舞台上の観客 | ナノ
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「相手が死ぬ痛みが俺の身体に染み込む…!痛みを通り越して快感に変わる……!」


――賞金首と交戦し終えて、今は換金所の前の階段に腰を下ろし、換金している角都さんを待っているところ。

もっと詳しく言うと私は、さっきの戦闘で破れてしまった角都さんの暁の衣を縫い、飛段さんは地面に仰向けになって自らの武器を自らの腹に突き刺している状況だ。


「今回の賞金首はまァた弱い奴らだったな、名前」
「飛段さんも角都さんも、強いですからね…」
「どうしたァ?なんつーかこう、放心状態、っつーのか?みたいだけどよぉ」
「飛段さんの…術…?に度肝を抜かれて…」


すると飛段さんが嬉しそうに笑い、動けないので顔だけ私のほうへ向けた。

そのシュールな光景に、思わず手元が狂い自分の指に針を突き刺してしまう。


「やっぱりお前も、ジャシン様を崇めろよ、名前。きっと素質あると思うぜ」
「い、いや、ありませんよ」
「謙遜すんなって!」
「そうじゃないですって…」


賞金首との戦闘の前にも行われたこの儀式。

その時とほとんど同じ内容の会話に、眉を下げて笑う。


飛段さんが言うジャシン教というものは、詳しくは分からないけれど…わ、私は別段Mじゃないから、多分、合わないと思うんだ…。
それにしても飛段さんも、ここまでのマゾヒストならもう潔さを感じてしまうよ。


「――まだ終わっていないのか、飛段」


すると後ろの換金所のドアが開き、角都さんが出てきた。
換金の結果でも入っているのか、黒の硬そうなケースを手に下げている。

私は立ち上がって、暁の衣を角都さんに差し出した。


「悪いな、名前」
「いいえ、お安いご用です」


にっこりと笑い、角都さんの背中にマントをかけようとして――思わず目を丸くする。


「……恐ろしいか?」


角都さんの背中には数個の顔のようなものがあって、そのそれぞれが、まるで心臓のように脈打っていた。

問うてきた角都さんを、見上げる。


「これ…心臓ですか?」
「ああ、そうだ」


――本当に、世界は広い…!
というか、暁のメンバーが個性的すぎると思うんだ。
これがいわゆる、ギャップ萌えというやつか…!


角都さんはクールで、大人というか、保護者というか…とにかくしっかりしている。
…けれど、そうだ、角都さん…身体が弱い…というか、繊細なんだ…。
だから心臓を、己のも合わせて五個も…。


しっかりしている印象を受ける人が、実は繊細で心臓がつぶれやすく…って、か、かなり繊細じゃないか!
傷ついただけで心臓が潰れるなんて…ま、まさにガラスのハートというやつか…。



「……恐ろしいか?」



だからこそ私にも、傷つかないかどうか問う…。



暁に染まった犯罪者



私はにっこりと笑った。


「私は頑丈なので、全然問題ありませんよ!」
「ぶっ、はは!名前、なんだよその答え」


結果、飛段さんに笑われた。




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