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ドクン、ドクン…!心臓が動く。
心臓が体を揺らして、私を抱きしめているサスケに気づかれてしまうんじゃないかというほどに。
頭の中をぐるぐると、サスケの言った言葉が巡る。


好き、だ。
誰が、私が。
誰を、サスケを。
私がサスケを、好き…?


「うん、好きだよ?サスケ」


サスケの言葉に答えると、サスケはバッと私を離した。


「っそうじゃ、ない!いいかよく考えろ」


サスケとの距離の近さに心臓がうるさい、けれどそれを伝えて距離を取ってもらおうにもサスケの表情が真剣で、大人しく頷くことに終わる。


「例えばだ、ナルトがお前に、サクラといたら心臓がうるさいと言ってきたらどう思う」


思ってもみなかった問いに、私は思わず顔を輝かせた。


「ナルトはサクラが好きだから、当たり前のことだと思う!」
「ああ…だから、つまり…そういう、ことだろ」


ポンポンポン、と私の頭の上に疑問符が浮かぶ。


「どうしてそうお前は、自分のことには鈍いんだ…!」
「ご、ごめんサスケ!え?でも、ナルトがサクラといて心臓がドキドキするのは、ナルトがサクラを好きだからだよね?」
「どうでもいい、そんなこと…!」


しまった、サスケ、私の病気が感染して、悪化してる…!
発熱は相変わらず続いているし、加えてさっきのナルトみたいに精神錯乱…!
木の葉を支える柱を二つも精神錯乱にさせた罪で、名字名前、打ち首ーー。


するとサスケに強く肩をつかまれた。
けれどその勢いに反して、サスケは相変わらず顔を赤くさせたまま、私からは目を逸らす。


「名前、お前も…俺といたら、心臓がうるさいんだろ。その、理由はなんだ」
「え?えっと…病気だから?」
「だから…この、ウスラトンカチ…!お前は俺といたら病気になるとでも思ってるのか…!」


なんだか話がサスケと噛み合わない。
それに心臓が違う意味でドキドキしてきた、これの原因は分かる、恐怖だ。


「他に、無いのか。俺といて起こる、その症状とやらは」
「えっと…ごめん、気分が悪くなるの」
「気分が悪く…?」
「うん、この前の、リクとソラが一緒だった任務で…ソラとサスケを見てたら、気分が…」


言うとサスケはうつむいた。
その顔は見えないけれど、自身の膝に置かれたサスケの手が握りこぶしをつくっている。


「例えばだ…ナルトがお前に、サクラがサイといるのを見たら気分が悪くなると言ってきたらどう思う」


さっきと似たような例え話に、けれど今度はその光景を想像して顔を輝かせることは出来ない。
うつむいたままのサスケが心配で。


「えっと、ナルトはサクラが好きだから、サイにヤキモチをやいて…」
「名前、お前が、俺とソラが一緒にいるのを見て苦しくなる理由は」
「びょう、」
「他にないのか、俺といて起こること…!」


サスケとの会話が分からないまま、サスケの切羽詰まったような問いに慌てて脳内検索をかける。


「は、発熱」
「…あとは」
「き、筋肉弛緩とか」
「どういうことだ…?」
「サ、サスケにね、頭を撫でてもらったり、あとサスケが笑ったりしたら、頬が緩むの」


するとサスケはうつむいていたかと思えば急にまた私を抱きしめた。


「分かった」
「サ、サス、ケ?」
「もういい、これ以上は…俺がたえられない」
「えっと、サ、サスケ」


サスケは私の首もとに顔をうずめる。


「クソ、心臓が、苦しい…」
「ご、ごめんサスケ、そんな段階まで症状が…!」
「違う、ウスラトンカチ、病気じゃない」
「え…?」


するとサスケが顔をあげる。
私がサスケの顔を見ようとすれば、サスケは私の耳元に顔を寄せた。


「…好きだ」
「ーー……」
「好きだからだ」


サスケのその言葉に、肩が揺れる。
走ってもいないのに、呼吸が乱れる。


「好き、って」


声が震える。

するとサスケが離れて、かと思えば肩を木に押しつけられた。
そしてグッと顔を寄せられる。


「好きだ、名前」
「っ…だ、だめ、サスケ」
「何がだ」
「ち、ちかすぎて、しんぞう、おかしくなる…」
「なれ、そして気づけ」
「サ、サスケ、だめ、むり…はなして」
「駄目だ、今さら、逃がせるかよ。逃がさない。逃げるな、俺から、俺の気持ちから」


サスケの言葉に、息が詰まって、呼吸が荒くなる。


「俺は、名前、お前といたら苦しい、だがそれ以上に」


顔が赤いサスケは、私と目が合うとグッと歯を食いしばった。


「…あい、してる」


掠れた声で紡がれたその言葉に、何故だか緩みそうになる頬を私は両手で覆って隠す。


頬が、緩んじゃうのは、どうして…?
病気じゃ、ない…。
…す、き…だか、ら?
誰が、私が。
誰を、サスケを。


「サスケ…す、き」


いっぱいいっぱいな胸に押し上げられて、口からこぼれたその言葉。

痛いくらいにサスケが抱きしめてきた。

力が抜ける、足の先、指の先が震えた。


「私は、なんて、おこがましいことを」


サスケは私の首元に顔をうずめたまま、何も言わない。


「ダメだ、こんなの、私が、サスケを…す、すき、なんて」
「…悪いのか?」


サスケが私を抱いたまま、顔を寄せてくる。


「だ、って…しんぞう、こわれそう」
「…それで、どんな気分だ」


私はギュッと目をつぶった。


「う、れし、い」


また、サスケに痛いくらいに抱きしめられた。














ーーその日の夜、私の手を握り何故だか街中を遠回りして火影室へと向かったサスケは、扉を開けるとにこにこと満面の笑みで立っていたナルトの首を雑に引き寄せた。


「…感謝、してる」


目を逸らしながらそう言ったサスケに、私は驚きナルトはというとーー


「本当!俺の仲間ってば可愛いってばよ!」
「離れろナルト…!名前からもだ…!」


私達に飛びついてきた。




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