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サスケとソラから少し離れたところまで歩くと、私は歩みを止めにこっと笑い、リクを見上げた。


「ありがとう、リクも報告書はいいよ」
「えっ?」
「サスケもきっと今頃、ソラの誘い断ってるだろうから」


さっきの様子じゃ、と眉を下げながら笑うと、リクは目に見えて慌てた。


「名前さん、いったいどういう…」


だから私が逆に疑問符を浮かべる。


「リクはソラのことが好きだから、打ち上げに行きたいんじゃないかと思っ」
「うわあああ!えっ?名前さん、どうして気づいて…」


リクは真っ赤にした顔を腕で隠す。

照れている、そんな可愛い仕草ににっこり笑う。


「見ていたら分かるよ。けれどソラはサスケに夢中だから、私と仲良くすることでヤキモチやかせようとしたんだよね?」
「そ、そこまでお気づきでしたか…」


するとリクはバッと私に頭を下げる。


「すいませんでした!先輩をこんな…俺の勝手な行動に巻き込んでしまって…」
「え?え?どうして謝るの?か、顔を上げて?」
「名前さん…」
「私なんかがソラのヤキモチの対象になるかは分からないけれど、リクの望むような結果になれば、それは私はとても嬉しい。だからジャンジャン私のことを使っ」
「すいませんでしたァア!」


するとまた言いかけたところでリクが頭を下げた。
しかも今度はさっきよりも頭の位置が低い。

ーーやっとのことでリクのかたく下げられた頭を上げると、リクは落ち込んだ顔で頭をかいた。


「本当にすいません、名前さんの優しさが身にしみるとこう、罪悪感が滝のように…でも、こんなやり方もう止めます。馬鹿な真似したおかげでサスケさんにも睨まれちゃうし」


言われてみれば、確かにサスケ、任務中結構リクのこと鋭い目で見てたかも。
最初は人柄やらを見定めているのかと思ってたけど、サスケがそこまで時間かかるわけもないし…。
そうか、サスケもリクの考えに気づいて…だから私情をはさむなって言ってたのか。


ふうむと私は考え、次いでハッとした。
少し慌てて、リクの体を元来た道に向かせる。


「ほら、早く戻らなきゃソラがどこかに行っちゃうよ?」
「は、はい!本当にありがとうございます!あの、報告書も…」
「リクは本当に優しいね。けれど大丈夫、私のことなんて気にしないでいいんだよ」


にっこり、笑うと、リクが視界から消えた。


「すいませんでしたァアア!」


と思ったら地面から声が聞こえて…私も慌てて膝を着いたのだった。












ーーリクとの少しの騒動を終えてから、私は報告書をまとめようと上忍待機所に来ていた。
リクとソラの二人はどうなったかな、と思いを馳せながら、待機所のドアを開ける。


「…名前、」


そして、サスケと目が合った。
ーー人間、というか私は思いがけないことに遭遇すると驚くどころか逆に落ち着くらしく。
根拠のない妙に穏やかな気持ちで私はにっこりと笑い、そうしてまたドアを閉じた。


い…いやいやいや、おかしい!
絶対におかしい…!


そうしてドアノブに手をかけたままの状態で、急にどっと冷や汗のようなものが出てくる。

ーー上忍待機所は基本的に、いつも人がいない。
明かりは常に点いてるけれど、上忍は大体皆忙しいから任務に出ている。
そして仲間内で集まるとなれば、皆大抵は外のお店に行く。
たまに人に会うとすれば、それは今の私のように報告書をまとめるために利用している人達で。

だから上忍待機所で誰かに会うのは珍しいことだったし、しかもよりによって今何故だか会えない、会いたくないサスケだなんて!


「おい、」


すると内側からドアが開かれて、未だドアノブを掴んでいた私はそのまま引っ張られる。

よろめいた私の体は、サスケに抱きとめられて。

突然のことに目を丸くしながらサスケを見上げて、近い距離で目が合う。
瞬間、頭の中でサイレンが響いた気がした。


「っ…名前、お前何して」


息をのみ目を逸らしたサスケから、私は瞬時に床を蹴り距離をとる。

サスケが更に驚いた顔で私を見て、私は息を乱し、場には沈黙が落ちた。


あ…ぶなかった!
やっぱり、どうしてだかは全く分からないけれど、サスケに近づいたり触れると、症状が悪化する。
今、急いで離れてもこの鼓動だ…!
鳴り響いたサイレン、自己防衛反応に従って良かった…!


少し呼吸を落ち着けてからサスケを見上げれば、サスケは微かに傷ついたような表情をしていて、私の胸が痛む。
けれど、そうして失礼な反応をしたことを謝ろうとした瞬間、ムッとした顔になったサスケが歩いてこようとしたので、私は慌てて手のひらをサスケに向けた。


「サ、サスケ…待って、くれないかな」


言えばサスケは、不機嫌そうにしながらも足を止めてくれる。

私は気まずさを覚えながら手を下ろした。


「どういうつもりだ」
「ご、ごめんサスケ、ただ私は適切な距離をとりたくて…」
「適切…?何言ってる」


眉を寄せながらのサスケの言葉に、ごもっとも、心の中で同意する。
私自身、サスケからどの程度離れればこの症状が無くなるのか、分かっていないのだから。


「ハッ!そ、そうだサスケ、迷惑かけるんだけど、少し協力してくれないかな?」


協力…?と疑問符を浮かべたサスケが、腕を組む。


「何にだ」
「今言った、適切な距離についてだよ。サスケはそこで立っててもらえればいいから」


うん、と固く頷くと、私は一歩ずつ、サスケから離れていく。

「ところでサスケ、どうして待機所に?」
「ナルトと少し話して、その帰りだ。…まだ離れるのか?」


サスケの問いに、眉を下げながら頷く。
私の鼓動はまだ速い。


「そういうお前は…リクはどうした」
「ああリクは…まあ報告書ならリクも作ったことあるだろうし、育成なんてならないから帰したよ」
「…さっきと意見がまるで違うな、名前」


サスケの言葉に、思わずギクリと笑顔が固まる。


「どうしてそこまで俺から離れる。どうして…俺を、避ける」
「さ…避けてない、よ」
「嘘も相変わらず下手だな」
「…っ」
「…まあいい。ーーお前が離れるなら、俺が近づくだけだ」


言うと歩き始めたサスケに、私はたまらず瞬身の印を結んだ。


「なっ…」
「ごめん、サスケ…!」



(限界突破)


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