舞台上の観客 | ナノ
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「げほっ、ごほっ…!っ…げほごほ!」
「名前、だ、大丈夫?お茶飲みなさい」
「大丈夫かよ、ほら、お茶」


湯飲みに手を伸ばした二人の腕というか手というか、まあぶつかった。
紅先生が顔を赤くしてサッと手を引いたので、熱いお茶がテーブルの上に広がる。

そんな熱いお茶の上に、顔面からダイビング!


「熱っ!」
「ちょ、ちょっと名前!大丈夫?目眩が…!それより火傷…!」
「お、おいアンタ!氷持ってきてくれ!」


――そうして持ってきてもらった氷をおしぼりに包んでもらい、私はそれを鼻ら辺にあてる。
ひりひり、少し痛い。
けれど、我に返れた。


…ふう、危なかった。
いや、もう危なくなって被害は受けたんだけれど。


――ことの始まりはついさっき。
適当に街を歩いていたら、後ろからアスマ先生に呼ばれて、振り返ると何と隣には紅先生も居たのだ。

里の復興に力をかける今だけれど、だからこそ娯楽というか、息を抜ける場所は機能しているべきで。

何故だか一緒に居る二人を見て私が爆発、いや勿論本当に爆発する訳じゃあないけれど、まあ爆発しない訳もなく、近くの甘味処で休むことになった。


「…げほっ」


けれど今のはヤバかった…。
何て言うかこう、落とした消しゴム拾おうとしたら、手と手が触れ合っちゃいました、キャハッ☆
っていうシチュエーションじゃないか!
しかも紅先生の反応GJ。


「…アスマ先生、紅先生、その…休憩中…ですか?」


私としては、休憩中、けれど付き合ってるから一緒に居ますという回答を希望…!
ただの同僚じゃない回答を希望いたします!


「ああ。仕事が一段落した時間が、紅とかぶってな…」
「たまたまよ」
「……そうなんですか…」


――世界は、甘くなかった。


「お客様、申し訳ありません。当店は禁煙となっておりまして…」
「何だ、そうなのか。悪い、ちょっと外出てくるな」


煙草をくわえたまま、アスマ先生は外へと出ていく。
その背中を見送り、ちらりと紅先生を見ると、紅先生は頬を赤く染めた。


「ほ、本当に偶然会っただけよ」


まあけれど、世界の、ほんの一角くらい。
朝陽が世界を照らし始める、山から少し姿を現す。
それくらいは、世界は甘くなっているみたいだ。


にっこり、笑う。


「はい。でも紅先生、私、紅先生とアスマ先生は、お似合いだと思いますよ」
「…ほ、本当に?」
「はい、本当に、です」


――…私は、世界が淡い色で包まれるその時を、きっと、見れないだろうけれど。


「あら、紅じゃない」
「…アンコ」


すると外から声がかかって、紅先生は外へ歩いていく。
入れ替わるようにアスマ先生が戻ってきた。


「名前、団子食わねえのか?チョウジのようになれとは言わねえけど、お前はもう少し太っても良いな」


アスマ先生の言葉に笑って、三色団子をひとつ食べる。


そうだ、この後はチョウジやシカマル、いの達の第十班に会いに行こう。


「アスマ先生」
「ん、何だ?」
「こんなことを私が言うのは差し出がましいと、重々承知なのですが…」
「何だよ、気にするな」
「紅先生には、いつ気持ちを伝えるんですか?」
「ぶっ!げほっ!」
「だ、大丈夫ですか?」


吸いなれていても、煙草でむせることはあるらしい。
咳き込むアスマ先生にお茶を勧めると――、


「熱っ!」
「だ、大丈夫ですか?」


火傷してしまったみたいだ。
大丈夫だろうか。
私のせい?そんなまさか。


「名前、お前なぁ…もう少し前振りを……ああ、俺が良いっつったのか…」


アスマ先生はぐしゃぐしゃと頭を掻くと、少しきまり悪そうな、照れたような顔で目を泳がせた。

そんなアスマ先生を見て、私は薄く微笑む。
幸せな気分になったから。

するとアスマ先生が驚いた表情に変わっているのに気がついて、目を丸くした。


「ア、アスマ先生…?」
「…名前、お前…何かあったのか?」
「――…え…?」
「いや…なんつうか、…笑い方が変わったっつうか、よ…」
「…気のせいですよ」


にっこり、笑う。

アスマ先生はそんな私を見ると何故か安心したように息をついて、また煙草に口をつけた。


「アスマ先生」
「ん、何だ?」
「私はアスマ先生と紅先生のこと、応援してます!」
「げほっ…!名前、声が大きいぞ…!」








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