舞台上の観客 | ナノ
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「暁…?!」


暁の正体を知るナルト、それに担当上忍らが驚きに身体を起こし、目を見開いた。
暁の正体を知らない者に向けて、綱手が言う。


「暁とは、S級犯罪者で構成された謎の小組織だ」
「S級…犯罪者……?!」
「何でそんな組織に、アイツが…!」
「それはまだ分からない。…けど、資料を見る限り名字名前は優秀だったそうじゃないか」


綱手の言葉に首を傾げる者がいくらか居た。
確かに中忍試験の時名前は技も多彩で、驚いた。
けれど病弱なので、そんなイメージは無かったのだ。

そんな面々に、逆に綱手が少し首を傾げる。


「名字名前はお前らより大分後にアカデミーに入り、同じ時に卒業したのだろう?」


その言葉に、確かに、そういえば、と今更ながらに気づく者が多数居た。
そういえば名前は途中から木の葉に来たのだ、と。


「最初からアカデミーに入っていれば、…まあ今の状態でもつまりはそうだが、飛び級だな」


そこで綱手は目を細める。


「犯罪者になれば――S級になる日も遠くないだろう」



――ドシャアッ、部屋の中に誰かが倒れる音がした。



「ナ、ナルトくんっ」


倒れたのはナルト。
隣に座るヒナタが慌てて、震えながら起き上がろうとしているナルトを支える。

綱手はそんなナルトを目だけで見た。


「無理するな。傷が開くぞ」
「……っ、…っ…」


けれどナルトは止まらず、綱手に向けて、ぶるぶると震える拳を向けようとしている。
――殴りかかろうとして、けれど傷のせいで身体が上手く動かず、倒れたのだ。


「綱手の、ばあちゃん…」
「………………」
「いくらばあちゃんでも…!名前のことをこれ以上悪く言ったら、許さねェッてばよ!!」


そう言ったナルトの真っ直ぐな瞳を、綱手は見つめる。
そして肩を竦めると、やれやれ、といった風に首を横に振った。


「分かった分かった。私も言い過ぎたよ。…何より、何人もから殺気を向けられちゃ流石の私も敵わん」


そして綱手は部屋の中に居る面々の、一人一人の顔を見回していくと、目を細めて零すように笑った。


「私も、名字名前と話しておけば良かったな…。まさかこんなことになるとは思っていなかったから…」


けれど直ぐに、表情を引き締めた。


「とにかく、うちはサスケは勿論のこと、名字名前も抜け忍だ。特に暁に入ったとなれば…」
「綱手様…」
「何だ?ガイ」
「暁は何故、名前を誘ったのでしょうか。将来有望で抜きん出た奴なら、何も名前じゃなくても…」


ガイの言葉に、綱手が頷く。


「そうだ、その疑問は今後の課題と言えるだろう。…まだ傷が癒えてない者も居るし、私から話すことは全て話し終えた」


解散だ、と言って、綱手は部屋を出ていった。




――解散だと言われても、到底動かない、動くことが出来ない面々。
そんな部屋の中に、すすり泣く声が聞こえてきた。


「ひっ…く、…っ…」
「サ、サクラちゃん…」


その泣き声はサクラのもので、前に居るナルトはぎゅうっと眉を寄せ口を噛みしめながら、何も言えずにいる。

ぽつりと、キバが言葉を漏らした。


「俺、つい数日前にアイツと会ったし、話した…」


その言葉に、部屋に居る何人もが、ここ数日の間のことを思い出していた。
確かに、自分も会い、普通に会話をした、と。

キバはギュウッと手を握りしめて俯いた。


「じゃああの時から、名前はもう里を抜けるって、その暁だかっつうところに入ろうって、決めてたって言うのかよ…!」
「…おい、キバ…」
「シカマル!お前だって居たじゃねェか!ッ、一緒に居て、一緒に他愛ねェ話したじゃねェか!俺、俺…ッ、何も気づかなかった…!」
「………………」


赤丸の悲しそうな鳴き声が部屋の中に響く。


「――…だから、何だってばよ…」


部屋の中の面々がナルトを見る。


「…俺だって、ついこの前、名前と会った!話した!名前はいつもみてェに俺達のこと考えてて、優しかった…!」


ナルトが顔を上げる。


「あの時名前が里抜けするって、暁に入るって、考えてたとしても…!」



「ナルトが綱手様を連れてきてくれたおかげだね」
「今まで泣いて悲しんでいたサクラに、笑顔を取り戻させたのは、ナルトだよ」
「だって――人間だから」



「あの時の名前の言葉が、嘘だったとは思わねェ!!」


――ナルトの言葉に、部屋の中の面々は、目を見開いた。





110623.