舞台上の観客 | ナノ
×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
時空眼の作用によって動けない雷影に向かい走り出した私は、少し近づいた辺りで地面を蹴り、素早く印を結ぶ。
そうして雷影の前の空間に出来た、音で振動している透明の膜の上に、着地した。

宙で膝を折って目線を合わせる私に、雷影はまったく臆することはしない。
それどころか未だに、力で時空眼の作用を解こうとしている。

私はそんな雷影の目を真っ直ぐに見て――右の瞼を、下ろした。


(――時空眼!)


息をのみ、まるで衝撃を受けたかのように頭を一度後ろに揺らした雷影を、雲隠れの護衛役二人が呼ぶ。
そして我愛羅やテマリさん、カンクロウさんは、私の名前を呼んだ。


「グ、ウ…おい、シー!」


するといくらか苦しそうな声で雷影に呼ばれて、彼は驚いた様子ながらも応える。


「ビーを…ビーを連れ去った奴らは、誰だ!」


そして今の雷影の言葉には、彼だけでなく、部屋の者全員が驚くのが、分かった。


「早く答えろ、シー!」
「つ、連れ去ったのは、暁です」
「グ、ウ…白緑色の瞳をした、女か!」
「ち、違います。直接的に連れ去ったのは、うちは…!」


言葉を続けようとした護衛役に対して術をかけようと、印を結んだ瞬間「ゲホッ…!」と咳が出た。

するとそれによって、時空眼の作用の力が弱まったのか、雷影が苦しそうに声を上げながら、右手を振るう。

私は宙を蹴り、寸でのところでそれを飛んで避けた。
そして少し距離を取った場所に着地する。


時空眼でいる状態が長いにも関わらず、術を少し、使い過ぎたかもしれない…久しぶりに凄く、苦しい。
けれど、どうだろう、作用はちゃんと、出来たのかな。


胸辺りの服を握り、荒く息をしながら、同じく荒く呼吸している雷影を見る。


「うう、クソ、そうだ、うちはの家紋…!」


そして、自分に言い聞かせるようにして言った雷影の言葉に、思わず、滅多にしない舌打ちをした。


作用、失敗。
…違う、それならもう一度、やるだけだ!


「ッ、ゲホッ…!」


けれど、雷影に向かい再び走り出そうと手を握りしめた瞬間…心臓が大きく動いたかと思えばまた、咳が出て。
思わず口元にやった手に血がかかり、そうして落ちた。


「ゲホッ、ゲホッ…!」


抗うことは出来なくて、地面に膝をつくと、そのまま崩れるように倒れる。


「名前…!!」


時空眼、そして響遁の術、どちらの作用も消えたのか、我愛羅、テマリさん、カンクロウさんが、私の名前を呼ぶと走ってきて、膝を折る。


「時空眼は、使うだけで身体に負担がかかるって書いてあったけど、これはさすがにヤバいじゃん!」
「今はとりあえず私が治療する!医療忍者じゃないから大したことは出来ないが、何もしないよりマシだろう」


荒く息をする私にテマリさんが手を翳して、薄緑色の、優しいチャクラが現れた。


「――ボス、平気ッスか」
「雷影様、あの女の瞳術は、いったい…」


すると雲隠れの会話が耳に届いたので、私は震えながら、顔を少し上げた。

離れた所に立つ雷影は、私を真っ直ぐに見ている。
けれど「馬鹿な忍だ」と呟いたかと思えば、さっきサスケが向かった方に走り出した。


「シー、ダルイ!行くぞ!」
「待っ、行かせな…!」


私はそんな雷影を追おうと、震える腕で身体を起こそうとした。
けれど力が入らなくて、また崩れる。


「名前、無理はするな…!」


そんな私の身体を、我愛羅が優しく受けとめてくれた。
我愛羅は私を仰向けにして、支える。


「それにさっきの瞳術…あれはいったいどういうことだ」


我愛羅の問いに、私は荒く息をしたまま沈黙する。


「見ている限りじゃ、名前、お前がその左眼で、雷影の記憶に作用してたじゃん」
「そして、八尾の人柱力、キラービーを連れ去ったのを、うちはサスケじゃあなく、自分にしようとしていた」


三人の言葉に、私はまた一つ咳をして「憎しみは、終わらないんです」と言った。


「誰かを誰かが傷つければ、その憎しみの連鎖で、傷も、続いていってしまう…!どこかでこの連鎖を断ち切らなきゃ、いつまで経っても、何も、好転しない。だから早く、終わらせなきゃ…!」
















「――ここに来た時、うちはイタチという男の真実を話したが…そうだな、イタチと名前はよく似ていた」


――鉄の国周辺、民宿にて。


「げんに、似たものを感じているからか二人は仲が良かった。イタチは名前を可愛がり、名前はイタチを慕ってた…二人の共通点は、何だか分かるか」
「自己犠牲の気にあるところかな。お前が言ったイタチの話が真実ならば、二人はそこが、よく似ている」


カカシの言葉に、マダラは頷く。


「だが、いくら似ているといってもそれは所詮、同じという言葉にはたどり着かない。二人の間には決定的な違いも、確かにあった」





120508