拍手文 | ナノ
×
BLコンテスト・グランプリ作品
「見えない臓器の名前は」
- ナノ -
幽霊屋敷は、入るとまず大きく左右に廊下が分かれていた。
おそらくまず大きく二つに分かれ、そこから枝分かれしているんだろうと予想する。


「俺と名前が右、リクとソラが左の道だ。三十分経っても入り口に戻っていなかったらそのチームの道の後を追え」


そうして隊長であるサスケの指示に各々返事をし頷き、四人はチームに分かれた。
ーー道に入ると直ぐにハァとため息をついたのは、左の道を行くこととなったリク・ソラペア。


「なんでリク、アンタと一緒なのよ。これじゃいつもの任務とそう変わらないじゃない」
「だからさっきも言ったけどその言葉、そのままそっくり返す」
「フン。大体なによ、いい子ぶっちゃって、かっこつけちゃってさ!俺が守ってあげますから…じゃないっての」
「なんだよ!お前だってなにが幽霊屋敷こわぁいだ。お前虫もお化けも大得意だろ!」
「大得意ってなによ!」


いつの間にか歩みを止めてギャンギャンと言い争っていた二人は、はたと止まると再び同じタイミングでがっくりと肩を落とした。

ソラが不機嫌そうにリクを見上げる。


「ねえリク、アンタさっき、サスケさんが任務に私情をはさんでるって…」
「ああ…お前だって本当は分かってんだろ」
「…フン」


不機嫌そうに鼻を鳴らしたソラは、けれど口角を吊り上げると意気揚々と歩き出す。


「いいわよ別に。恋は障害があるほど燃えるもの」


前を歩いていくソラの背中に、同感、とリクも笑った。


「あーあ、せっかくサスケさんが怪我でもしたら、私の医療スキルで手当てして点稼ごうと思ってたのに」
「俺達も参加するような任務であの二人が怪我することなんてねぇよ。それに万が一そうなったとしても恥かくぜ。あの二人の班には春野サクラだっていたんだから」
「もう!そこらへんの忍は化け物揃いなのよ」













ーーところ変わってこちらは右の道から入っていったサスケ・名前ペア。
終始ビクビクしている名前に、サスケがニヤリと愉しそうにしている状況だ。


「それにしても」


サスケが、蝋燭の灯りが揺らめく薄暗い廊下のどこか見ながら言った。


「人材育成の為とはいえ、俺とお前が幽霊屋敷の調査の任務だ」
「うん、なんだか平和だよね。ーー昔七班で任務していた時のことを思い出すよ」
「そうだな」


するとその時、風がどこからか吹いたのか首筋を撫でて、私は思わず肩を揺らす。


「け、けれどサスケ、この屋敷…いったいどうなっているのかな」
「それを今確かめてるんだろ」
「そう、なんだけれど…チャクラ反応は無いのに、サスケも私も何か感じるだなんて」


それにこの屋敷、外見通りかなり広い。

歩いても歩いても先が見えないし、だから私の心臓も常に緊張によって支配されている。


「…おい」
「なに?サスケ」
「…怖いか」
「…うん、やっぱり年を重ねても苦手なものは苦手みたいだよ。だからそういう類の屋敷じゃないことを望むかな。さっきから心拍数もーー」


そこまで言うと、私は口を閉じた。

サスケが私の手を取ると繋ぎ、そうして歩き始めたから。

先を歩いていくサスケの背中、そして繋がれた手と手が視界に入った瞬間。
再び、そしてさっきよりも速く心臓が動く。


あ、あれ、おかしいな、幽霊がいるかもしれないっていう緊張と、何かが違う。
それになんだか頬も緩みそうになるし、そもそも熱をもってきた…心拍数上昇のうえに、発熱に筋肉弛緩、だと…?


「俺は幽霊なんて信じていない。けど、俺のすることは…昔から変わらない」
「……」
「自分のことを守らないお前のことは…俺が守る。だから、大人しく着いてこい」
「サ、サスケ…」


私は震える声で名前を呼んだ。


「大変だ、心拍数が…」
「なんだ?」
「おかしなことになってる、さっきよりも速くなってて私どうしよう」
「…それは俺が、お前にとって幽霊よりも怖い存在だと言いたいのか?」



(サスケに触れられると、症状悪化)



120830