舞台上の観客 | ナノ
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「――長門さんが、輪廻転生の術を…」
「コンナ未来ハ、視ナカッタノカ」


一度は確かに死んでしまった人達も含め、木の葉の人々が集まっている。
その輪の中心では、黄色い髪の毛にオレンジと黒の忍服を着た人物…ナルトが、胴上げをされている。

そんな光景を、遠くの木の上に立ち眺めながら、私はゼツさんの問いに、はい、とだけ答えた。


「ペインがやられるなんてこと、考えもしなかったぜ。――それに、九尾の人柱力にペインがやられたとして、だけどなんで、自分で殺した木の葉の人間を、わざわざ生き返らせたんだろう」


「けれど、ナルトを、…信じて下さい」


ここまで響いてくる歓声を聞き流しながら、私は目を細めた。


「コレヲ、トビ二伝エル。行クゾ」
「分かった。名前はどうする?また僕達と一緒に移動させてあげようか」


私は首を横に振る。


「いいえ、私はそう急いでもいないですし…なにより、マダラさんに、九尾捕獲失敗を怒られやしないかと、ちょっとヒヤヒヤしているんです」


ごめんなさい、マダラさん。
マダラさんは優しいから、私を怒らないでいてくれるとは分かっているんですが…私はまだここに残りたいから、その為の嘘に参加していただきました。


「アハハ、アジトに帰るのをなるべく先延ばしにしたいってわけか」
「無駄ナ心配ダナ。ペインガヤラレルナンテ事ハ、トビモ考エテイナカッタ」
「それにトビは名前に甘いからね、とっても。まさか怒られることなんてないよ。――まあ、名前が自分の体調やら何やらを、蔑ろにしない限りね」


罪悪感 が 1 アップ した。
今すぐに口を開いてゼツさんに嘘だと告げて、マダラさんのもとまで急いで駆けつけ、謝りたくなった。

――けれどそれも無事我慢して、ゼツさんは土の中にもぐりこの場から去った。

変わらずに歓声を上げ、喜びと興奮に溢れている木の葉の人達を眺めていると、自然と頬が緩んでくる。
けれど、その背景の、巨大なクレーターが出来て面影を無くした木の葉の里を見ると心臓の辺りが重くなって、眉が寄る。


私が今回木の葉に来た目的は二つ。
一つ目はさっき、達成した。
時空眼について記された巻物を、手に入れること。
そしてもう一つはあの術の、リハーサル。


「わざわざ死んでまで、木の葉を元通りにする必要なんてないよ。名前は暁だ。今さらもう、里へのあったかい想いなんて無いよね?」


私は静かに、右目を閉じた。


「やめなさい、名前」


けれど、すると下から声がかかって、私は振り返った。


「小南さん」
「あなたが今から使おうとしている術、詳しいことは知らないわ。けれどあなたの身体に、大きな負担をかけてしまうことは分かる」
「……」
「大丈夫、うずまきナルト…彼がいる木の葉なら、きっとこれから、一歩一歩でも、古きを受け継いだ新しい木の葉を、つくっていくだろう」


小南さんの言葉に数秒黙ると、そうして私は木の上から小南さんの前に下り立った。


「小南さんの言う通りですね…木の葉には、ナルトを含め素敵な人がたくさんいる…今ここで私が里を巻き戻すよりもきっと、今回の襲撃のことを含めて、また里をつくっていく方が、ずっと良い」


すると小南さんが真っ直ぐに私を見てきたから、私は静かに疑問符を飛ばす。


「やっと、言ったな」
「何が、ですか…?」
「――私は、お前が暁にいる理由がよく分からなかった。もちろん、他のメンバーのことを分かっているわけじゃあない。けれど、お前には特に違和感を感じていた」


違和感、と呟くと、小南さんは頷く。


「それはきっと、お前が、本当は木の葉やらのことを大切に思っているからだ」
「……」
「今しがたお前が言った言葉に、違和感は無かった」
「……」
「…暁を抜けるつもりは、無いのか」
「…はい、私は尾獣を…集めたいんです」


小南さんが、小さな疑問符を浮かべながら眉を寄せる。

そして私は、眉を下げた。


「小南さんは、もう…暁を抜けるんですね」
「ああ。私にとっては弥彦と長門がすべてで、そして…二人の夢はもう、うずまきナルト…彼に託されたからな」
「小南さん…」
「名前、私はお前が、これからも暁としていくことを止めはしない。きっと、止めることは出来ない」


真っ直ぐに見てくる小南さんの目を、見つめ返す。


「けれど、心のどこかに置いていて欲しい。――あまり、自分を蔑ろにしてはいけない。長門と、そして私からの願いだ」
「――!どう、して…」
「――九尾を一時捕獲した時に、長門が言った」


「なにもここまで大きなものを…」


小南は、上空に浮かぶ巨大な岩の塊を見上げながらそう言った。
巨大な岩の塊の中には、九尾が閉じ込められている。


「相手は九尾だ、手は抜けない」
「今回の襲撃には、名前も来てくれている。他のメンバーの尾獣捕獲の時のように、名前に頼るとか…」


小南の提案に、けれど長門は首を横に振った。


「アイツの眼は、技だけじゃなく、使うだけで体に負担がかかる…寿命がもう限られている俺と違って、アイツにはまだ、その眼の使いようによっていくらでも、その先が変わるんだ」


――もう一度、自分を蔑ろにするな、と言ってから、小南さんは紙になって空に舞い、消えていった。


「分から、ない」


私は一人、呟いた。





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