舞台上の観客 | ナノ
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泣きじゃくるサクラの背中をぽんぽんとあやしながら、私はサスケの視線から必死に逃れていた。


いや本当、すいません。
このポジションは普通、サスケのものですよね。
あのでも、サクラ、がっちり抱き着いてきてますんで、少し大目に見てやって下さい。


穴が空きそうな程に見てくるサスケの視線に気づかないフリをしつつ、サクラの短くなった髪をふわふわと撫でる。

するとイノがサスケを怪我の手当ての為に呼んだ。


イノ、GJ!
サスケが私から視線を外してくれる、次いで嫉妬によりサクラがそっちへ行く、つまりイコールサスケの視線が私から外れる…!


「サクラ、短い髪も似合っているけれど、整えよう?イノが器用だからやってもらったらどうかな」
「…ん、そうね」


鼻をすすってニコリと笑い、サクラはイノの方へと歩いていく。

その背中を少し見送ってから、私はその場から離れて木々が繁る方へと歩いてきた。


「――っ…」


この場所に着いた時の光景を思い出して、思わず息をのんだ。

――ボロボロな三人。
ナルトは気絶していて、サクラの髪は短くなっていて。


「私が…っ、もっと早く、来ていたら…!」


三人はここまで傷付かなかったかもしれない。
いや、絶対に傷付けたりなんてさせなかった!
そして何より――!


「私のせいだ、っ…!」



サクラがサスケに抱き着くのを、ベストポジションで見られたかもしれないのに…!



木に背中を預けてズルズルとしゃがみこむ。
頭を抱え込んでぐしゃりと髪の毛を握り締めた。


うああ!見たかった!
すごく、見たかった!
せめて前に何も無い状態で見たかった!
前に数本木があったから、少しばかり隠れてしまっていたんだよ…!
私の馬鹿野郎!
いっぺん死んじまえ!
嘘だけど!



「――お前は忍には向いていない」



すると左上から、つい数時間前に聞いた声音が聞こえて私はゆっくりと顔を上げた。


「…ネジさん…」
「今更仲間を傷つけられたことを悔やんでどうする。運命は、変えることなど出来ない…!」


ギッ…!と目を鋭くしたネジさんの瞳を見つめる。


――白い、瞳…、白眼…。
そういえば白眼は数百メートル先を見渡せたり、物体を透視する能力もあったな…。
……はっ!
もしかしてネジさんなら、どんな場所もベストポジションになるのか…?!



「自分の身体を上手く管理出来ない奴が、上手く戦える筈はない。お前に名を聞くのは、もう少し考えられるようになってからだ」



白眼は血継限界な筈だけれど…自分の身体を上手に管理出来たら、白眼を開眼出来るんだろうか…!


私はバッ!と立ち上がりネジさんの両手を掴んだ。


「ネジさん、是非…!師匠と呼ばせてください…!」
「…?!な、何を言ってるんだ、お前は」
「先輩、いや…先生?むしろネジ仙人と…!」
「俺をおちょくっているのかお前は…!」






110505.