舞台上の観客 | ナノ
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名前が言った言葉、呼んだ名前に、思考が停止する。

名前は顔を歪めると、目の縁に涙を溜めて。
強く目を瞑ると同時に、涙が頬を流れた。


「ごめ、なさい、…イタチ、さん…!」
「…名前、」
「イタチさんの幸せは、サスケに何も知られず、そうして殺されること」


名前を抱き起こし、肩を支えた手に力が入る。


「イタチさんが死ぬことで、サスケが幸せに生きていくことを、イタチさんは望んでいた。私もそれを、願っていました、けれど」


そこで名前は咳き込む。


「おい、とりあえず水を、」
「けれど私、何度も、視ていたんです…!」


名前が俺を見上げる。
けれどきっと今、涙に濡れたこいつの瞳に映っているのは、イタチなんだろう。


「前に、私はいくつもの未来の選択肢が視えるからこそ、運命なんてものは信じていないと、言いました」
「……」
「けれど、何度も視る未来が、あるんです」


「螺旋丸!!」「千鳥!!」


増えた涙が、頬を流れる。


「きっとそれは、運命。変えられない未来」
「……」
「そしてそこから察するにきっと、サスケが木の葉の里に帰らないのは、分かって、ました」


名前はうつむいて、目を瞑った。


「ごめんなさい、イタチ、さん」


少し小さな咳をして、名前は気絶するように眠った。
落ちた首を、そして身体を、自分に預けさせる。


どうしてコイツが暁に入ったのかは、分からない。
が、昔とまったく変わっていない。
周りの奴のことばかり気にしてる。


俺は名前を抱きしめると立ち上がり、水が溜まっている部屋の隅へと向かった。


誰かの幸せを考えるコイツは同じように、イタチの幸せも願っていたんだろう。
けれどイタチが望んだことは、俺に殺されることだった。
名前がそのことを聞いた時、そして今、コイツがどんな想いなのか、分かる気がする。
…けれど、俺の目的は変わらない。


「鷹の目的はただ一つ…木の葉を潰すことだ」


池のようなところに手を入れて、水を掬う。
そうしてそれを自分の口に含むと俺は、名前の唇に自分のそれを合わせた。

ゆっくりと離れて、名前の喉を軽く押す。
上下した喉。

名前を抱き直して、その変わらない柔らかい髪に顔をうずめる。
お互いに傷ついているような感触は、けれど他の誰よりもずっと、心が落ち着いた。





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