舞台上の観客 | ナノ
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「お前、我愛羅といるんだったらいっしょに遊んでやらねーからな!」


公園のベンチで名前とそのまま話していたら、同じ里の人たちが歩いて来て、そう言った。

フン!と四、五人で帰っていくせなかを見ながら、また心臓がドキドキしてきた。
ぜんぜんちがう、うるささ。
服をぎゅうっとにぎる。


「…我愛羅…」


となりにいる名前を見れなくて、ふるえたまま自分のひざだけを見る。


――…ぼく、が…。
ぼくのせいで、名前までみんなから、きらわれちゃう…。
…やっと、やっと見つけられたと思ったのに…!
やっと、一人じゃなくなったのに…!


「我愛羅」


少し強く名前をよばれて、おどろいて顔を上げる。

名前は少しだけまゆをよせて、ぼくを見ていた。


「わたしは、我愛羅がいいって言ってくれるなら、我愛羅のそばにいるよ」
「……え…」
「だって我愛羅、わたしのことを思って、やっぱりいっしょにいるの止めようって言いそうだから」
「だ、だって…!」
「わたしは!あの子たちに言われたことなんて、何ともないよ。だから我愛羅がいいなら、我愛羅といたい」


ツンデレにも、ききかんを与えないとね!焦ってデレればいいんだよ!

そう言ってうなずく名前は、多分また、かんちがいしてると思う…よく、分からないんだけど。


また心臓がドキドキしてる。
ぜんぜんちがう、うるささ。


「ぼ、ぼくも、名前といたい…!いっしょに…」


ちらっと名前を見ると、名前はにこっ、笑った。


「じゃあ、いっしょにいようよ、我愛羅」
「…!う、うん!」










「ね、ねえ、名前…。名前は何で、この里に来たの…?」


名前が砂がくれの里に来てくれて、本当によかった。
名前に会えて、本当によかった。

だから少し気になって、聞いてみた。


「さがしものを、さがしに来たんだ。色んな国を回ってるんだよ」
「…?さがしもの…?」


名前はにっこりと笑った。



「かぞく」



――びっくりして、目を丸くしたまま固まった。
名前の言った、たった三文字のことばが、頭の中をぐるぐる回ってる。


か、かぞ、く…?
かぞくって…あ、あれ?
かぞくって、さがすもの…だったっけ…。


ぜんぜん分からないけど、少し変わったことだっていうのは、何となく分かった。


「わたし、自分のかぞくを知らないんだ」
「え、だ、だれも…?」
「うん。何でかは分かんないんだけど、わたしって、さいしょから一人だったんだ」


――ひとり。
…ぼくと、同じ…?


「それが少しちがうことなんだなあって気づいて、さがしはじめたの。さいしょに居た国も、わたしのこきょうじゃなかったし」
「…、あ、あの…」


何か言ってあげたくて、でも何を言ったらいいかなんて分からなくて…。
こ、こんな、だれかのために何か出来るなんて、はじめてだから、分からないんだ…。


「っ、名前は、ひとりじゃないよ!ぼくが…!」


でもとっさにことばが出て…自分の言おうとしてることに気がついて、口をとじる。



「我愛羅がいいなら、我愛羅といたい」



――名前はきっと、すごくやさしいんだ…。
ぼくのことをちゃんと考えてくれて、そしてちゃんと、伝えてくれてる…。

っ、ぼくも、ちゃんと、伝えなきゃ…!
伝えなきゃ…!



「名前は、…ひ、ひとりじゃない、よ…?ぼ、…っ、ぼくでいいなら…!ぼくが、いっしょに、いるから」



ぎゅうっと、服をにぎって。
でも、名前から目をそらすことは、しない!

ドキドキしていたら、名前は目を丸くして、ぽつりって、つぶやいた。


「わたしには、我愛羅がいてくれるの…?」


――そう言った名前が、何だか悲しそうに見えて、あわてて首をたてにふる。


「うん!っ、うん!」
「――…ありがとう」


にこっ、と。
しずかに笑った名前に、ほっとして、ぼくも笑った。







110512.