヴィンら行路を開く先頭集団が巨人に遭わず、進みやすくするために。


それに憲兵団や駐屯兵団の人達とは違って、変人の巣窟なんて言われることもある調査兵団の人達は気兼ねなく私に近づいてくるしそれどころか、寄ってきた巨人を私が一人では捌ききれない時など助けてくれる。

確かに変で、そして優しい人達だ。



けれど今日の壁外調査で、私はミスを犯してしまった。



煙弾を確認しながら走っていた私は、昔の建物が残された場所で一人巨人と戦っている兵士を見つけた。
記憶にない顔なので恐らく新兵だろう、は完全にパニックに陥っていて今にも巨人に捕まりそうで、私は立体機動に移ると巨人の手を斬り落とそうと彼に近づいた。


「こ、こっちに来るな…!」


けれど私の姿を見た途端更なる恐怖に顔を染めた彼は私を蹴飛ばした。
あっと思った瞬間には私は脇腹から巨人の指に激突していて、衝撃を感じると共に吐血する。

まあ立体機動を駆使してその巨人は倒したけれど。


「す、すいませんナマエさん…!俺こんなこと、するつもりじゃ…!」


建物の上で青ざめる新兵に、私は少し咳込むと両手を横に振った。


「いや、私の配慮が足りなかったよ、ごめんね。巨人と私の二重災難じゃ、動転するのも無理ないよ。…それより、自分の小隊とはぐれちゃったんだよね?とりあえず煙弾を確認して、一番近い小隊と合流するといいよ」






「折れてはいないから、古傷でも開いて吐血しちゃったのかもしれないな」
「分かった。ありがとう、ハンジ」
「どういたしまして。それにしても、巨人が寄ってくるなんて本当スゴいなあ!ねえ、良かったら今度チカチローニとアルベルトに会ってよ!」


いいよ、と言えばパアアッと顔を輝かせてその時の手順やらを一人で話しだすハンジを横目に、今の名前って確かこの間捕獲した二体の巨人だっけ、と思いながらシャツを着ようとすると止められた。


「あっ、待ってナマエ!その前にちょっとだけ体見せてくれないかな」


ハンジの言葉に頷いてシャツを再び机の上…というかここはハンジの研究室でそこにある机なので資料やらが散乱しているため正確には資料の上、に置く。
下着だけつけた私の上半身をハンジは興味深そうに触っていたかと思えば、背中を見て声を上げた。


「ナマエ、何?これ」
「気づいた時にはもうあったんだよね」
「ちょっとスケッチしてもいい!?」


頷けばハンジは机の上にあった適当な紙を裏返してスケッチしていく。



私の背中中央には小さな痣があり、模様のようになっている。
刺青のようなそれに地下街時代のことを思い出してみるも、誰かに彫られた記憶はないしもちろん自分で彫った記憶もない。



するとドアがノックされ「ナマエ、いるか」とエルヴィンの声が聞こえた。
返事をすればドアを開けて入ってきたエルヴィンはほんの少しだけ眉を寄せて困ったような表情になる。


「ハンジもナマエも無防備すぎる。ナマエ、シャツをーー」
「あとちょっとだけ待って!もう少しで終わるから!」


私のシャツを手に取ったエルヴィンはハンジの様子に不思議そうにしたけれど紳士だからか私の背中を見ようとまではしなかった。
相変わらず紳士だなあ、と思いながらエルヴィンに手渡されたシャツを胸元で押さえる。


「ナマエが怪我を負ったと聞いて来たが、大事そうでなくて良かった」
「うん、少し吐血したくらいだから。ーーエルヴィン、私いつか、今よりももっと周りと離れた場所で大勢の巨人に囲まれても、切り抜けられるくらい強くなるよう頑張るね!」


握り拳を見せて決意表明すれば、エルヴィンは目を細めて微笑んで私の額を人差し指で小突く。


「そんな陣形は組まないさ」
「あ、そっか今はまだそこまで強くないもんね」


頑張ろう、と一人頷けばハンジのスケッチが終わったらしい、礼を言われたので立ち上がってシャツの袖に手を通す。
するとその時ドアがノックされたかと思えば返事も待たずにそれは開いて、立っていたリヴァイに思わず嬉しくなって名を呼べば、リヴァイはわずかに目を見開くと早足で寄ってきて私を背に隠した。


「お前ら……」
「すまないリヴァイ。だがナマエはハンジに手当てを受けていたんだ」


エルヴィンの言葉にリヴァイが首だけで私を振り向く。


「奇行種が出た場所にいたのか」
「ううん、私がミスしちゃったんだ」
「ていうかリヴァイ、どうして私の研究室に来たの?」
「ナマエがいる気がした」
「何そのセンサー!やっぱり今度調べさせてよ!あ、ナマエもチカチローニとアルベルトに会いに行く日いつにする?」
「待て、なんだそれは」
「流石にそれは不味いと思うが…」



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