舞台上の観客 | ナノ
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「#幼馴染」のBL小説を読む
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名前と、そしてうちはマダラだと言う男の気配を確かに感じ取って、俺は名前の部屋の扉を開ける。

するとマダラが俺を向いてため息をつき、…名前は地面に座り、こちら側に背を向けたままそうして、振り返りはしなかった。
扉を閉め、名前を見るとマダラが歩いてくる。


「おいサスケ、前にも言ったがせめてノックくらいしてやれ。いくらお前のその容姿でも、デリカシーの無い男は嫌われるぞ?」
「別に、名前もアンタも気配で分かるだろ。止めたきゃ部屋に入る前に止めればいい」


言うとマダラはまた、ため息をついた。

俺はマダラから名前に視線を移して、


「アイツは、何をしている」
「…そうだな、ま、これくらいなら言っても良いか」


偉そうな物言いに、俺は眉を寄せて横目でマダラを見る。

するとマダラはアイツを見て


「名前の身体はここに在るが、思考は無い。あいつは今、未来を視ている」
「…未来、だと?」
「時空眼、と言ってな。左眼で過去、右眼で未来を視、両眼で現在の時空を支配する」
「そして名前が、その時空眼とやらの使い手なのか?」
「ああ、時空眼を持つ一族の唯一の、生き残りだ」


その言葉に俺は少しハッとして、名前を見た。


アイツの一族、家族。
昔、アイツは家族を探して色々な国を回っていたと言っていたが…その頃からもう、アイツの家族は、死んでいたんだろうか。


「過去や未来を視ているときに話しかけても、反応はないぞ。聞こえてないからな」


するとその時、名前の上体が、上から吊られていた糸が切れたかのように傾いた。
俺が動くよりも先に、マダラが床を蹴るとアイツの隣に移動して、優しく抱きとめた。


「――――、――」
「―――、――」


名前がマダラを見上げ何かを言う。
マダラはそれに二、三受け答えてから名前の頭を優しく撫で、そうしてアイツを床に寝させた。

俺は、床に寝るとぴくりとも動かない名前から、こっちに歩いてくるマダラに視線を移す。


「名前が視てくれた起こりうるいくつかの未来を元に、情報収集に行ってくる。…時空眼は、使うだけで身体に負担がかかる…何もするなよ」
「アンタもくどいな。それに、アイツは昔から身体が弱かった。それに対する対応が初めてなわけじゃない」


マダラは少しの沈黙を空気に与えてから、扉を開けた。


「アジトに戻ってきたらお前ら鷹に、何らかの仕事を与える。準備しておけ」


















「――水…」


――マダラが部屋を出ていってから十分程して、名前が何かを呟いたかと思えば、弱々しい腕で上体を起こした。

壁に寄りかかり座っていた俺は、背中を起こす。

名前は立ち上がることは出来ないのか、そのまま水が流れている方へ這っていくようにして、けれど咳き込み、床に伏せた。


「ゲホッ、ゲホッ…!」
「おい、…名前、」


俺は立ち上がり歩いていくと、名前の背中に手をあてる。


「大丈夫か、…名前、」


名前は、うつぶせの状態から、咳き込んだまま横向きになった。
そして苦しさから濡れた瞳で、俺を見上げた。



「イタチ、さん…?」





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