舞台上の観客 | ナノ
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「待てってばよ!名前…!」


立ち上がり、チヨバア様の前から離れ、みんなから離れる方向へと、歩き出す。
けれどその時、心臓が強く動くと共に、視界がグラついて――私は近くの木へと腕をつき、何とか倒れることをふせいだ。


「ゲホッ、ゲホッ……!」


っ、しまった、時空眼を解いていないのに、身体が…。


――万華鏡写輪眼の使いすぎで視力が落ちるようなことはないけれど、時空眼を使うと、身体に負担をかけることになる。
時空眼を解いたときに、その負担は身体へと還元される。
けれど今は、まだ時空眼を解いていないのに負担がきた。


一尾の封印、響遁でのチャクラ消費、万華鏡写輪眼とチヨバア様の毒への対処…確かに少し、負担がたまりすぎたかな…。
――もうそろそろ、時空眼を解こう。


「身体がよぇえのは、変わってねぇ、ってばよ」


――すると響遁の術が弱まってしまっていたのか、後ろを振り返れば、ナルト達が地面に伏せていた状態から起き上がり、立とうとしていた。
 それでも――、


「いくら圧力が弱まっているといっても、その術をかけられたまま動くのはかなり辛いことだから、無理はしない方がいいよ」
「ハッ…!今頑張らねぇで、いつ頑張るんだってばよ!」
「…もうデイダラさんはここには居ない。それは気配で分かっているはずだけれど…」
「違うわ…!」


サクラが苦しさに眉を寄せながら、私を真っ直ぐに見た。


「ずっと会えなかった名前が、今、ここに居るのよ…!」
「――――……」


私は思わず目を丸くして、言葉を失う。

カカシ先生がそうして圧力に圧されながら、立った。


「ナルトも、サクラも、そして俺も……言ったよね、名前、お前を――木の葉へと、連れてかえるよ」
「…………なんで、」


言霊にはならなくて。
掠れた息に、少しだけ細い枠組みがついたように、言う。


――なんで、私のことを、気にするんだ。
私は、観客なんだ。
みんなには物語が、先が、未来があって――、なのになんで、私のことを――…。


「――解――」


響遁の術を解く。
圧力が消え去って、驚いたように私を見るみんなを、眉を下げながら見た。


「――サスケはまだ、木の葉へ帰ってきてはいないよね」


眉を寄せ下げるみんなの反応を見なくても、知っている。


「大切な、大事な、木の葉隠れの仲間――」


里は、忍が生きるための、大事で大きなつながり。
だから忍は里を守り、里のために尽くす。
 けれど、


「私は木の葉の忍じゃない」


ナルト達が目を見開く。


「抜け忍だからとか、そういう意味じゃないんだよ。私は最初から、木の葉の忍じゃない」


私は印を結んで、ナルト達へと向けてクナイを放った。

けれどそこは、私が空を歩ける原理と同じ響遁の術の作用によって固くなっていて。
放ったクナイは、見えない壁にあたって地面に落ちた。


「それにこんなふうに――みんなと私の間には、目には見えない壁がある。みんなと私は、違う。関係ないというか、気にしなくていい存在なんだよ。だから私のことは、」
「木の葉の忍だからじゃ、ねぇってばよ…!」


思ってもみない言葉に、眉を寄せる。


「誰かを助けてぇとか、誰かを想う理由が、木の葉の忍だからってんなら……俺は我愛羅を助けに、ここまで来てねぇ」
「、それは…」
「里とかは、関係ねぇってばよ。名前、お前は俺の、――やっと出来た、大切なつながりだから…!」
「――――!」


ナルトが歩いてくる。
私は、動くことが出来ない。
ナルトが、見えない壁に、爪を食い込ませ始める。


「だから、木の葉に連れて帰りてぇとか、そんなんじゃねぇんだ、別に」
「…!む、無理だよ、その術は力ずくで解ける筈が…!」
「俺はただ、失いそうになってるつながりを、手繰りよせてぇだけだ…!!」


――言葉を失っていると、サクラも歩いてくる。


「私はもう、何も守ることが出来ないで、守られるだけだった弱い存在じゃない…。――守りたいものは、この手で守るわ!」


そうして拳を振り上げると、



「身体的な強さなんてサクラならいくらでも着いてくるよ。サクラは心が強い、女の子だから」



見えない壁を、叩き割った。
空気が割られて反射する奥で、サクラが笑う。


「名前が言ってくれたとおり――強くなったもの!」


――思わず後ろに下がった私の肩に、誰かが手を置く。
振り返って見上げればそれは、にっこりと笑うカカシ先生で――。

するとナルトとサクラに暁の衣を引っ張られて――笑顔の二人がいっぱいに映った。



「「つかまえた」」






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