舞台上の観客 | ナノ
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朝、教室のドアを開けると、ナルトとサスケがキスしていた。


「……?!」


パーン!とドアを閉める。
ふらふらっとよろめき反対側の窓へともたれかかった。


――……何だ……?
今私は何を見た…?
とうとう幻覚まで見るようになったのか……。
いや……違う……!
幻覚なんかじゃない!


「げほぉっ!」


じゃあ……じゃああの二人はこんな公の場で……?!
私は寛容な方だと自分でも自負しているけど流石に公の場でキス……!
しかも周りの相手はまだ子供だぞ……!
私も同じ歳だけど。


……それより、ナルトとサスケがまさかそんな関係だったなんて……。
これはとても意外な――


「……!名前ちゃん!大丈夫?!」
「……ヒナタ……、!」


そうだ……!
意外だ、なんて呑気に思ってる場合じゃあない!
ヒナタは、――ナルトのことを好きなヒナタは、どうなるんだ?!


壁に寄りかかり口元を手で覆う私の顔は今、きっと青ざめているだろう。


「名前ちゃん…すごく顔色が悪い……っ。保健室……!」



肩を支えてくるその白くて柔らかい手に、そっと、自分のを重ねる。
特徴的な瞳が心配そうに見上げてくる。


か、可愛い……!


「ぶふぉっ ……ヒナタ、私なら大丈夫だよ。ほら、教室に入ろう」
「でも……」
「大丈夫、――大丈夫だよ、ヒナタ」


こんなに可愛いヒナタの失恋は、まだ先でも良いじゃないか。
ナルトとサスケを応援しない訳じゃあないし、ナルトとヒナタを絶対くっつけたい訳でもない。

……けれどさ、まだ、まだ誰の悲しむ顔は見たくないよ。
みんな、まだ子供なんだ。
私も同じ歳だけど。


――教室に入る。
ざわざわと騒がしい。

近くの椅子にヒナタと隣になって座りながら、ちらりと場所を盗み見る。


「なっ……?!げほっ!」


あ、危ない……!
つい大声を……!


心配そうに背中を擦ってくるヒナタにお礼を言い、口元を覆いながら場所を見る。

――向かって窓側からサスケ、ナルト、サクラの並びで椅子に座っている三人。


な、なんて並び順……!
そしてなんてメンバー!
じょ、状況をまとめよう。


・ナルトはサクラが好きだ、可愛いと何時も言っている
・サクラはサスケが好き、もう大好き
・ナルトはサスケが気に食わない


……まあまだこれなら典型的な三角関係だと言える。
けどひとつ問題がある…――



・ナルトとサスケが、キスしてた



「っ……!」
「名前ちゃん、や、やっぱり保健室に……っ」
「いや、大丈夫……大丈夫だよ、ヒナタ」

「――おい、ホント大丈夫かよ。めんどくせーから無理すんな」
「……シカマル。いや、大丈夫だよ。ありがとう」
「…………」


渋い顔をするシカマルにひきつった笑みを返すと、シカマルはため息をつき私の頭をぐしゃりと撫でて、再び前を向いた。


……ああ、でもいっそ、シカマルの頭脳で今の状況を説明してくれないだろうか。
ホント暗号班の人達にも無理な状況だよ、これは。



がらっ
「おはよう、みんな」



するとドアが開いてイルカ先生の声がして、視線をやって思わず私は少し驚いた。
――イルカ先生の胴体には包帯が巻かれてあり、顔にもガーゼ、他にもちらほら絆創膏が張られている。

静かになった教室に、先生は少し苦笑いする。
けれど何時ものように教卓に立ち話をし始めた。


――話の内容は、私達から三人一組を作るというもの。
そして出来た三人一組に担当上忍が一人つき、アカデミーを卒業してからはその単位で任務をこなしていくらしい。


「ヒナタはキバとシノ、ね」
「う、うん……」
「まあ二人共何だかんだ言って優しいから、きっと大丈夫だよ」
「名前ちゃんがそう言うなら……う、うん、頑張るね」


はにかむヒナタの頭を優しく撫で、再び先生の話へと耳を傾ける。


「では――第七班!春野サクラ、うずまきナルト、うちはサスケ」

「っ……――?!」


ガン!倒れるように机に突っ伏す。


「それから名字名前、って……?!おい、名前!大丈夫か?!」
「だっ…だい、じょ……」
「せ、先生!名前ちゃん朝から具合悪そうで……!」
「そうか…。おいみんな!少し待っててくれ!」


――そうして先生に手を引かれて、私は教室を出た。
吐血するかと思った。







110323.