舞台上の観客 | ナノ
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「マ、マダラ、さん」
「名前、デイダラのあの爆発は、お前の時空眼ですら間に合ったかは分からない。それなら俺は、お前を護る」


マダラさんの時空間忍術でどこかに飛んだらしい、いたって穏やかな森の中で、私は右目をおさえ、息を荒くしながらマダラさんを見ていた。


「デイダラ、さんは…」


そうして首を横に振ったマダラさんに、私は唇を噛みしめてうつむく。


「お前が今どういう気持ちなのかは分かってる…悪いな」
「マ、マダラさん」
「だが、俺はお前を死なせるわけにはいかない、絶対に、死なせたくない」


そ、そう、だ、私はここで、死ぬわけにはいかない。
――デイダラさんは、暁。
暁の誰かが死ぬとして…けれど私は、それをとめない。


「マダラさん、ありが…」
「無理に礼を言わなくていい…お前が悲しんでいるのは、他の誰よりも分かっている」


――私は眉を下げながら、にっこりと笑った。


「――それより名前」
「はい、マダラさん」
「お前の右目…いったいそれはどうしたんだ」


マダラさんの言葉に、痛痒いような疼きがおさまってきている右目に意識をやる。
そして私は一度両目を閉じると、時空眼にして開いた。
――マダラさんの目を見ても、もう疼きは起こらない。


「実は数日前から、誰かの目を見ると勝手に右目が時空眼になって、未来を視てしまうんです」
「未来を、視る?」
「はい、あらかじめ時空眼にしておけば、このように、何も起こらないんですが…」
「その未来というのは、対象者…つまりお前が目が合った者の未来を視るのか」
「多分、ですけれど…」


頷くと、マダラさんは考えるように声を漏らす。


「時空眼は、時空眼の状態にしているだけでお前の身体に疲労やら何やらをもたらす。だが、未来を視ることに比べればその度合いはまだ軽い、か…どちらをとるか」


するとマダラさんに何か、連絡が入ったらしい。
耳元に手をやったかと思えば私を見て、


「俺はこれから雨隠れの里に行く。お前の今の状態が気になるから連れていきたいが…イタチがお前を探して、そして会いに来るだろう」
「イタチさんが…?」
「ああ、アイツも、もうとっくに覚悟は出来てるだろう。――最期の時だ」


私はハッと息をのんだ。
そして歯を食いしばると、少し無理矢理に笑う。

マダラさんは息をつくと、私の頭を撫でた。


「それより、マダラさん、雨隠れの里に?」
「――九尾を狩りに行く前に、ペインのところに少し邪魔が入ったらしくてな」
「邪魔…?」
「接触したことは無いだろうがお前も名なら知ってるだろう…自来也だ」


驚いて目を見開く。
そして数秒、固まった。


「伝説の、三忍の…?」
「ああ、そして九尾の人柱力の師だな…そんな未来は視なかったか」
「ナルトが、泣いている未来は視て…どうしたのかと思ったんです、でもその後直ぐに、デイダラさんの未来が入ってきたから、」


私の頭をゆっくりと、変わらず撫でるマダラさんの目を、見つめた。


「自来也、さまは、」
「――始末した」










――伝説の三忍の、自来也、さま。
ナルトの師匠。
五代目火影様と、同じ班。


きっとまだナルトも、五代目も、自来也さまが亡くなったことは知らない。
亡くなったことを知ったら…いや、もう未来は視た。
ナルトが、泣いてる姿。


「なんで…なんでアイツを助けてくれなかったんですか!――さん!」


そして脳裏に浮かぶ、一族の誰かが責められている光景。


ナルトも私を、責めるかな…未来が視えるのにどうして助けてくれなかった、って…。
ごめんね、ナルト…。


「――――」


そこで私はハッとした。
確かに苦しくなった胸の辺りに、手をあてる。


私は今、自分のことを、考えていた。
ナルトから責められることを想像して、悲しくなった。
申し訳なさに、溢れた。

――昔だって、変わらない。
たとえばナルトが悲しい想いをしたならば、私もとても、悲しくなった。

今は、何かが、違う…?
何が、違う。
分からない。


「――名前」
「…イタチさん」


――すると足音がして、振り返るとそこには、イタチさんの姿があった。





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