舞台上の観客 | ナノ
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第四次忍界大戦ーーとある戦場の空に、太陽の光を遮り地上を暗くするほどの大岩があった。
五代目風影・我愛羅の砂と、三代目土影・オオノキの手がそれを支えており、降ってきていた大岩は完全に停止した。


「両天秤の小僧め……少しはやるようになったな」


うちはマダラがその様子を見上げて言う。
我愛羅は息をついて手を下ろし、逃げていた連合軍の忍達は歓喜の声を上げ、オオノキがニッと笑ってそれに応える。


「さて……二個目はどうする、オオノキ」


しかしマダラのその言葉と共に、二つ目の大岩が雲を破り空から姿を現した。

異変に気づき再び空を見上げる忍達。
けれど二つの大岩がぶつかるその瞬間ーー大岩は宙で止まった。
砂も、手も無い。
しかし空中で完全に動きを止めている。


呆然と動揺が場に広がる中、マダラだけが何かに気づいたようにハッとした。


「まさか、この術……!」


大岩から誰かが降りてくる。
暁の衣、琥珀色の長い髪、そして白緑の瞳ーー時空眼を両目に宿した名前は空中に着地しマダラを見た。


「名前!!」
「待て、ナルト!」
「出てきたか……!」
「落ち着け、風影!」


ナルトをテマリが、我愛羅をオオノキが抑える。
名前は二人の声に一瞬そちらを向いたが、マダラが地を蹴り名前の前に現れたことで視線が戻る。

マダラは空中に立つ名前を横抱きにすると大岩を足場に、再び元の場所へ戻る。
隣に立つ二代目土影ーー精神は薬師カブトだがーーの興味深そうな視線や連合軍たちのそれも二人に集中するが、マダラはそれらを一切気にせず名前へと口を開いた。


「ーーか?いや、違うな……だが今までで一番似ている。お前、名字の者だな」
「はい。名字名前と申します。はじめまして、マダラさん」
「ああ。此度も協力感謝する。お前達一族は、俺が知る時で既に数が少なかった。だから今回はもういないのかとも考えていたが……またお前達時空の者に会えて良かった」


名前を下ろすと口元に笑みを浮かべてマダラは言う。


連合軍側では、大岩から避難していたナルトやテマリらが我愛羅とオオノキのところへ戻ってきていた。


「名前!!」
「落ち着けナルト!今突っ込んで行っても、マダラに返り討ちにされるだけだ!」


ナルトの肩をテマリが掴む。


「けど俺ってばさっき、穢土転生したイタチと会って、言われたんだ!名前を頼む、って」


「ーーもちろんだってばよ。サスケも名前も、絶対ェ木の葉へ連れ帰る!真っ直ぐ自分の言葉は曲げねえ……それが俺の、忍道だからな!」
「……サスケも名前も、お前のような友を持てて幸せ者だ。……本当は、名前のことはサスケに頼もうかとも思っていた。だが今のアイツには他に対する余裕が無いだろう。ーーいいかナルト、出来るだけ名前から目を離すな」
「分かってる。名前ってば、気がついた時には直ぐ誰かを庇って怪我してっからーー」
「いや、そうじゃない。名前に時空眼を使わせるな」
「時空眼を……使ったら、体に負担がかかるからか?」
「それもあるが、名前はきっと、ある術を使う。時空眼を持つ者達が皆使ってきた術だ」
「ある術……?」
「ああ。だが詳しいことは言えない」
「ハァ!?なんでそこだけ冷てーんだってばよ!?」
「言葉が出てこないんだ。時空眼で封印されているのか、確かなことは分からないが」
「な、なんだかよく分かんねえけど、とにかく名前に時空眼を使わせなけりゃいいんだな?」
「ああ。そして出来たら、名前をなるべく戦場から引き離せ。ーー二人のことを頼んだ、ナルト」
「オウ!ありがとな、イタチ!!」



「けど名前の奴ってばもう時空眼使ってるし……!ヤベェ!」






「二つ目の岩を止めたのはお前だな、名前」


ーーマダラさんに問われて、私はどこか緊張したまま頷く。


「お話したいことがあるんです、マダラさん」
「話をしたいのならまずは邪魔者を消すべきじゃなかったのかな」


すると薬師カブトが話に割り込んできた。
黒い瞳が細められ私を見定める。


「君が大岩を止めなかったら邪魔者達ーー連合軍の忍達はいなくなり、ゆっくり話をすることが出来た。だけど君は大岩を止めた。それは連合軍を助けることだ」
「…………」
「前から疑問には思ってた。君は本当に暁の人間なのかどうか。……ねえ、君の味方は誰なんだい?」


すると目にも止まらぬ速さでマダラさんの腕が薬師カブトの腹を貫いた。
穢土転生の体だからそれで死ぬことはないけれど、私は思わず息をのむ。


「カブト、とかいったなお前、口を慎め」
「へえ……どうやらうちは一族と彼女ら時空眼を持つ人達は仲が良いようですね」
「お前には関係のないことだ。だが次にこいつを疑い、侮辱してみろ。次は本当に殺す」
「フフ、そしたらあなたも死にますよ。あなたは僕によって生き返らされたんですから」


マダラさんはその言葉を鼻で笑うと、私を見る。


「あの術を使うのか」
「はい。無限月読の養分はなるべく多い方が良いと……トビさんともそういった話でまとまっています」


薬師カブトがオビトさんの正体に気づいているのかどうか分からないから、仮面の者の名前を使う。


「それで、術の対象の数が多ければ多いほど体に負担がかかるので、大岩を止めました」


この言葉は本当でもあり嘘でもあるから、嘘が下手だと散々言われてきた経験を考えれば見破られるかと不安で、冷や汗が流れる。


マダラさんは少しだけ笑った。


「成る程な……名前、時空眼を解け。それはお前に負担がかかる」


言うと印を結んだマダラさんに、私は空を見上げる。
すると大岩が二つとも消えたのを見て、お言葉に甘えて時空眼を解いた。


「それで。話とは何だ」
「はい。あの、トビさんのことで」
「アイツがどうかしたか?」
「……私、いくつかの未来を視ました。そしてその中の一つで、マダラさんがトビさんに輪廻眼を使わせ、最終的には眼を取っていて……」
「あれは元々俺のもので、それをアイツにやったんだ。返してもらうのは自然の道理。そこへ至る経緯はその左眼で視なかったのか」


私は首を横に振る。


「いいえ、視ました。トビさんに輪廻眼を使わせることも、返してもらうことも、それは昔、マダラさんとトビさんの間で交わされたことだから私に出来ることはありません。ただ、視た未来の中ではトビさんが死んでしまって……」
「…………」
「輪廻眼を使わせれば、死んでしまう確率が高い。だから、お願いします……!もしその時トビさんのチャクラが少なかったり、疲弊していて、死んでしまう可能性があるなら、私に術をさせてください!時空眼ならば代償は必ずしも死ではありません」
「……お前もやはり、時空眼を持つ者だな」


私はマダラさんを見上げる。


「分かった。いいだろう」


そして得られた了承に思わず顔を輝かせた。


「マダラさん……!ありがとうございます!」
「だがその前に名前、お前には未来を視てもらいたい。手間はなるべく少なくしたいからな」
「はい、分かりました。それはむしろ、ありがたいです。私もまた未来を視たくて……」


未来に起こりうる共通点は、今日になっても変わってなかったから。


「過去や未来を視ている時お前達は無防備になる。なるべく戦場から離れていろ」
「はい。大丈夫です、安全な場所が、少し遠くですがありますから」















再び結界に戻り未来を視ていた私が現実に戻ってきたのは、すっかり日が落ちた頃だった。

結界から出て戦場へと向かいながら眉を寄せる。



オビトさんと世界、両方が生きている未来が見つからない。


ため息をつきそうになったその時、地面から黒ゼツさんが現れた。
というか生えてきて、驚いた私は逆に息を吸い込んでしまってむせる。


「ゲホッゲホッ。ゼ、ゼツさん」
「時空眼ノ影響ガ体ニ来テルナ。マダラ様モ苦渋ノ決断ヲシタモノダ」
「え?」
「話ハ戦場ニ向カイナガラスル。トリアエズ自分ノ体ノ時間ヲ止メロ」
「ーー!何があったんですか?」


ゼツさんに問いかけながら、時空眼を開眼すると言われたとおりに自身の時間を止める。
雑に腕を取られて私はゼツさんの腕の中に飛び込み、そのまま一緒に土の中へともぐっていく。


「オ前ハ相変ワラズ自分ノコトニハ鈍イナ」
「えっ、あの、なんの話ですか?」
「マダラ様ガススンデオ前ニ時空眼ヲ使ワセルト思ウカ?使エバ体ニ負担ガカカルノニ」
「だ、だけどさっき、未来を視るよう頼まれて……」
「ソレハオ前ヲ戦場カラ離ス為ダ」


「過去や未来を視ている時お前達は無防備になる。なるべく戦場から離れていろ」


「マダラ様ハオビト二輪廻天生ヲサセ、ソシテ輪廻眼ヲ取リ戻ソウトシテイル。オ前ガソバニイレバ阻止スルダロウ」
「そ、その件に関してはマダラさんと話をして分かってもら……」
「名前、オ前ハ嘘ヲツクノガ下手ダガ同ジ位嘘ヲ見抜クノガ下手ダナ」


ゼツさんの言葉に、その腕の中でうなだれる。


さっきのマダラさんの言葉が嘘……ならオビトさんは死んでしまう。


「……ゼツさんは……」
「俺ハオビトニハツカナイ。オ前ニハ悪イガナ」
「…………」
「オ前ヲ戦場ヘ連レテ行クノハ、オビトノ人柱力化ヲ止メテモライタイカラダ」
「ーー!人柱力化って、まさか十尾のですか……!?」
「アア」
「そんな、はやすぎる……!八尾と九尾の捕獲はまだのはずじゃ……!」
「色々ト事情ガアッテナ。不完全ダガ、確カニオビトハ十尾ノ人柱力ニナロウトシテイル」


不完全な、十尾の人柱力……一度視たあの姿か。


「俺達ハ、オビトガ人柱力ニナルコトハ望ンデイナイ。ソシテソレハオ前モ同ジダロウ。利害ノ一致ダ。オビトノ人柱力化ヲ止メテクレ」


土の中を移動して、戦場へと向かう。
私はゼツさんの言葉に頷いた。




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