舞台上の観客 | ナノ
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「私がアスマ先生を…助けたという形になっているとして…けれどそれが、私が木の葉を想っているということには、結びつきません」


影真似の術で縛られていなかったら、きっと手を、握りしめていた気持ちでカカシ先生を真っ直ぐに見る。

唾をのむと、カカシ先生は悲しそうに辛そうに眉を寄せて、私の名を小さく呼ぶ。


「――誰かを生かしたからといって、それが優しさや、思いやりに繋がるとは、かぎりません。また逆に、誰かを殺したからといって…」


脳裏にイタチさんの姿がよぎって、私はギュウッと眉を寄せてうつむいた。


「誰かを殺したからといって…それが優しさや、思いやりに繋がらないとはかぎらないんです…!」


私は一度目を閉じると、瞳を白緑色…時空眼に変えて、再び世界を視界に入れた。
左目の過去に関わる作用で一瞬で、影を、無くすまで巻き戻す。


「――響遁 重音の壁!」


そしてその一瞬で印を結んで、全員を、空気からの圧力によって行動不能にした。


「私は確かに、時空眼を持つ一族です。そして時空眼は、過去や、未来が視える」
「名前…!」
「けれど未来なんてものはまったく決まっていなくて、現在の状態から起こりうる未来は何通りもあるんです。いわば時空眼は、その何通りかを予測出来る眼といっても、おかしくはない」


私はそこで空を見上げた。


――上、下、横を使ってここから逃げるとして、けれどまず、下は考えていない。
私に土遁の性質は無いから。
そして横…けれどこれも、ほかに木の葉の忍が張っているとにらんでも、おかしくはないはず…私は、暁だから。
それなら上…空を使って逃げることなら、出来る。


「空に、結界…ですか」


けれど空には、里に張られているのと同じように結界が張られていて。


「お前が響遁で空を歩けるということは、風影奪還の際の任務で、カカシ達から聞いているからな」


私の術で圧力をかけられているから少し息を揺らして、けれど笑って五代目が言う。


「だがしかし、出来れば結界など使わずに、名字名前、お前を木の葉へ連れ帰りたい」
「…まだ、言うんですか」
「何度だって言うさ。――そもそも何故、私らがお前に、目隠しやらをつけなかったと思う」
「…?」
「時空眼の情報は私らにはもう割れてるんだ、それならシカマルの影真似の術でお前を捕らえた時に直ぐに、目隠しでもして眼を使わせなくさせれば良かった話だろう」


見ると、五代目は眉を寄せて私を半ば睨みつけて


「何度だって言うさ、名字名前。ここに居るこいつらは、お前を信じているんだ!結界など使わせずに、お前が自分から木の葉へ戻ってくるのを信じて、そして必死になってるんだよ!」


――私のことなんて考えなくていい。
ここで木の葉に戻れれば、それはとても、幸せなこと。
けれど暁のルールは、裏切り者には、死を。
ここで死んだら、とめたい未来が、とめられない。


色んな思いが頭を巡る、けれどやっぱり、変わらない。
私の色んな思いは、変わらない。


「私は、暁が強いという未来を視たから、木の葉を抜けて、暁に入ったんです」





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