舞台上の観客 | ナノ
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――木の葉くずしから二年が経ち、伝説の三忍自来也と行動を共にし修行に出ていたうずまきナルトが、木の葉隠れの里へと戻ってきた、夜。
ところ変わって風の国、砂隠れの里の前にて…。


「――結局大騒ぎにしちまって、デイダラのやつ…」
「これこそまさに、デイダラさんの芸術というやつなんでしょうか?サソリさん」
「まだ分かってねぇな、名前…アイツはただ、馬鹿なだけだ…」


――この二年でわたしは、本当に色々なことを学んだ。
そこから今の状況で言えることは…――クールな人って、割合素直じゃない人が多い、これ真理なり、なんて。
けれど本当に、今のサソリさんだってしかりだ。


するとサソリさんは、由良、と呼んでいた、砂の額宛てをした男性を少し見あげる。


「由良、お前先に行ってろ……里の連中に見つかると、色々と面倒だからな」
「はっ、サソリさま」


――夜の闇の中、月だけが光となっている砂漠を歩いていく彼の背中を見つめて、そうして私は後ろを振り返った。


「あの由良って人…よくずっとスパイをしていましたね」


後ろ…――砂の門の守りをかためていた筈の忍達は全員、地に伏せていた。
私とデイダラさんとサソリさんがここに来たと同時に、現場の指揮をとる立場だったらしい、由良、というさっきの彼が、こうしたんだ。


今の風影は、――我愛羅だ。
我愛羅本人からしても、テマリさんや、カンクロウさんからしても…下手な人選はしないだろうし、何より、不穏な言動にも気がつくはず…。
なのに何故――…


「そうか、お前にはまだ、この術は教えてなかったか…」
「、術…?」
「ああそうだ…――由良は元から、俺の部下だ。が、ついさっきまではそんな記憶、消えていたのさ…」


記憶を――。


「だから砂への忠誠も確かに存在していた筈だ、それ故に、任務もこなし、里からの信頼を得る…」
「なるほど…完璧なスパイですね」


するとサソリさんが、つい、と私を見あげる。


「最初にお前に暁が接触した時も、この術のやつだぜ」
「――――……じゃあもしかして、彼は……ギジ・セイドは、この術に…?」



「俺はお前に伝える為に、ここまで来た」
「自分でもちゃんと分かってるみてぇだが…、――お前の居場所はここじゃねえ。お前の居場所は我等の場所」
「いずれ迎えが来る。断った時は…、…ま、そんなことは無ぇか」
「俺の役目は、これで終わりだ!」



「そうだ、あの後お前に、暁のメンバーのどいつかが接触しに行っただろう…」
「…はい、だからその時から分かっていた、というか聞かされました、ギジ・セイドが暁からの使いだと。…けれどまさか、そんな術を…」



私に伝える為にこの試験を受けて、そして――自殺したっていうことなのか…?!
そんな…あ、あり得ない!
だって私は、わ、私は、そんなことをされるような、だって、…何で!
観客なのに!



「――――……」
「その場でメンバーに引き入れるなら、駒には任せておけない…が、あの時はまだ、接触段階だったしな…」


サソリさんの、というかヒルコの低い声が、風とともに流れる砂について消えていく。

その風の吹いていく方を見やれば、けれどもう、由良という彼の背中は見えなかった。


「にしても遅いぜ……早くしろよ、デイダラ……俺は待たされるのが好きじゃねえからな」
「――早さを促すとともに、私も参戦…というか援護ほどですが、行ってきます」
「――…大丈夫か」


サソリさんの言葉に、首を傾げる。
ヒルコの無機質な目が、じっと私を見あげていた。


「尾獣を狩る援護がはじめてだからか……お前、ここに来る前から震えてるぜ…」
「……!」
「お前がはじめて尾獣を封印したときよりも震えてるが……まさか身体の調子が悪いわけじゃあねぇだろうな」
「――大丈夫ですよ、問題ありません」


私はにっこりと笑った。


「一尾の人柱力、風影の我愛羅、今、ここで、捕まえてきてみせますよ」


絶対に――。






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