舞台上の観客 | ナノ
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「――カカシ先生…!」


霧が晴れた先に見えるのは、水牢の術によって水の球体の中に閉じ込められてしまったカカシ先生。

カカシ先生と桃地再不斬の、水分身の騙し合いが脳裏に蘇った。
ぎりっと歯を食い縛る。


制したのは桃地再不斬…!
いくら本体がカカシ先生から離れられないとしても、水分身が…!


「クク…偉そーに額当てまでして忍者気どりか…。――お前らみたいなのは忍者とは呼ばねェ…」


次の瞬間風を切る音がして、ナルトの目の前に桃地再不斬が現れた。


「…!ナルトっ!」


桃地再不斬に蹴り飛ばされたナルトを受け止めると、どしゃあっと地面に二人で倒れ込んだ。

慌ててナルトを見る。
そしてほっと息をついた。


良かった、蹴飛ばされたことを除けば特に怪我は無い…。
――――……無い…?
違う、それ以前に何か違和感が…何か、何かが…。


違和感に気づいてハッと桃地再不斬を見た。

丁度、踏まれる瞬間だった。
――ナルトの額あてが。


「…っ」


バッと苦い顔でナルトを見ると、ナルトはそれよりも、恐怖の色に顔を染めていた。


――…どうする…。
…でもさっき、桃地再不斬が向かって来る音が確かに聞こえた…!
耳が馴れてきている。
――次は、止められる…!
…いや、止めるんだ…!


するとナルトがいきなり桃地再不斬の方へと走っていってしまった。


「ぇあっ?!ナルト!」


ま、ま、まさかの予想外!


「フン、馬鹿が」


そしてまた蹴飛ばされた!
しかも今度は地面を転がってきているから、受け止めるも何も無い!


「一人で突っ込んで何考えてんのよ!」


ほらサクラも心配して怒っちゃったじゃないか!
ナルトが一人で突っ走るのがサクラにとってどれだけ辛いことか…。
サクラは辛くても一緒に…って、そ、そうか…。
ナルトはサクラに辛い思いをさせたくないんだよね…。


「いくら意気がったって、下忍の私達に勝ち目なんてあるわけ、……!」


するとサクラが言葉を途切れさせたから、慌ててサクラを見る。


も、もしかしてサクラ、泣いちゃっ…てない、な…。
じゃあ、何で…――。



「――おい、そこの眉無し…」



思わず目を少し見開いた。
少し先のナルトの額には――


「お前の手配書に新しく載せとけ!――いずれ火影になる男、木ノ葉流忍者!うずまきナルトってな!」


取られた筈の、額あてがあったから。




…そっか、ナルト、額あてを取り返す為に…――。


自然と口角が上がる。
一致団結してきたみんなを見て、唇を引き結んだ。


私はみんなを守る為に戦う。

ナルトとサスケが作戦を実行出来るように。
サクラがタズナさんを少しでも安心して守れるように。

――私は守る為に、戦おう。



ナルトが蹴飛ばされる少し前に聞こえた、桃地再不斬がこっちに向かって来る音。
再び風を切る音がして――


キィイイン…!


サスケを狙っていた桃地再不斬の前に飛び出した。

驚いた桃地再不斬が咄嗟に腕を出して、仕込み武器と私のクナイがぶつかって響く。

私は素早く手を引いて、印を結んだ。



「――響遁 重音の術――」





110418.