舞台上の観客 | ナノ
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次の日、任務は無かった。
けれど第七班はカカシ先生に呼ばれて集められていて、その内容は、私達を中忍試験に推薦したということ。

集合場所からの帰り道、いつものように後ろを歩いている私は、サクラを見た。


――…何だか、元気が無いというか、不安そうというか、沈んでいるというか…。
朝はまだ元気だった筈…中忍試験への推薦を聞いてから急に落ち込んでいる…。


私はこのポジションが普通なのだけれど、今はサクラまでもがナルトとサスケから離れた場所に居る。


「…ねえ、サクラ…」
「……えっ?あ、ああ名前?何?」
「いや、何だか元気が無いようだから…」


そう言うとサクラは少し息をのんで目を見開いた。
そして直ぐに眉を寄せ下げて、唇を噛んでうつ向いてしまう。


「……嫌、なの…」
「…嫌…?」
「…私、中忍試験なんて、嫌…。サスケ君にも名前にも…、ナルトにだって追い付けてないのに…」


――ああ、そうか…。
サクラはナルトとサスケと対等でありたいんだね…。
同じ目線で、同じラインに立っていたいんだね。にこっと笑った。


「だからサクラって素敵だ」
「……え…?」
「強い女の子は、素敵だよ」
「だっ、だからっ、私は強くないのよ名前!強くなくて、弱くて…、…」
「サクラは素敵だよ、とっても強い、女の子だ」


芯があって、真っ直ぐで。


「強さにも色々種類があるけれど、身体的な強さなんてサクラならいくらでも着いてくるよ。サクラは心が強い、女の子だから」


するとサクラは微かに目を見開いて、泣きそうに顔を歪めると「ありがとう…」と小さく、絞り出すような声で言った。










「サスケ、今のサクラにはサスケの励ましが必要なんだ」
「…………」
「昼間、聞いていたよね?」
「…俺には関係ねえ。アイツが自分で決めることだろ」
「そうだけど…その決断にはサスケの言葉が影響、」
「この話はやめだ」


このツンデレめが…!
ツンデレも度が過ぎると…、いや、それもありかな…。
…というか何だか最近思い始めたんだけれど、私って嫌なジャンルとかあるのか…?


「…おい、聞いてるのか?」
「え…?あ、ああ、ええと…納豆の話だったっけ?」
「違え!嫌がらせか!」
「え、あ?ご、ごめんね?」


自分でも今、何で納豆をチョイスしたのかが不思議だ…。
もっとこう、ケーキとか団子とか甘いものの方が良かった気がする。


「ったく、…お前は、出るんだろ?中忍試験」
「あ、ああ、試験か…。そうだね、そのつもりだよ。まあ出ない理由も特には無いし、もっと強くなりたいからね」


にこっと笑うと、サスケは私を真っ直ぐに見据えた。


「お前は、何の為に、強くなりたい」
「え…」
「――…俺は、強くなって、アイツを殺す為にだ。試験なんかはどうでもいい。ただ強い奴と戦って、俺にどのくらいの力があるのか、――復讐者としての力があるのか…。それを見極めたい…!」


――あ、危なかった…。
また復興の話をするのかと思って身構えてしまったよ…。
けれど、そう、そうか…何の為に強くなりたい…か…。


「強くなきゃ、何も出来ないって、そう思うんだ」
「…それは、分かる」
「例えば誰かが傷ついた時、動けなくなったら意味が無いから、庇うだけじゃなくて、…サスケ?」


サスケがくつくつと笑い始めたから思わず言葉を途切れさせて首を傾げると、サスケは軽く笑いながら私を見る。


「何かしたい対象は、やっぱりお前自身じゃなくて他の誰かなんだな」
「…?そうだよ、…?だから私、火影様には感謝しているんだよ、すごく」
「…?」
「火影様が私を木の葉の里に置いてくれたから、私はみんなに出逢えた。こうして誰かの為に何かしたいと思えるような人達に、出逢えたんだ」


まあ、そうじゃなくても火影様は大好きだけれどね。





110502.