02
「笑えるかァァァァァ(怒)本文とP.S.が逆コレェェ!!」

送られた箱についていた手紙を破り捨てる。この程度で怒りは到底治まらない。出来るなら直接蹴飛ばしたい。斬りかかりたい。

「人の家壊しといてP.S.ですませやがったよ。自分も人の名前間違えてるしよォォ!よしんばP.S.が世界平和を願う意味だとしても許せねーよコレは!」
「類は友を呼ぶアル」
「友達じゃねーよこんなん!死んでくんねーかな。頼むから死んでくんねーかな。スゴク苦しい死に方してほしい。熱計ろうとして間違って水銀飲み込めばいいのに」
「怖ェェよ!落ち着いて下さいよ銀さん。手紙はあくまでオマケですよ。坂本さん、これを送りたかったんでしょ」

新八は腰丈ほどもある段ボールを指すが、詫びと言ってもとんでもないものが入っていそうだ。よく考えれば坂本をそういった面で信用するのは危険だ。絶対ろくなものじゃない。同じボンボンでも高杉の方が贈り物に関して信用性がある。
しかし開けてみないことには、送り返すことも出来ない。覚悟を決め、ガムテープを剥がす。開けると煙が出てきた。

「どーも」
「この度はデリバ……ぶごっ!!」

中に強面のオッサンが二人詰まっていたなんてそんな馬鹿な。夢に違いない。
蓋をしたまま、銀時は固まる。

「あーコレ夢だなオイ。変な妖精入ってたよ。キモ可愛くねーよ」
「ちっちゃいオッサン入ってたヨ。ちっちゃいオッサンがしきつめられてたネ」
「いやいや、今の人形でしょ?人形ですよ。もっかい見てみましょうよ」

新八に促され、渋々再び箱を開けてみた。

「どーも」
「この度はデリバ……」

我慢出来ず箱を蹴る。金属製の箱を段ボールで囲んでいる状態だったらしく、足に固い感触を伝えてきたが、そのまま足を振り抜き箱を飛ばした。ボロボロになった壁は穴が空いて崩れる。

「ウソウソ、夢だ夢。最近色々ゴタゴタしてたからな。疲れてんだろ」
「ちっちゃいオッサンの悪夢にさいなまれてんですよ僕ら」
「じゃあ解散。目ェ覚ましたらもっかいミーティングなー」
「「うース」」
「待たんかィィィ!!」

一旦万事屋を出ようと背を向けたのに、野太い声が掛かった。気絶しててくれれば目に優しくすんだのに。

「てめーら人の話を最後まできけェェバカヤロォォ!」
「この度はお前、デリバリー大工をご利用頂きありがとうございますって言ってんだよコノヤロォ!」
「デリバリー大工?しらねーよそんなもん。この度はそんなもんしらねーから帰れ」
「なんだァァその言い草はァァ!」
「遠い星からわざわざ家直しに来てやったんだぞ!」

顔は厳ついのに、背丈が銀時の腰ほどしかないオッサンってキモい。悪いが生理的に受け付けない。ちっちゃいオッサンとは誰得なのか。

「? もしかしてアナタ達坂本サンに頼まれて」
「そうだよ!俺達は依頼があれば星をもまたいで家を建てに行く。ウンケイ!そして」
「カイケイ!」
「「デリバリー大工なんだよ!!」」
「チェンジで」
「いやそんなんないから」

残念だ。タダで修理してもらうなら、どうしてもこのちっちゃいオッサンに頼まなければならないらしい。
金は坂本が払っているだろうから、遠慮なく使わせてもらおう。視界に入れなければ気にならないはずだ。

「ならてめーらに頼まァ。三階部分が全部吹っ飛んじまってよ。どうしようかと思ってたんだ。てめーらに任せていいんだよな」
「はィ!?ここ三階なんてあったんスか!?」
「あったんだよ。てめーは住んでねェから知らねーだろうな。神楽の寝てる押し入れのある部屋、あそこに階段があったんだよ。なっ、神楽?」
「そうアル。三階の片付けがすんだら私一部屋貰える予定だったネ」

サラッと嘘を吐き神楽に目配せして振れば、大きく頷き乗ってくれた。
住民も増えたことだし、少し改築してもいいだろう。

「三階っておめー、明らかコレ二階建てじゃねーか。天井のすぐ上、屋根じゃねーか」
「ほァちゃァァァァ!!」

ウンケイだかカイケイだかがいちゃもんをつけた。神楽は飛び上がり屋根を蹴り飛ばす。残っていた屋根部分は吹っ飛び、これで誤魔化せるだろう。

「おら、これで大丈夫だろ」
「全然大丈夫くねーよ!」
「……こんな言葉をしってるか?茂吉っていう偉い大工が言った言葉でよォ。よくしゃべる職人にロクな奴はいねーって。口で語る術をしらねェ奴を職人という。ゆえに職人は腕で語る。
おめーらはどっちのクチだ?」

ニッと不敵に笑いかける。
こうして上手く騙くらか……丸めこ……説得し、三階を作らせることに成功した。





―――――――――――

万事屋は意外と面積が広かったりする。三階部分を作らせると、立派な和室が五部屋も出来ていた。それなりの広さがあり、快適そうだ。
坂本からの出産祝いってことにしよう。生んでないけど。
忍者屋敷にしたいとも思ったのだが、忍者のストーカーがいるので断念した。気付かぬ内に仕掛けを増やされたり住み着かれたりしそうだ。

「キャッホォォウ!!私この部屋がいいネ!」

階段を上った神楽は興奮して一番広い奥の部屋を取ろうとしたので、引っ掴んで階段すぐ側の部屋に放り込んだ。

「おめーはココ。飯の時間にすぐ下りれた方がいいだろ」
「うぐぐ、それもそうネ。広いだけより質が大事ヨ!」

自室を色々飾り付けるつもりらしい。太一の所へ行って新しい家具を買ってやるか。
新八が泊まる時は神楽の向かいの部屋を使わせよう。

「部屋が一気に増えましたけど、銀さんはどうするんです?」
「俺も上に引っ越すかな。奥の部屋使うわ。下の和室は居間として使えばいいだろ」
「成長すれば雪路君にも部屋をあげれますね!」
「まァな。当分先だろーが、やっぱ思春期になりゃ自分の部屋ってのは必要だろ」

佳月の部屋も用意出来る。高杉は――銀時は頭を振った。将来どうなるかなんてわからない。一緒に住めるかわからないし、住むにしてもここではないかもしれない。ただ客も多いのだから狭いより広い方がいいだろうし、一人未来を夢想するくらいいいだろう。
今まで高杉と共に歩む将来を考えたことはなかった。性格的にも、生き方にも、性別にも問題はある。しかし三ヶ月ほど雪路を育てて来て、銀時の心は綻びようとしていた。考える、それだけだが今までとは大きく違う確かな一歩を踏み出した。





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