舞台上の観客 | ナノ
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しかしそれから少しの時が経って、三人は離れ離れになった。
マダラと柱間、お互いの一族がうちはと千手で、相容れない関係だということを親兄弟から言われ、憎しみ合う一族に引っ張られ、二人の間には大きな亀裂が走ったのだ。


その時少女は、幸か不幸かまだいつもの場に来ておらず、加えてマダラと柱間はそれからその場には行っていなかったので、少女とそれきり会うことはなかった。



マダラと柱間は何度か少女に会いに行こうかと考えた。
マダラはうちは一族で柱間は千手一族、けれど少女はこの憎しみ合う関係の中に入っていない、だから会える。
そうは思ったが戦は激しさを増し、同じ一族の者達が次々に消えていくなかそれは不可能だった。
それにだんだんと月日が流れるにつれ流石に少女ももう、いきなり現れなくなった自分達を待ってはいないだろうと、そう思っていた。

ただ、明るく笑う、戦とはまるで関わることがないようなあの少女が、巻き込まれることなく、そして首を突っ込むことなく平和に生きていてくれるならそれでいいと、頭の片隅で思っていた。




そんな三人が再会したのは、木の葉隠れの里が創られてから少し経った時だった。



「ーー!お前、その傷はどうした!?」


柱間の弟、扉間が里のとある通りで声を上げていた。
たまたまその近くを通りかかっていたマダラと柱間は、冷静沈着でーー戦や大事には別だがーー基本的に声を荒げることのない扉間のその声と、呼んだ名前に顔を見合わせるとその場へ急いだ。


そうして角を曲がるとそこにいたのは扉間と、そんな彼に肩を掴まれ詰め寄られてどこか困ったような、けれど変わらない笑顔の友がいた。




もう少女ではなく成長し、一人の女性となったかつての友との再会を、だけど手放しでは喜べない。
少し離れた場所からでも分かるほど彼女は傷を負い、泥と血に濡れていた。


「ーー!お前……!」
「あっ、マダラ!それに柱間も!二人とも、本当に久しぶりだね!」


拍子抜けするほどにっこり笑った彼女が扉間の背に隠れる。
まるでマダラに彼女を見せないかのような扉間のその行動に、マダラの眉に皺が寄った。


「邪魔だ、退け。扉間」
「というか扉間お前、ーーと顔見知りなのか?」
「ああ。兄者とマダラが例の河原に行かなくなってから少しして、不思議そうな顔で突っ立っているコイツがいたから、このままでは戦に巻き込まれると声をかけた。それからは場所を変えてたまに会っていたが、ここ数ヶ月は姿を見ていなかった」
「扉間、お前……!たまに姿を見かけないと思っていたがそういうことか!何故俺にも言わん!大体お前は昔から影でこっそりとだな……!」
「支障は出していない」
「そういう問題ではない!それに数ヶ月と言ったが、俺など数年は会っていなかったぞ!」
「というか俺の言葉は無視か、おい……!」


通りで声を上げ合う権力者達を、里の者達がどこか遠巻きにそれを眺める。
その迫力たるや凄まじいもので到底近づくことなど出来なかったが、渦中の彼女は楽しそうに笑う。


「みんな、変わったようで変わらないね。何にしても素敵だけれど」


すると女は思い出したように、あっ、と声を上げた。
そうして扉間の背から抜け、マダラと柱間を見るとにっこりと笑顔で祝福する。


「二人が言ってた里……これが現実になったなんて本当にすごいよ。おめでとう。……最初はどうなることかと心配していたけれど二人は成し遂げたね!これで、駆け落ちしたかいがあったね!」




女の言葉に場に可笑しな沈黙が落ちる。


それもまた昔と同じ、懐かしいことだった。


「お前も変わったようで本当に変わらねえな……!俺と柱間が駆け落ちなんて、何をどうしたらそんな発想に行き着くんだよ……!?」
「え?けれど二人が姿を消して、それで扉間に聞いたらそう言ってたから」


出てきた思わぬ名前に、マダラと柱間は扉間を勢いよく見やる。
けれど当の本人はいたって冷静に女を見た。


「その言い方では誤解が生まれる」
「あれ?違ったっけ?」
「お前が勝手に、そうかついに二人は駆け落ちしたんだね、などと自己完結しただけだ」
「いや、正せよ、間違いを……!」
「そうぞ扉間!何故本当のことを言わなかった!」
「お前の友は決して相容れぬようになった、戦が激しさを増す……だからもう二人はここへは来ない。そう言えと?」


マダラと柱間はハッとすると口をつぐむ。


「顔を輝かせるコイツの言葉を否定し、無情な現実を突きつける必要を俺は感じなかった」
「扉間……」
「それにこのふざけた勘違いをわざわざ正す義理もない」
「義理だと!扉間、お前は俺の弟だろう!」
「というか面倒臭い」
「それが本音だろうが!」


扉間は喚くマダラと柱間にうるさそうに一瞥をくれる。


「そんなことはどうでもいい。話がそれた」


扉間は女の名を呼ぶ。


「その怪我はいったいどうしたんだ」


その言葉にマダラと柱間がハッと女に向き直る。
けれど女は「まあ見てて」と得意気に笑うと目を閉じた。



(ーー時空眼!!)



そうして開かれたその眼の色が、違う。
それを確認した時には既に、三人の体はまったく動かなくなっていた。


息をのむ彼らに女はにっこりと笑う。


「ついに開眼したんだよ!時空眼、って言うんだ」


女の眼が琥珀色に戻る、と同時に体の自由を奪っていた何かがフッと解けた。


「時空眼……今俺達の動きを止めていたのはその瞳術か?」
「そうだよ柱間。どう?私もあれから強くなったでしょ」
「けどお前昔、開眼するには特定の誰かにしてもらうか危険な状態に陥るか、って……」
「うん。本当は、一族の人にしてもらおうと思ってたんだ。……東の国の方に時空眼を持つ忍がいるって話を聞いて行ってみたんだけど、着いた時にはもうその人は亡くなってて……だけどその時、近くにいた別の人たちに声をかけられたんだ」
「別の人達?」


扉間が訝しげに眉を寄せる。


「容姿が結構似ていたらしくて、その人達、私も時空眼を持つ一族だって気づいてね。でもビックリしたなあ。最初ね、お前を嫁に迎え入れる、って言われたんだよ」
「嫁だと!?」
「何をのほほんと話しておるのだ!危ないぞ!そんな連中がいたなんて!」
「うん、私も思ったよ。私を嫁にするだなんてこの人達、絶対危ない思考の持ち主だって。でもそれは、当たり前だけど冗談だったんだ」
「……初対面のお前に話す冗談にしては不躾だな」
「あはは、扉間は相変わらず厳しいなあ。……とにかく彼らは親切なことに、私の開眼の協力をしてくれたの」
「……それでそんな姿になったのか」


マダラが、ボロボロな恰好の女を見て低く呟く。


「拘束されて殴られたり蹴られたり、とにかく危険な状態にしようとしてくれたんだけど、いずれ嫁にするから手加減しておく、とか言われたら演技だってことを思い出しちゃって。……それで一ヶ月位経ったある日、お前みたいな出来損ないはいらないって言われたんだ」


黙る三人と、続ける女。


「そうして殺してこようとしたその演技がもう迫真で!殺気もまるで本物だったもん!」
「……それで、開眼したと」
「うん。彼らもすごく喜んでくれて、さっそく今から婚礼の儀を始めるとか、興奮してるのかまだ演技を続けてくれてさ。だけどどうしても開眼したいことを報告したい人達がいるからって一旦抜けてきたの」
「一旦?お前、戻るつもりか」
「うん、お礼をせずに木の葉へ来ちゃったから」
「その心配は無用だ、ーー」


首を傾げてマダラを見上げた女はパアッとその顔を輝かせる。


「マダラも開眼してたんだね!写輪眼!」
「ああ……そいつらの所へは俺が行く」
「マダラ、俺も付き合うぞ。友が世話になった……礼をせねばな」















「柱間の婚約相手、とても綺麗な人だったよ」
「そうか」


女が木の葉隠れの里に住むようになってから、いくらかの日が流れた。


里は日に日に変わっていた。
建物が整備され、人が増え、活気が溢れる。


けれどまた同時に変わっていくものが一つあった。
それはマダラと柱間の関係だった。

気がついている者は極わずか、だが確かに二人の間の溝は広がっていた。



木の葉隠れの里の崖の上、女が気遣うようにマダラを見る。


「マダラ、そんなに落ち込まないで。初恋は実らないものって言うし……」
「だからそれはお前の勘違いだ」


マダラは呆れたように女に言う。
女は逆にその反応が嬉しくて笑った。
まだいつものマダラだ、そう思えた。


「うん、もう流石に分かってるよ。ごめんね、マダラ」
「いや……分かればそれでいい」
「……ねえマダラ、それでも柱間は……友達だよね?」


女は隣に立つマダラに問いかける。
けれど長い髪がマダラの表情を隠し、黙られると、何を考えているのか分からない。


「友達もまた、大切な人……だよね……?」



少し強い風が吹いた。
木の葉が舞う。
その中の一つをマダラが手に取った。
木の葉には穴が空いていて、マダラはそこから眼下の里を覗き見る。


そうして女の名前を呼んだ。


「お前の時空眼を開眼させた奴ら……あいつらが知る時空眼の情報を俺は写輪眼を使い聞き出した」


突然の話に女は若干戸惑いながらも頷く。


「そうして知った……時空眼……本当なら名が知れていて当然のお前ら一族のことを、誰も知らないわけが」
「……そっか」
「知らないんじゃない……忘れていたんだな」


マダラの赤い瞳と女の白緑の瞳、視線が交わる。


「人々から、文献から、歴史から私達一族が消えるようになった根拠は私も知らない。忍は死んでもその体から何から情報を抜き取られる……それを防ぐためとも言われているし」
「己が犠牲になることで悲しむことになる周りの奴らを救うため……たとえお前らが術を使い、最悪死ぬことになったとしても、お前らのことを忘れたのなら周りの奴らに悲しみは起こらない」


女は何とも言えず視線を彷徨わせる。
そんな女の両頬をマダラがその手で包んだ。


「マダラ……?」
「写輪眼は時空眼に対して作用をかけることが出来る……これは知っているか」


目を丸くして首を少し横に振る女にマダラは少しだけ笑う。

そうして写輪眼を解くと、女を残して崖から飛び降りどこかへ行ってしまった。




眉を下げてその背を見送る女を、後ろから扉間が呼ぶ。


「こんなところにいたのか」
「扉間……うん、マダラと少し話をしていて」
「マダラと……?いったい、何の話だ」
「大したことじゃないよ。時空眼について」


扉間は腕を組む。


「それならば俺も聞いておきたいと思っていたところだ。時空を司る瞳を持つ者……だがお前達一族には謎が多すぎる」
「…………」
「別に情報を晒せと言ってるんじゃない。ただ可笑しすぎる。そのような瞳が無名の筈がないんだ、本来ならば」
「……木の葉に迷惑をかけるようなことは絶対にしないよ」
「いいや迷惑だ」


里を想う扉間の鋭い言葉に思わず女はうつむく。
木の葉隠れに置いてもらっている身ながら不明な点が多い忍だと、抱え込むことが不利な不安要素でしかならない。


「時空眼を持つ者達のことは誰も知らない。俺はお前もまたそうして、誰からも知らぬと言われるような存在になるんじゃないかと思っている」
「…………」
「最近、どうにもそんな予感がしてならない。……だがそれは迷惑だ」
「ーー!扉間……」
「勝手に俺の前から消えることは許さん」



扉間の言葉に、女は笑った、にっこりと。
だけどそれは泣いているような、笑顔だった。


「時空眼には、三つの最高瞳術があるの……」




















「三つの最高瞳術ってばいったい、なんなんだ……?」


ナルトがゴクリと唾を飲む。
その他の者も皆一様に扉間の話に聞き入っていた。


「駄目だ。そこを話そうとすると言葉が出なくなる」
「だあーっ!またかよ!」


けれど扉間の返答に、再びナルトは頭をかきむしった。



そうして現代にいる時空の者……名前は寄ってきたサスケと話していた。


「名前、お前はどう動くんだ。この戦場で」
「変わらないよ、サスケ。暁に入った私のやることは、決まってる」


名前は既に十尾に打ち勝ち、不完全だが人柱力となったオビトを見据えた。


「尾獣を抜く……!人柱力は、つくらせない!」





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