舞台上の観客 | ナノ
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「どうして、ここに、…暁に。利害が、一致って」


マダラさんを振り返る。

仮面の奥の赤い瞳は変わらず静かなまま、私を真っ直ぐに見据えている。


「暁のメンバーは減った。これから鷹は、暁の戦力となり動いてくれる…それが俺たち暁にとっての利益」
「それじゃあサスケに、…鷹にとっての、利益は、」
「尾獣をやる」


マダラさんの言葉を、口の中で小さく繰り返した。
そして疑問符を飛ばす。


「鷹の目的はただ一つ…木の葉を潰すことだ」
「――!」
「だがそれには、コイツら四人だけじゃ力が足りないからな。そこで、俺たち暁が狩った尾獣だ。それがコイツら、鷹にとっての利益」


私は眉を寄せ、下げて、マダラさんを見上げる。

赤い瞳が少し、細められる。


「木の葉を、潰すって、…マダラさん、」


けれど言葉を続けようとした時、隣に気配を感じて咄嗟に飛び退いた。

地面に着地してから今居た場所を見るとそこにはサスケが居て、少し目を見開き動揺した様子で私を見ている。

私は鷹に背を向けると、うつむいた。


「すいません、具合が悪いのでまた、後で…」


そうしてマダラさんにも、目を合わそうとしないまま軽く頭を下げると、自室に向かって歩き出した。










――アジトの中の、私に割り当てられた部屋がある。
広く解放感のあるその部屋には家具は特になくて、端には静かに流れる滝と、その水が溜まる池がある。
けれど滝とは言ってもその幅は小さくて、池の水も、どこかから少しずつ抜けていっているのか量は変わらなく、そしていつも綺麗で透き通っている。

私は扉を後ろ手に閉めると数歩歩き、そうして力なく床に座った。


「鷹の目的はただ一つ…木の葉を潰すことだ」


どうして、そう掠れた声で呟くと、前方の空間が歪み始めた。

そのことから、マダラさんの時空間忍術だと分かる。

歪む空間を見ているとやっぱり現れたマダラさんは、座る私の前に膝を折った。

私はゆっくりと瞬きをして、そうしてマダラさんの赤い瞳を見上げる。


「サスケに、イタチさんの真実を、…話したんですね」


復讐を終えたサスケが、どうして木の葉を潰すことを次の目的にしたのか。
それは、イタチさんの真実を…うちは一族を皆殺しにしなければならなかった過去を、知ったから。
そしてそのことを教えたのはきっと、いや、絶対に、マダラさん。


「螺旋丸!!」「千鳥!!」


未来を視る必要は、少なくとも今は無くなった。
変わらない未来は相も変わらず、同じだろうから。


「お前は俺が、憎いか」


マダラさんの言葉に、目を見張り驚いて息をのむ。
そして慌てて首を横に振る。


「そんなこと、絶対にありません!それに、真実を知らないということは、…どんなに辛い真実を知るよりも、辛い、ことですから…」


私はうつむき、眉を下げる。


「けれど、イタチさんは、サスケに真実を知られず、憎まれて、そうして殺されることを、望んでいました、それがイタチさんの、幸せだった」


目の縁を涙が伝って、床を映す視界をボヤけさせる。
瞬きをすれば灰色の石で出来た床に、色を濃くした丸が生まれた。


「サスケはきっと、真実を知れて、良かったんです。けれどイタチさんが望んだ幸せは、実現されなかった」


目を閉じればまた、涙が頬を伝った。


「…名前、顔を上げろ」


するとマダラさんに言われて、私は少し疑問符を浮かべながら顔を上げる。
そうしてマダラさんが顔を寄せていて、思わず目を丸くした。

仮面を少しズラしたマダラさんは、優しく私の頬に口付けると、涙の跡を舐める。

――そうして離れるとまた仮面を戻したマダラさんを、私はポカンとして見上げて。
涙は驚きからとまっていた。


「お前ら一族の涙のとめ方は、知っている」


私は、思わず笑った。

マダラさんも笑うと、そのしっかりとした手を私の頭に置いて、ぐしゃぐしゃと撫でてくる。


「ありがとな」


私は首を傾げようとして、けれど後ろで聞こえた、扉が開かれる音に振り向く。

そこには、サスケが居た。

サスケは目が合うと少し眉を寄せる。


「話がある、二人だけで」
「おいサスケ、女の部屋にノックも無しに入ってやるな」
「アンタじゃない、俺が話があるのは名前だ」
「…名前、部屋には誰も入れさせない。その間は時空眼を解いてろ」


すると小さな声で言ったマダラさんの言葉に、私は慌ててお礼を言った。

足を踏み出そうとしたサスケの前にマダラさんは移動すると、立ち塞がる。


「さっき名前が言っていただろう、今は具合が悪いんだ。また今度出直せ」


サスケがマダラさんから私に視線を移す。


「いいかサスケ、確かにお前は必要だ」


マダラさんはそんな視線を戻させるように口を開く。


「だがもし名前に無理をさせるようなことがあれば、俺は容赦なくお前を殺す…それを覚えておけ」





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