舞台上の観客 | ナノ
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「た、大変なんだってばよ!カカシ先生!」
「名前が!名前がね!激濃ゆい奴の、濃ゆい人達の…!」

「ちょっとお前ら、一体どーしたのさ。何が言いたいのか全然分かんないんだけど」

「お前ら、落ち着け…!俺が説明する」


――会場の部屋のドアの前には、何と何とカカシ先生が居た。
嬉しかったんだけれど、三人も凄く嬉しかったようでカカシ先生を取り囲んでいる。

それを邪魔する気は毛頭無いけれど暇だったので、ガイ先生がくれた、あの緑色の全身タイツを眺め始めた。


「ちょっ…!何で名前があのセンス悪すぎるものを持ってるわけ?!」
「だからそれを今から説明するんだ…!」


それにしてもこの全身タイツをくれるなんて…。
「着るだけでも青春が味わえるぞ!さあ一緒に青春フルパワーで以下略!」
なんて言っていたけれど、まあ視聴者プレゼントのようなものだろう。


「成る程ね…。でもまあちょっと面白いかも…、なーんちゃって」
「冗談言ってる場合じゃないわよ、先生!」
「そーだそーだ!さっき名前ハグされてたんだぞ!」
「青春を伝えるとか訳の分かんねえこと言ってな…!」

「…………は?ハグ?…へーえ、ガイがねえ…、そう…」


まあ嬉しい視聴者プレゼントだったけれど、着るつもりは全く無い。
当たり前、だよね。


「――名前、」
「はい」
「ちょっとごめんね」
「え…?あ、のっ…?!」


ゴン!と、額あてを直したカカシ先生のおでこと、私のおでこがぶつかった。
というか、頭突きされたと言った方が正しいのかもしれない。


「う、うっわー!ひでえってばよ!」
「星でも飛びそうな勢いだったわよ?!」
「しかもアイツは額あては腕にしてる…。大丈夫か…?」

「あのねえお前ら…、お前らが出来ないから俺が心を鬼にしてやったんでしょーが」


カカシ先生が肩を支えてくれていなければ、きっとくらくらっと倒れていただろう。

目眩が治ってきた私を、カカシ先生がもう一度呼んだ。


「名前、この全身タイツ、着るのか?」


ま、前振りの頭突きは必要だったのかな…。
何でいきなり頭突き…。
でも、ええと、タイツ…?
タイツは――、


「着ませんよ…?」


するとナルトとサクラは両手を上げて喜んで、サスケはほうっと息をつき、カカシ先生はにっこり笑って私を抱き締めた。


え…ええと…、わ、訳が分からないんだけれどな…。
…あ、もしかしてカカシ先生も本当は熱血派なのかな…。
さっきガイ先生、永遠のライバル、とか言っていたし…。


視界に映るカカシ先生の銀髪をぼうっと眺める。
まだ少し頭突きの後遺症が残っているようだ。


そうか…、ガイ先生の熱血な拳が、カカシ先生の場合は頭突きなのか…!
ううん、何だか意外だ。
カカシ先生は飄々としているけれど、熱血派だったんだ。


「――さ、じゃあそろそろ時間も危ないな」


まあ何にしても、私は青春は好きだからね、カカシ先生の意外なギャップも含めて全部受け入れるよ!


「さあ、行ってこい!」



いざ行かん、中忍試験!






110503.