舞台上の観客 | ナノ
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「#寸止め」のBL小説を読む
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いやはやそれにしても…まさかもう一度、一族の、ふっ、復興という夢を聞くとは思ってもみなかったよ。
修行で体力が削れているところにあんな爆弾発言を投下されて、まあ堪えたけれど…堪えたけれどさ!
呼吸を抑えていたけれど息が苦しくて…涙が出たものな。


一日の任務が終わって街の中を歩きながら、私は顎に手をあててううん、と悩んだ。


修行をする時は声をかけろ、と言われたけれど…必然的に任務で会う時に言うことになる。
つまりナルトとサクラの前でサスケを誘え、と…?


「無理、無理だね、無理だ」


というか基本的に修行は毎日しているんだよね。
そうなるとつまり、毎日ナルトとサクラの前でサスケを誘え、と…?


「無理、無理だね、無理だ」


うんうん、と一人頷く。
そうして今日の任務、ついさっきのことを思い出して、自然と表情が曇った。

せっかく波の国の時には仲良くなってイナリ君に涙まで流させたのに、何だか最近仲が思わしくないようなんだ。


「…………はっ!」


も、もしかして、これはサスケの作戦なのか…?!
私に誘わせることで嫉妬を煽り、ツンツンしてしまっているナルトに危機感を与えてデレさせる、というか意地を張らなくさせる作戦か!


にやりと口角が上がるのを、手で口を押さえて隠す。


流石サスケ…策士でもある。
…そういえばサスケ、今日サクラに何か言っていたな。


「はっきり言ってお前…」


私はサスケを誘うという暴挙をする自信が無かったから、サスケがサクラと話している間にどろんと消えてしまったんだよね…。


少し苦い顔になる。


聞いておけば良かった…まさかサスケが全部仕組んでいるとは思わなかったから…。
分かっていたら話の内容を聞いて上手く立ち回っていたのに…惜しいことをした。


「…!」


角を曲がろうとした瞬間、その道の先の方に見慣れた後ろ姿が視界に入って、思わず一瞬で隠れた。

壁に背を預けながら、頭には今さっきの映像が焼き付いていて。
思わず口元を手で覆う。


ナルト、サクラ、サスケの三人が一緒に居た…!
何故か木ノ葉丸、モエギ、ウドンの三人も居たけれど。



――そうっ、向こうを見る。



やっぱり…やっぱり一緒に居るね、最近は任務中も顔を合わせたくない、なんて雰囲気が溢れていたけれど…。


顔を戻して、私は来た道を戻り始めた。


どうしようか迷ってうろうろしていたけれど、やっぱり一人で演習場に行こう!
何があったのかは分からないけれど、めでたしめでたしになったようで良かったよ。









「――い、いやでも、もう良いのかなって…」
「は?まだ一日もやってねえだろ、ウスラトンカチ」
「で、でも…」
「…声かけろって、言ったよな?」
「う、うん、そうだよね」


ごめん、何だかタイミングを逃してしまって…と言えば、サスケは腕を組んで呆れたようにため息をついた。


――な、何でだろう…。


晴れやかな気分で上々に修行をしていると、サスケが演習場にやって来て。

ああ、律義にこれからの修行の断りを入れに来てくれたのかな、なんて思っていたら怒られた。


どうやら、修行を一緒にするということは変わっていないみたいなんだ。
…何でだろう、もうこの作戦が無くても良くなったんじゃないのかな…。




――と、悩んだものの良く分からなくて、私とサスケは修行を始めることになった。

サスケが動き出す音が聞こえてその場から飛び退く。

宙に飛び上がる私へと、印を結んだサスケが火を吹くのが分かった。



「火遁 豪火球の術!!」
「響遁 重音の壁!!」



襲ってくる炎が私を包む。

けれどその火が消えた時、無傷の私が居てサスケが驚いているのが見えた。

地に下りた時に勢いよく蹴ってサスケの後ろへと回り込みクナイを振りかざす。

クナイがサスケに届く、その一瞬の間に、見開かれたサスケの目が、黒から赤へと変化した。


「――写輪眼…」


確か、そんな名前だった気がする。



「忍法 全音の拘繋」



一目見ただけで技をコピーされてしまうんなら…ここからは体術で応じるかな…。


印を結んだことによって、聴覚が研ぎ澄まされる。
私がサスケの攻撃を避けて、サスケが私の攻撃を避けて――そうしてその日の修行は終わった。






110501.