舞台上の観客 | ナノ
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「よお、名前!」
「キバ、赤丸。久しぶり」
「キャン!」


慰霊碑がある演習場からの帰り道、少し寄り道して林の中を歩いていると、キバと赤丸に会った。

いつものようにキバの頭の上に乗っている赤丸。撫でようと手を伸ばして――、


「うわっ」「うおっ」


アカデミーの頃は届いていたのに――宙を切った手と同時に身体が傾いて、キバの方へよろめいた。


「ご、ごめんね」
「気にすんなって。それより今、届かなかったのか?」
「うん。キバ、背が伸びたんだね」
「ヒャッホー、やったぜ!なあ?赤丸!」
「キャン!」


嬉しそうに犬歯を見せて笑うキバと、応える赤丸。


「まあ名前もその内伸び…、ってお前、髪柔らけぇな」


すると私の頭に手をポン!と置いたキバが、驚いたように髪を触ってくるので、思わず笑った。


「うん、猫っ毛かなぁとは、自分でも思うよ」
「…なあ、名前は犬と猫、どっちが好きだ?」


…ええと、選択肢は犬と猫の二つだけなのかな。
私が無類のゾウ好きとかだったらどうするんだ。
いやまあそんなことは無いのだけれど。


「犬も猫もどちらも可愛いと思うけれど、選択肢を離れて良いのなら、私は、キバと赤丸は素敵だと思うな」


にこっ、笑うと、赤丸がモジモジしたかと思えばキバのフードの中へと入っていった。
ほら、キバとスキンシップしたいんだね、赤丸。


「…お前はそういう奴だったな…」
「え?」
「いや、――名前、この後暇かよ?暇なら一緒に散歩しようぜ」
「そうだね、じゃあ、お邪魔させてもらうよ」
「よし!いい散歩場所が最近出来てな!」










「――で、それが俺んちの庭かよ。めんどくせー」
「お前、何でもかんでもめんどくせーって言うなよな!」
「しょうがねえだろ。俺も一緒に居ねぇと、鹿達が何するか分かんねぇんだよ」
「でも鹿は頭が良い動物だと聞くよね。現に、みんなとても大人しいし」
「キャン〜…」
「あはは、さっきも言ったよね、赤丸。私は種別関係なく赤丸のことは素敵だと思ってるよ」
「キャン!」


良い散歩場所とは、奈良家の鹿が居る林だった。確かに草や木々が整えられている。

するとシカマルが私を見て


「よく分かんねぇけど、鹿達はお前が結構好きみてぇだぜ」
「え…?私が?」
「ああ、普段はもっと警戒してるぜ。――前にキバと赤丸だけで来た時は近寄ってこなかったからな」
「慣れたんじゃねえのか?なあ、赤丸」
「キャン!」


シカマルが呆れたようにため息をつく。


「ああ、そういえば視たよ、シカマル。本選はテマリさんが相手だったんだってね」
「ああ、あの女か…」
「すごい頭脳戦だったね」


にっこり、笑う。


「惚れちゃったよ」
「…はっ?!」
「はぁあ?!」
「キャン!」

「テマリさん!」
「……はぁ?」
「おい、マジかよ!シカマル!」
「キャン!」


キバがシカマルをどつく。シカマルは呆れたように眉をしかめながら、頭をかく。


――うん、もう、素晴らしい二人が出来上がったよね!
テマリさんとシカマル。
シカマルのご両親も確か、こう、お母さんがしっかりしている…じゃないけど、…ね。
テマリさんとシカマルも、そんな感じがするんだ。


するとキバが、あ、と声を上げたので、首を傾げる。


「そういえばよ、おれらの先生の好きな奴の話、前に名前が言ってただろ?」


私は笑顔になった。


「ああ、アスマ先生?」
「…そういやイノが、最近あの二人は怪しいっつってたけど…、アスマがねぇ…」
「俺もあの二人が一緒に居るところ見たぜ。イノのそういう勘は当たってそうだし、何より第一人者の名前が居るからな!なあ、イノの所行って話してみようぜ」
「あはは、第一人者って…。うん、行ってみようか。シカマルは?」
「めんどくせー」
「お前も行くんだよ!ほら、行くぞ!」








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