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「#年下攻め」のBL小説を読む
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風の国、砂隠れの里に遊びに来た名前を案内していたのはテマリとカンクロウ。
けれどもう何度も来ている内に馴染みが何人も出来たのか、風影邸に向かうまでの間に次々と砂隠れの者に話しかけられる名前に、テマリとカンクロウは名前に断りを入れてから、自分達はそれを少し離れたところで待っていた。


「相変わらずだな、名前は」
「こりゃ我愛羅の奴、痺れ切らしちまうじゃん」


年配の夫婦と話し終えたらしく彼らに礼をした名前がこちらにやってこようとして、また話しかけられる。
今度は若い母親と小さな男の子だ。

思わず笑ってしまうテマリとカンクロウに近づいてきたのは、砂隠れの若いくのいち達で。


「相変わらず人気ですね、名字名前さん」
「お前達、ってなんだそのふてくされた顔は?」


数人のくのいち達は皆、頬を膨らませて口を尖らせている。
そんなくのいち達に疑問符を浮かべるテマリに答えたのはカンクロウだ。


「こいつら我愛羅のファンだったじゃん。だから名前に妬いてるんだよ」
「名前に妬くって…あはははは!」
「な、なに笑ってるんですか!テマリさん!」
「お前達じゃ名前に敵うことなんてないよ。今すぐ名前と話してみて、そんな気持ちは取っ払ってもらうんだね」
「わ、分かってますよ!我愛羅様は確かに憧れだったけど、あの人に敵わないことぐらい。だって底抜けに優しいし、強いし、可愛いし」
「それに上役の方達も、むしろ早く砂隠れに来てほしいって感じですもんね」


そんなくのいちの言葉にテマリはため息をつく。


「ああ、けど上役達が名前を気に入ってるのは、名前が時空眼という大きな利益を持っているからだ」
「まあ、そういった面で名前を利益として扱うことは、我愛羅が許さねえだろうけど」


テマリとカンクロウ、そしてくのいち達が見る先では、名前が小さな男の子から一輪の花を貰っていた。
自慢気に花を手渡す男の子に名前はにこっと笑ってそれを受け取る。
そうして去っていく母に名前は礼を、子供には手を振り返していた。

テマリは口角を上げてくのいち達を見る。


「話は戻るが、そもそも私は我愛羅の相手は名前しか認めないからな」
「ま、俺も同意見じゃん」
「そうだな妹としてなら、まあカンクロウの相手でも狙え」
「カンクロウさんはこちらから遠慮させていただきますー」
「大体テマリさんの妹になりたいわけじゃないんですってば!もう!」
「なんで俺が無駄に傷つけられなきゃなんねーんだよ」


ゴチャゴチャとうるさい一帯が、口を閉じる。

それは名前の前に砂が巻き起こったからで。
ーー現れた我愛羅に名前は嬉しそうにまたにっこりと笑っていた。


「我愛羅様ってあんな顔、するんだ…」


くのいちの一人がどこか呆然としたように呟くのを聞いて、テマリとカンクロウも目を細めて笑った。

我愛羅はひどく愛しそうに名前を見ていて、おさえようともしない、もしくはおさえきれないのか溢れている愛しさに、誰が見ても我愛羅が名前のことを想っていることが分かる。

テマリはどこか眩しそうにそれを見ながら口を開く。


「そもそも周りがどうこう言うことじゃないんだよ。ーー名前は、私達でさえ我愛羅を避けていた時から弟のそばにいてくれた。笑ってくれていた」
「たとえ俺達がどうこう言おうと、我愛羅が名前を手放さねえじゃん」


先ほどの貰った一輪の花を我愛羅に嬉しそうに見せる名前。
そんな名前の手から花を取る我愛羅は、それを名前の耳にかけ髪に飾らせる。

そんな微笑ましい光景を見て、くのいち達は先ほどまでとはうって変わって、熱っぽい息をたまらず吐くと二人を見守る。
けれど反対にテマリはピクリと反応すると二人に向かって歩き出した。


「ちょっ、テマリさん!今行ったらお二人の邪魔になりますって!」
「邪魔するんだよ!我愛羅の奴、あのままいったら止まらなくなりそうな顔してる」
「あっ、ちょっとテマリさんってば!ーーカンクロウさん、止めなくていいんですか?」
「テマリは前からああじゃん。俺達も名前ももう親がいないから、長男長女の俺達が親代わりだってな」


二人の間に割り込んだテマリは我愛羅に何やら言っていて、我愛羅はどことなく恨めしそうにテマリを見ている。
名前は変わらずにこにこと笑っているけれど。


「まあ俺としては最近、子供扱いしすぎて我愛羅に我慢の限界が来るんじゃねえかって、それが心配だけどな」















「ーー名前、今日の夜は一緒に寝ないか」
「ほら見ろ我慢の限界じゃん」


ーー砂隠れの里に遊びに来た私は、夜になり我愛羅とテマリさんとカンクロウさんと一緒にご飯を食べていた。

そんな時我愛羅が言った言葉にカンクロウさんがいち早く反応し、テマリさんは口をポカンと開き箸を机の上に落としていた。
かと思えばテマリさんはすぐさま真剣な表情で我愛羅を見る。


「駄目だ、まだ早い」
「俺は名前に聞いている」
「私はーー」


答えようとしたその瞬間、テマリさんが慌てたように私を見て口を開いた。


「名前いいかよく考えろ。男は皆狼なんだ」
「ブッ!」
「だ、大丈夫ですかカンクロウさん」
「今でさえ我愛羅はこうして落ち着いたが、子供の頃を思いだしてみろ。一尾の影響があったとはいえ、尾獣化していない時だってどちらかと言えば人相が悪かっただろ?」
「ひでーじゃんテマリ。まあ否定は出来ねえけど」


テマリさんの言葉に脳裏をよぎるのは、初めての中忍試験の時のこと。
「…お前は…死にたいのか」
私を助けてくれる、我愛羅の姿。

思わずにこっと笑う。


「我愛羅はいつでも優しくて、素敵です」
「名前……」
「それに今も昔も、どんな我愛羅も、私は大好きです」


言うとテマリさんとカンクロウさんはフッと笑う。
そして我愛羅は、膝の上に置いていた私の手を握った。


「行こう、名前」
「えっ、寝室に?」


頷く我愛羅に目を丸くする。


まだご飯を食べてる最中だし片付けやお風呂もまだ……なにより今の時間は七時半。
我愛羅、疲れてるのかな。
ハッ!そ、そういえば我愛羅は一尾の影響から不眠症で、だからクマも濃くあるわけで……そんな我愛羅が早く眠りたいっていうことは、不眠症の改善!


「うん我愛羅、出来るだけ早く寝よう」


優しく笑み頷く我愛羅。
するとテマリさんがハッと息をのんだ。


「あまりに名前が自然で流されそうになってた…!」
「端から聞いたらノロケだけど、名前が言うと微笑ましく聞こえるじゃん…!」















ーーというわけでお風呂も借り終えた私は、テマリさんに「危険を感じたらすぐに大声を上げるんだぞ」と言われながら、我愛羅に手を引かれて寝室に来た。
月の光が静かに差し込むその部屋のベッドの上で、我愛羅の腕枕に頭を乗せる。
そして我愛羅の空いているもう片方の手で頬を包まれ、額に口づけられて、胸のあたりがくすぐったくなって笑った。

ぎゅうっと抱きしめられる。


「名前……愛している」
「私もだよ我愛羅、とても幸せ」


ーー子供の頃からずっと一人で寝ていた私は、誰かと寝るということに少しの憧れがあった。
だって、私は我愛羅のように不眠症ではないけれど、人の温もりを感じながら寝ること、人の心音を聞きながら寝ることはとても落ちつくもの、だからより良い質の睡眠が得られると聞いたことがあるからだ。
より良い質の睡眠はよりよい体づくりに繋がる、そう、日々の妄想もとい想像にとても貢献するものだと思う。


「我愛羅、もう少し近くにいってもいい?」


私の問いに我愛羅は少し沈黙すると、ぎこちなく頷いてくれた。

私は我愛羅の胸元に顔を寄せる。


人の温もり、我愛羅の温もり……あったかい。
それに心音も落ち着……あれ?
鼓動の早さって、こんなに速いものだっけ。


疑問を覚えた私は自分の手首で脈をはかる。


せ、性別で脈の早さの違いはあるだろうけれど、明らかに今の我愛羅の脈ははやすぎる……!
不眠症、やっぱり治ってないのかな……!


「が、我愛羅」


不安から我愛羅を見上げると、当たり前だけれど私は我愛羅の腕の中にお邪魔していたので、割と近い距離で視線がぶつかる。

すると我愛羅は息をのんだかと思えば体を少し起こして、私の上に乗り両の手を私の顔の横についた。


「すまない、名前」


私は苦しそうな我愛羅が心配で、その頬に手を伸ばす。


「我愛羅、眠れないの?」


頷く我愛羅、そして私の脳内に起こるひらめき。


「力を抜いて、我愛羅」


少し不思議そうにした我愛羅の首の裏に両手を回して、そのまま自分の胸に引き寄せる。


我愛羅が私の心音で落ち着いて、眠りに落ちてくれればいいんだけど……。


恐る恐る自分の胸元にいる我愛羅を見れば、なんともう眠りに落ちていて、安心して一人笑う。


我愛羅、まるで気絶でもしたかのように一瞬で……本当に心音効果ってすごいんだなあ。



140403