舞台上の観客 | ナノ
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――火の国、木の葉隠れの里の火影室…。
その部屋には無事に任務から帰ってきたカカシ班のメンバーと、綱手、シズネが居た。


「 そうか…」
「……」「……」


報告を聞き終えた綱手は眉を寄せ、そうして、うつ向き唇を噛みしめているナルトとサクラを見た。


――報告を聞かなくても、綱手には、名字名前についてどうなったのかが、分かっていた。
それは簡単なことで――ナルト達と共に、木の葉へと戻ってこなかったからだ。


「風影奪還、ご苦労だった」


だから綱手は、そう言った。


「 名前のことについて、まだ報告したいことがあるんです、綱手さま」
「なんだ、カカシ」
「はい、――名前の瞳の色は、琥珀色です」
「ああ、それくらいなら私だって知ってるさ。忍者登録なんかの写真で見たからな」


カカシは少し眉を寄せる。


「今回の任務で名前と会った時――名前の瞳はずっと、白緑色だったんです」
「、白緑色…?」


眉を寄せる綱手とシズネに、カカシだけでなくナルトとサクラも頷く。


「あれは恐らく、瞳力の類ではないかと……名前が瞳を使ってしたと思われることは、万華鏡写輪眼を消すこと。それから、妖狐の衣を消すこと。 そして――」
「名前は俺達の動きを、完全に止めたんだってばよ」


真っ直ぐに綱手を見るナルトをちらりと見てから、サクラも、そうして綱手を見る。


「その少し前に、名前に、響遁で身体の動きを止められました。…でも、それとはまったく違う……なんだか、力でも技でも、どんなふうに対応しようとしても、絶対に無理、って気がしたんです」


言葉を引き継いだナルトとサクラに、カカシが頷く。


「ほかの術の時は、名前はちゃんと、印を結んでましたからね」


――少しの沈黙が、火影室の空気に訪れる。


「けどまさか、そんなこと…とても信じられない」


それを、シズネが破った。


「妖狐の衣を瞳力だけで消すなんて、そんな…」
「――とにかく、それだけじゃあ能力はおろか、まだ何も分からないな。――他に何か気づいたことはないのか」


綱手の言葉に、再び、火影室に沈黙が落ちる。


「、そういえば」


それを破ったのは今度は、カカシだった。


「大したことじゃあ、ないかもしれませんが…」
「何でもいい、言ってみろ」
「――万華鏡写輪眼と妖狐の衣を消した時は、名前は右の瞼を下ろして…つまり、左眼だけで捉えていた。 俺達の動きを止めた時は、両眼を開いてましたね」


綱手が机に肘をつき、こめかみに手をあてる。


「それがもし何か重要な意味を為すならば…左眼で何か物体を消せて、両眼では動きをとめられる…ということか?いやけれど、それならば関連性が…」


思考のスパイラルに入った綱手から、サクラはカカシへと視線を移す。


「でも、先生。もし名前がそんな瞳術の使い手だったとして…けど私、そんな瞳術、聞いたことないわ」
「うん…俺もだよ。瞳術…というか忍術についてだって、本当に正確な情報なんて、まだまだ全然定まっていないしね」

「待てよ…消すと、とめる…消す、とめる…いや、」


すると何やらブツブツ言っていた綱手が、ハッと顔を上げた。
カカシらは慌てて、


「何か覚えが、ありますか」
「……いや、」


眉を寄せている綱手はけれど、何も心当たりがない風には見えなくて。
 綱手自身もまだ何かを迷っているような、考えているような様子に、カカシは砂でのことを思い出した。



「まぁまだ、何も分かっておらんからの。真実かどうかも分からないことを余計に話すのは危険じゃ、やめておく」



そして今の綱手が、同じような状況にあるように見えた。


「――とにかく、名字名前の報告もご苦労だったな。 ナルト、サクラ、お前らは連絡があるまで自宅待機をしていろ」


カカシの顔がひきつる。


「綱手さま…?俺は…」
「悪いなカカシ、お前にはこれから、どうしても外せない任務が一週間程下される」


にっと笑って言った綱手に、下すのはアンタでしょ…、とカカシはがっくりと肩を落とした。

 綱手が立ち上がり、ドアへ向かって歩きだす。


「って、ちょ、ちょっと綱手様?!どこに行かれるんですか?まだまだ書類が…!」
「なんだシズネ、休憩くらいさせろ」
「ついさっきも休憩してましたっ!」
「あっ、待ってください綱手様!お話が…!」


綱手、シズネ、サクラの三人がそうして、火影室を出ていった。





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