04
銀時と仲がいいとは言えない土方だが、銀時の子でも雪路に当たったりはしないだろう。これなら、信用して雪路を預けても良さそうだ。

「オイ、お前雪路を連れて逃げろ」
「ハァ!?てめーはどうすんだ」
「俺は仕事に来てんだぜ?あの女の相手するに決まってんだろ。大事な息子を預けるんだ、傷一つつけんじゃねーぞ」
「……おう、任せとけ」

銀時が雪路を預けると、土方はおっかなびっくり雪路を抱いて逃げる。銀時は立ち止まって木刀を構え、追ってきた女を迎え撃つ。女は背中に生えた羽で飛んで来ていた。

「アンタ、天人だよな?こんなむさ苦しい場所で何してんだ?皆理解不能な出来事に迷惑してんだが」
「あの〜どうもすいませんでした〜」

こちらの言い分は通じたらしく、女は銀時の前で停止し顔の影を強くしながら身の上を語った。
彼女は蚊のような天人らしい。最近子供が出来たが、相手には言わず一人で育てようとしている。子供を産むエネルギーを摂取するため血を求めてさまよい、男だらけの絶好のエサ場である真選組屯所に辿り着いたようだ。

「アンタの事情もわかるが、正体がわからず襲われて魘されてる奴もいるんだ。明日の朝にでも説明してやってくれや」
「はい〜すいませんでした〜」

案外あっさりと解決した。朝までここにいてくれと、適当な部屋に入ってもらう。

「しっかし吸血鬼のロマンが破れる天人だな」

男の吸血鬼にしろ女の吸血鬼にしろ、昨今は中々萌える展開の話が多いものだ。それが同じ血を糧にする存在ながら、蚊って。蚊ってなんだ。微妙な気持ちになるのも仕方ないと思う。

「おーい!おめーら解決したぞー!!おーい!」

探して回るにも屯所は広いので、手をメガホンにして事件解決を知らせた。まずは茂みからゴソゴソと土方が現れる。上着を脱いで雪路にかけていた。蚊が多いため蚊避けに掛けてくれたらしい。事情説明より何より真っ先に雪路を受け取る。土方に抱かれそわそわ落ち着かなかった雪路は、銀時に抱かれやっと安心したのかほんわりと笑った。

「可愛いな……」
「ん?何か言った?」
「い、いや何も」

土方が何か言ったように聞こえたが、聞き間違いだったらしい。雪路に掛けられていた上着を土方に返し、事情を説明する。

「蚊の天人ねェ……またはた迷惑な」
「開けねー方がいいぞ。あの顔は夜に見ると夢に出る」
「別に俺は怖くないからあのアレ、見てもいいけどな。けど子供には刺激が強いからな、うん。やめとくか」

障子に手をかけ女を確認しようとした土方だが、銀時に止められ色々取り繕いながら手を引っ込めた。正体が天人だと知っても、進んで見たい顔ではない。
部屋を見張るための隊士を呼んで来ると、銀時に少しその場を任せ土方は立ち去る。入れ替わるように沖田がやって来た。

「事の顛末聞くか?」
「いいです。聞こえてましたんで。それより旦那に聞きたいことがあるんですがね」
「何?スリーサイズなら知らねーけど」
「俺もそんなの興味ありやせん。旦那は幽霊じゃなく天人退治がどうこう言ってやしたけど、本当は違うでしょ?」
「……何、どゆこと?」
「旦那は本当に拝み屋をしていて、幽霊なんかもバッチリ見えるってことでさァ」
「何でそう思うのかな。全然違うからね」
「ま、俺は勝手にそう思っとくって話でィ」

これは何を言っても変わらないだろう。沖田はさりげなく周りを見ている男だとわかった。




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