舞台上の観客 | ナノ
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ーー砂隠れの里の公園で、写真を眺めながら私は一人頬を緩める。


「名前さん!なあに?それ」


すると集まってきた子供達の一人にそう聞かれた。
私は答える。


「素敵な人達ーー私の、とても大切な人達と撮った写真なんだ」
「名前さんの?ねえ、見せて見せて!」
「ずるい!おれにも!」


元気な子供達に、そして写真から思い出す過去に、私は笑う。















ーー名前が木の葉病院で未だ目を覚ましていない時、医者からのカルテを受け取ったサクラは病室に戻るとギョッとした。


「え!?カ、カカシ先生、泣いてるんですか!?」


名前が眠るベッドの隣には椅子に座るカカシがいて、それだけなら何も可笑しくないのだが、片方の手で名前の頭を撫でながらもう片方の手は自身の目元を覆っていた。
その指の隙間から流れる涙に、サクラはギョッとしたのだ。


いったい何があったのかと周りを見回して更に瞠目する。


「サ、サスケ君まで……!」


言われてサスケは顔を逸らす。
けれどちらりと見える目の端と鼻が少し赤い。


「サクラちゃん、理由はこれなんだってばよ」


するとナルトが鼻をすすり、笑いながら見せてきたのはーー班結成の時に五人で写真だった。


「名前のポーチに入ってたんだってばよ」


名前のポーチに、とサクラは思い出す。
確か例の時空眼の巻物やら、汚れたクナイやらの武器が入っていたはずだ。


そしてそこまで考えたところでサクラの目から涙が溢れ出す。


「ハハッ、サクラちゃんもやっぱり嬉しいよな。名前ってば、ずっとこの写真、持っててくれたんだな」
「馬鹿ねナルト、それだけじゃないわよ」
「えっ?」


疑問符を浮かべるナルトにサクラは、こういうところは変わってないんだから、と言う。


「よく見なさいよ、その写真。クナイやら何やらは汚れていたのに、写真は綺麗なままよ」
「言われてみれば……」
「それは、あの巻物もそうだったでしょ。つまり名前はこの写真に、時空眼の停止の作用をかけたのよ」


サクラは続けようとするが、泣きそうになって上手く喋れない。


「作用をかけてたら、術が終わっても写真は消えない。そうまでして、名前は私達との思い出を、持っていようとしてくれてたってわけ」


やっとのことで言ったサクラの言葉に、ナルトの涙腺は崩壊した。















ーーあの後、焼き増しとか、新生カカシ班での写真撮影とか色々あったなあ。


思い出してまた笑う。
すると写真を返してくれた子達に手を引っ張られた。


「名前さん、今日はわたしの相談に乗ってね」
「おれの相談だぞ!」


ーー砂に来てから数ヶ月。
仲良くなった子供達から私は色々と相談を受けていた。
その主な内容が恋愛についてで、日々平和になった世界を実感している。


「お前らどけよ!おれは相談なんかじゃないんだからな!」


すると一人の男の子が現れた。
どちらかと言えばいつもツンツンしているその子が今日は珍しく自ら歩み寄って来てくれる。

嬉しくてにっこり笑えばその子は大声で私の名前を呼んだ。


「すきだ!!」


私はびっくりして目を丸くする。
だけどとても嬉しくて、直ぐに顔を輝かせた。


「嬉しい。私も好きだよ」
「ーー!」
「残念だけど、名前さんとお前の好きは、ちがう意味だよ」
「ーーは!?」
「それに名前さんはだめだよ。だって名前さんは、風影様のこんやく者なんだから」
「こんやく者って、こ、恋人いたのか!?お前!」


はにかみながら頷けば、男の子はガクガクと肩を震わせる。


「お前、最近引っ越してきたばかりだから知らなかったのか」
「でも好きって言ってもらえてとても嬉しい。嫌われてるのかと思ってたから、やっと友達になれたみたいで」
「名前さん、それついげきって言うんだよ」
「本当、自分のことにはにぶいよね。相談にはてきかくなアドバイスをくれるのに」


ーーすると砂の音がした。
私は顔を輝かせると振り返る。


「ーー我愛羅」


現れた我愛羅に、私は笑って歩み寄る。


「仕事が落ち着いたの?」
「ああ。一段落したから、名前を探してた」
「で、出たな風影!」


すると男の子が我愛羅を指差してそう言う。
けれど他の子に指を曲げられ、風影様でしょ、と注意を受けていた。


「お、お前、名前の恋人なんだってな!」
「ああ」
「風影が、子供を悲しませていいのかよ!」


数度瞬きをして疑問符を浮かべる我愛羅に、他の子達が何やら事情を説明する。
ーーなるほどな、と納得した我愛羅は男の子の頭に手を置いた。


「悲しませるつもりはない。が、名前のことは譲れない」
「な、なんだと!」
「名前を愛する気持ちは、誰にも負けるつもりがない」


そんな我愛羅の言葉にキャーッと黄色い声を上げる女の子達。
男の子達は、感心したように頷く子もいればポカンと口を開けた子もいて面白い。


私はといえば言われた本人であり、そして未だに慣れない。
頬の熱を感じつつ目を泳がせていたら我愛羅の視線を感じて、思わず後ずさった。


「が、我愛羅」
「名前」
「少し、ち、近いかな」
「……俺が近付くとお前が逃げるようになったのを、未だに喜べばいいのか悲しんでいいのか分からないな」


腰に手を回してきた我愛羅に内心で悲鳴を上げていると、近くにある待機所の二階からテマリさんの声が降ってきた。


「こら、我愛羅!何やってる」
「風影がこんな場所でいちゃついてちゃ駄目じゃん」


二人の名前を呼べば、笑って手を振ってくれる。
ーーするとうつむいて震えていた男の子が勢いよく顔を上げた。


「決めた!お前なんかを風影にはしとかねえ!」


そうして彼は宣言する。


「だから、おれが風影になってやる!!」


ーー我愛羅は嬉しそうに笑った。


「ああ……楽しみにしている」
「頑張ってね」


男の子は我愛羅のその反応が意外だったのか目を丸くする。
けれど直ぐに不満そうな顔をすると、駆けていってしまった。
他の子達がその後を追っていく。


ーー公園で駆け回る子供達と、それを見守る我愛羅達。


「我愛羅」


私は我愛羅に問う。


「今、幸せ?」


我愛羅は答える。


「世界が平和で、里の者が安全に暮らしていて、家族や名前がそばにいてーーああ、幸せだ」


すると我愛羅に同じことを聞かれた。
私はにっこり笑う。


「幸せだよ」



みんなの幸せが、私の幸せだから。





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