舞台上の観客 | ナノ
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――次の日、つまり中忍試験にエントリーする日、会場にサクラは来た。
けれどやっぱり少し落ち込んでいるような雰囲気で。


まあしかし、うちはサスケという男はやる奴だ、本当に。


「サクラ、どうだ?お前なら気付いてる筈だ。お前の分析力と幻術のノウハウは、俺達の班でかなり伸びているからな」


――部屋を三階だと幻術で偽っているのを見破ったサスケはそうサクラに声をかけた。


「…俺には関係ねえ。アイツが自分で決めることだろ」


昨日はこう言っていたのに、今の言葉は確実に、サクラにとってプラスの言葉だ。
サスケに言われたからこそ。


「げほっ…!げほごほっ!げほごほげほっ!」


…サスケは私を殺す気か…!
もう、もう何だこの野郎!
ツンデレを極め過ぎている…これがツンデレのデレの恐ろしさか…!
一つ勉強になったよ…。



名前 の 経験値 が 1 上がった 。
心拍数 が 10 上がった 。
息切れ 動悸 を 獲得した 。



何かもう色々と無理で、辿々しく後ろに下がる。
口元を手で覆って下を向く。


ああ…私が口裂け女じゃなくて良かったよ…。
いや、そんなことはまず無いんだけれど、もし口裂け女ならばいくら手で覆っても隠しようがないからね…。


「名前!大丈夫か?!」
「…っ、ナ、ナル、ト…」
「大丈夫かよ、いつもよりもっと咳やばいってば!」
「〜っ、…だ、大丈夫…。治まってきた、よ…」


ありがとう、ナルト。
と言おうとして、私はサクラの前に、おかっぱの男性が居るのに気が付いて――、


「僕の名前はロック・リー。サクラさんと言うんですね…――ボクとお付き合いしましょう!死ぬまでアナタを守りますから!」


勢いよく、壁に激突した。
しかも頭から。
痛みと音がぶつけた場所から木霊して、そのまましゅるしゅるとしゃがみこむ。


「名前っ!やっぱり全然大丈夫じゃないってばよ!」
「名前っ。おい、大丈夫か?!しっかりしろ!」
「サスケ、サクラちゃん!名前ってばさっきから咳してて、今も目眩起こして…!」
「すごい音したわよ!大丈夫?腫れてない?――あ、あとアンタ、」


そしてサクラはロック・リーと名乗った彼を見る。
改めて見てみると、恰好も緑色の全身タイツで、何と言うか濃い人だ。


「絶対…イヤ…。アンタ濃ゆい…」


――私はくらくらとする頭の中、ナルト、サクラ、サスケ、そしてショックを受けている彼を見回していった。


な、何てことだ…。
ライバル出現……いや、サクラは思いっきり否定したけれど、実際ナルトだって今はばっさり切られているんだ。


窓に手をつき頭を下げて落ち込んでいる彼を見る。


まあ見た目がいくら濃いとしても、女は想うより想われる方が良いとも言うしな…。


「名前、大丈夫?」
「う、うん…。迷惑かけてしまって、ごめん」
「気にしないで。名前は大事な仲間だもん!」


サクラ、凄く良い笑顔。
可愛いな。
ロック・リーという彼が惚れるのもよく分かるよ。




――そんな一悶着を終えて、再び会場へと向かっていた私達の所に、再び現れたのだ。
ロック・リーが。






110502.