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「#幼馴染」のBL小説を読む
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鉢屋三郎、不破雷蔵の部屋。
名字名前を抜いた五年生お馴染みメンバーの五人が頭を悩ませていた。


「はあ…名前は何と言うかな雷蔵」
「う…僕にも分からないよ…三郎」
「引かれたりなんてしたら私、私…」
「兵助…そんな風に考えんなって」
「どうしようねえ…」


――五人が悩んでいる原因は、名字名前。
五人が恋愛感情を含んでお互いに大好きな事を、名前は知らない。
そしてその対象に名前自身が含まれている事も。

言ってしまいたい、このはち切れんばかりの気持ちを。
…けど、もし伝えて引かれたら?嫌われたら?嫌がられて、距離をおかれたら?

それを考えると、どうしても喉が詰まってしまう。
けど名前の事を考えると、名前に会うと、ぶわりと気持ちが膨らんで、のスパイラル。


――そんな時、襖が開いた。












がらり。
三郎と雷蔵の部屋を開けると円になって座っている五人。
驚きやら何やらの視線を一身に受けて一言。

「あ、ごめん。邪魔した」

「だからなんでそうなるんだよ?!名前は!」
「邪魔じゃないよ。どうしたの?名前」
「名前、入って」
「此処来いよ名前」
「名前ーっ俺の隣来てよ」


ぐわあと此処に来た五人。
兵助に手を取られて、兵助と勘ちゃんの間に座る。


私邪魔だろ、これ。
気を使わせてしまった…用事済ませて退散しよう。


「雷蔵、きり丸から渡し物を預かってるんだ」
「え、きり丸から?」
「委員会関係じゃないかな。一年は組は補習で来られないから代わりに渡して下さいって」
「ありがとう、名前」
「うん。じゃあ私は」
「名前」
「?なに?三郎」
「……聞きたい事がある」

「「「「!」」」」

「なんだ?」
「……名前は、」
「うん」
「名前は、〜〜っ」
「…うん」
「名前、は…っ」
「…あのさあ三郎、何かあったの?」


名前を呼ぶだけで一つも前に話が進んでないよ三郎。
会話のキャッチボールを始めよう!
って何だそれ。


「三郎無理しないで、…僕が聞く」
「雷蔵…!」


え、無理ってなんだ。
そんなに聞きづらい事って……なんだ?
全く心当たりが無いぞ。


「名前!」
「おー」
「名前はっ」
「おー」
「名前は、あの、その、…」
「…おー」
「っうわああ、やっぱり僕は無理だよ!名前を目の前にこんな、こんな…!」
「雷蔵!雷蔵は頑張ったよ…!」
「あのー、雷蔵さん三郎さーん?」


ぎゅうと抱き締め合う二人にも馴れたもんだ。
じゃなくて、どうしたの双忍。

と、くいっと腕を引かれる。
先には兵助。


え、もしかして三郎雷蔵だけじゃなくて兵助も私に聞きたい事があるのか?


「名前」
「なに?」
「私の事、す、す、す、」
「す?」
「す、す、〜〜っ…!」
「え、ちょ、兵助?」


すすすって何だ…!
しかもなんでそれを言って三郎と雷蔵のとこに突っ込んでいく?
そしてなんで三郎と雷蔵は頑張ったって褒めてる?
すすすで二人は意味が分かるのか、流石だなあ。


「名前」
「ハチ」
「名前は男…っ」
「え、うん」
「そうじゃなくて、男と、お、男…っわああああ!俺には無理だ!」
「………」


私は男だよ、ハチ。
けど男と男ってなに?
私は一人だよ?
ああなんだもう意味が分からない。


「名前」
「勘ちゃん…いいよもう、私に聞きにくい事なら無理しな」
「名前は、男同士が愛し合うのってどう思う?!」


びきり。
言い切ったというように肩で息をする勘ちゃん以外に動く人が居なくなった。


私に聞きたかった事って、それ…?
男同士が…つまり衆道の事だよな、なんでそんな事……。


そこではたと気付く。
五人の視線が痛い。
そしてその視線には不安があった。


…!そういう事か!


「―…私はそういう事に抵抗は無いよ、全く」
「「「「「!」」」」」


ぱあっと期待と喜びに満ちた五人に頬を緩める。


「怒りだって悲しみだって異性にも同姓に対しても思うんだ。好きという感情だって例外じゃない。性別関係無く、その人を好きになるものじゃないのかな。―…だって、三郎達はそうだろ?」
「なっ?!名前…?!」
「知っ、てた、の…?」
「見てたら分かるよ」
「私達がお互いに好きな事をか…?」
「うん」
「な、んだ…知ってたのか、名前は」
「う、嘘ぉー」
「皆そんな事を聞くのに悩んでたのか?馬鹿だなあ」
「悩むに決まってるだろ、名前の馬鹿!」
「まあ私は馬鹿だけどさ。私は皆を応援するから、いくらでも相談しろよ」
「……………え?」
「ん?」
「は?」
「いや、は?って…恋路は応援するだろ…?友達なんだから」
びきり。



…あっれーなんだこれデジャヴ?
また皆固まってるよ、今回は勘ちゃんも。
友達だから聞いておいてほしいって事だろ?
まあ結局私はもう知ってた訳だけど。
…あ、そういえば先生に呼ばれてたんだった。


「ごめん、私先生に呼ばれてたからもう行くな」


…固まってるけど、まあいいか。













――その後の部屋にて。


「名前の馬鹿、名前の馬鹿」
「はあ…普通僕達の事に気付いたら自分に対してどう思われてるかも気付くよね」
「何時になったら名前と…」
「鈍感め!でもそんな名前も好きだ」
「分かるー…はぁあ」







(とらわれている、なにもかも)
101123.