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「#年下攻め」のBL小説を読む
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シュッ!
風を切る音に次いで、左腕に微かな痛みが走る。
その瞬間にその場から飛び離れながら手裏剣が飛んできた方向にクナイを投げる。


「がっ…!」


どさり、木から落ちてきた忍の首に刺さっている私のクナイ。
動けないのかギロリと睨み付けてくる忍に近付く。
スッとしゃがんで、クナイを引き抜いた。


「っ!…、…―――」


飛び散る血。
目を見開いたまま動かなくなった忍。

腕の傷が、じくりと疼いた。















「――…はあ、…」


薄く優しい香で包まれる私の部屋。
同じ香りがする忍服、布団、その他諸々。

それに囲まれて息をゆっくり吐いた。


―…落ち着く…。
…そう、そうだ、もうすぐ朝になる。
戻るんだ…戻らなきゃ。


微かな音一つでも取り零さないよう研ぎ澄まされた聴覚。
そしてそれを捕らえる視覚。
息を殺して、闇に溶けて。
針金のように鋭く、一つに集中された思考。

―それらを全て、緩くほどいて、柔らかくして。


「…よし」


大丈夫だ。
あと少ししか寝れないけど、寝よう。


ばたりと布団に倒れ込んで、

ずきり

左腕に痛み。
ちらりとそれを見て、


「うあー…私の馬鹿…」


せっかく戻れたのに思い出すような事するなよなあ、自分。
寝る、もう寝る。













「名前、おはよう」
「ほはほー(おはよー)」
「ふふ、ちゃんと食べてから話しなよ名前」
「ん」
「名前、おはよう」
「おはよ兵助、豆腐あげる」
「好きだ名前…!」
「ありがと」
「うあー…眠い」
「また虫の捜索?」
「ハチも大変だよね。その点学級委員長委員会は、ね?三郎」
「な、勘ちゃん」


がたがたと私の隣やら前やらに座るお馴染み五人。


「はい兵助」
「本当に好きだ、名前」
「どーも。あ、醤油」


兵助から少し遠い所にある醤油を渡そうと手を伸ばす。


ズキリ!
「っ…と、危なー」


痛みが走ってびくりと痙攣した左腕。
倒しそうになった醤油をパッと掴んだ。
眉を寄せたのも一瞬。
直ぐに飄々として兵助に醤油を渡す。


「はい」
「ありがとう」


その時に、ほんの一瞬、一瞬だけ、三郎と目が合った。
訝しげに眉を寄せて私を見る、三郎と。


思わず逸らしたけど、というか自然に逸らしたけど、…うん、多分間違ってない。
……あ、良かった。
視線が終わった。
良かったあ、三郎って鋭いというか、頭がキレるというか、まあそんなんだからなあ。


「でも今日、五年生は全クラス自習だからな!早く終わらせれば寝れるぜ」
「え、自習?は組も?」
「名前聞いてなかったんでしょー、寝てたな」
「…鋭いね勘ちゃん、自習って何?」
「ただの記述だから直ぐに終わる。終わったら皆で集まろう」
「僕と三郎の部屋集合ね」
「げえ…!記述だったのかよー、くっそー…終わるかな」
「私が手伝おうか、ハチ」
「兵助…!」
「流石にクラスは無視したら駄目だろ、兵助」
「ハチは僕達が手伝うよ」
「あ、分かってると思うけど私は皆より遅れるから」
「………クラスを無視しても大丈夫じゃないか」
「三郎、2秒前と言ってる事が違うよ」
「くそ、なんで名前だけ違うクラスなんだ」
「私の頭に言ってくれ」












「やっと終わ、っ…た」
「おわー皆死んでる」
「名前…元気だな」
「ていうかなんで皆そんなに疲れてるんだよ」
「は組だからだ…」
「久しぶりに頭使った…」
「じゃあ出すのは私がしとくよ」
「!やった!ありがとな、名前!」
「よっしゃあ!」


そうしては組を出たのがさっきの話。
右手で自習用紙を持ちながらぶらぶらと歩く。


眠いなあ…三郎達の部屋で寝ようかな。
そうだ、ハチも寝る!って言ってたし一緒に寝よう。


――ひらり、
「あ」


手から抜け出していった紙はひらひらと流れていって庭の方までいってしまった。


あーあ、…って、喜八郎の塹壕が空いてる。
……誰か落ちたのか。


歩いていって用紙を拾う。
ひょいと塹壕を覗き込んで


「大丈夫ですか?」
「あ、はは…落ちちゃった」
「どうぞ」
「ごめんね、ありがとう」


居たのは六年生の先輩。
お礼を言いながら伸ばされたその先輩の手を掴んで、


「――――……!」


サアーッと身体中の血液が冷たくなる感覚になった。


――左腕の感覚が無い。


私の馬鹿…!
あの手裏剣には毒が塗ってたんだ…もっと早く気付け!
毒抜き…まだ間に合うか?


「右手に変えて!」
「え」
「はやく!」
「は、い」


プリントを土の上に置いて、右手で先輩の手を引く。
塹壕から出てきた先輩はプリントを無造作に掴むと、右手を掴んで走り出した。


な、なんだこれどうした。
やっぱり毒に気付かれ…いやまさか、あれでも保健室着いちゃった。


先輩は私を椅子に座らせると手際よく何かを用意する。
そしてばっと左腕の忍服を捲って


「…………ねえ」
「…はい」
「これなに」
「……何の事ですか」
「惚けない!この左腕の事だよ!まるで血が通ってないし…今感覚無いよね?」
「……」
「 無 い よ ね ? 」
「無いです」
「はあ…」


なんだこの先輩怖い。
可愛い顔して意外と怖い。
ていうか血が通ってないって…うわ、冷たい。


「本当…引き上げようとしてくれた時驚いたよ。それにこの香りの毒の種類は気付かない内に全身に広がるんだ」
「…詳しいですね」
「ああまあ。僕保健委員長なんだ」
「ああ…」


納得。


「―…はい、治療出来た」
「ありがとうございました」
「…ねえ、その毒…どこで貰ったの?」
「あー…実習の時ですかね、確か」
「………そう」
「…治療してくれて助かりました。私もう行きますね」


立ち上がり廊下に向かって歩き出す。
すると襖に差し掛かった時に


「その種類の毒ね、危険だから実習とかでも使っちゃいけない毒なんだよ」


先輩はにこりと笑った。