舞台上の観客 | ナノ
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――風の国、砂隠れの里の、風影室…我愛羅とチヨバア、そしてテマリ、カンクロウが集まっていた。


「俺が尾獣を抜かれたのにも関わらず生きていて…そしてチヨバア様の身体から、赤砂のサソリの毒が消えていたことの調べが、ついた」
「それは本当か、我愛羅」
「ああ…とは言っても、両方のチャクラが一致した、ということだけだが…」
「つまり、我愛羅を助けた奴とチヨバア様を助けた奴は一緒だ、ってことだな」


頷いた我愛羅に、けれどカンクロウは頭をかく。


「そんないい奴が居るって分かったのは良いことだけど、チャクラが分かったところで、ソイツが誰だか探るのは到底無理じゃん」
「確かにな…我愛羅が暁にさらわれた時に関わっていた奴と言っても、大勢いる」


椅子に座り、机に肘をつき組んだ指を口元にあてる我愛羅はカンクロウとテマリを見て、そうしてチヨバアに視線を移す。
するとチヨバアが頷いたのを見て、再び視線を二人に戻した。


「実は、俺とチヨバアの間ではその人物が誰なのかについての意見は一致している」
「そうなのか?」
「ああ…――名前だ」


テマリとカンクロウは、目を見開いたり口を開いたりしたまま固まった。
そんな二人にチヨバアが少し笑う。


「暁のメンバーの名字名前じゃよ、わしよりお前らの方が知っている筈じゃがのう」
「い、いやそりゃあ知ってるが…アイツは、名前は我愛羅をさらった暁のメンバーの一人なんだぞ?」
「それはわしも我愛羅も分かっておる…じゃが、わしの場合は特に、名前というあの娘以外には考えられん」


「――新しい世代に何かを残す、伝えることは、まだ先でも大丈夫ですよ」
「チヨバア様が、まだ生きられるのなら――」
「生きることを、してください」
「それがきっと、サソリさんの願いであって――」
「――みんなが、望んだことですから…――」


「録音してなかったのが悔しいくらいじゃ」


笑うチヨバアに、テマリとカンクロウは首を傾げる。


「俺は…――声を聞いた」
「声…?」


すると我愛羅が言った言葉に、眉を寄せて聞き返す。


「恐らく、俺が、尾獣を抜かれているとき…名前の、謝る声が聞こえた」


「――ごめんね…」
「ごめんね、我愛羅…」


我愛羅は眉を寄せて、組んでいる指に力を入れる。


「そして、また名前の声で解、と…そう聞こえたすぐ後に、俺は目を覚ました」


厳しい表情のまま我愛羅を見ているテマリは、少し泣きそうに眉を寄せると


「もしこの仮説が正しいなら、私だって、どんなに嬉しいか!」
「お、おいずりいぞテマリ!俺だってこの仮説を…信じたいじゃん!名前は、妹みたいな、ものじゃんよ…」
「ああ…けれど我愛羅、名前の戦闘スタイルは響遁…よくは分からないが、尾獣を抜かれたお前を生かせていたり、毒を身体から消すことが出来るとは、あまり思えない」


我愛羅が少し頷く。


「ああ、確かにそうだ…だが、名前の瞳が白緑色だったのを、俺は見た」
「わしもじゃ…白緑の瞳…どんな作用がある眼なのかは分からんが、とりあえずはそこに賭けてみても、バチはあたらんじゃろう」
「とりあえず、チャクラのサンプルを持たせた小隊を木の葉へ向かわせる。それから暁の捜索も兼ねさせている者達にもサンプルを持たせた」


我愛羅はそうして、ゆっくりと息をつくと目を閉じる。
――瞼の裏に、白緑の瞳を揺らす名前の姿がうつった。





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