02
失敗したなぁ、と思う。チェーン店なんてどこも同じだろうと適当に入ったファミレス。しかし接客態度が最悪だった。注文した品が届くのが遅いくらいは、まだいい。しかしこれはない。

「だからバカ、おめっ……違っ……それじゃねーよ!そこだよ、そこ!」

レジでバイトの少年を怒鳴る店長とか、最悪ではなかろうか。

「おめっ、今時レジ打ちなんてチンパンジーでも出来るよ!」

出来たらそれはチンパンジーじゃない、天人だ。

「オメー人間じゃん。一年も勤めてんじゃん!何で出来ねーんだよ!」

確かに一年経ってもレジ一つ満足に出来ないのは珍しい。しかし店の入り口にあるレジでバイトを怒鳴り散らしてる姿が、外からガッツリ見えているのはいいのか。それで客が入ると思ってるのだろうか。

「す……すみません。剣術しかやってこなかったものですから」
「てめェェェ、まだ剣ひきずってんのかァ!」
「ぐはっ!」

店長の拳が少年の頬に入った。少年の気持ちもわかるがここで言い訳するのは駄目だ。こういう人間に言い訳は通じない。

「侍も剣ももうとっくに滅んだんだよ!それをいつまで侍気どりですかテメーは!あん?」
「オイオイそのへんにしておけ店長」

少ない客の一人、猫系統っぽい天人が止めに入ったが、その声に止めようという意思は感じられない。

「オイ、少年。レジはいいから牛乳頼む」
「あ……ヘイ、ただいま」
「旦那ァ、甘やかしてもらっちゃ困りまさァ」
「いや最近の侍を見てるとなんだか哀れでなァ。廃刀令で刀を奪われるわ、職を失うわ。ハローワークは失業した浪人で溢れてるらしいな」

余計なお世話だ。
銀時はやっと運ばれてきたパフェを口に運んだ。味は普通に美味いが、目の前の面白くもない見世物に味も劣って感じる。
客に不愉快なものを見せる暇があるなら、キッチンを手伝ってやればいいのに。

「我々が地球に来たばかりの頃は、事あるごとに侍達がつっかかってきたもんだが。こうなると喧嘩友達なくしたようで寂しくてな」

天人は少年の前に足を突き出し、引っ掛かった少年は銀時のテーブルに突っ込んだ。

「つい、ちょっかい出したくなるんだよ」

少年は運んでいた牛乳を派手に溢し、自らの引き起こした結果に天人たちは嘲笑う。
銀時の座るテーブルは倒れはしなかったものの大きく揺れ、パフェは横に倒れ中身を溢した。

「何やってんだ新八!スンマセンお客さん!オラッ、おめーが謝んだよ」

店長は新八少年の頭を床に押し付けようと髪を掴んだ。店長の意識は天人に向いていて、銀時には視線一つ向けない。

「へぇ、俺には謝罪なしですかァ……ふざけんな?」

銀時は半分ほど無事だったパフェの容器を下に向けて空にする。横に置いていた木刀を掴み立ち上がった。

「おい」
「がふっ!」

一声かけ店長の顎に拳を叩き込むと、綺麗な線を描き飛んで天人のテーブルにぶつかった。

「なっ、なんだァ!?」
「何事だァ!」

新八というらしい少年の前を通りすぎ、天人の前に立つ。天人は銀時の姿を見て、手に持つ木刀に目を止める。

「なんだ貴様ァ!」
「廃刀令の御時世に木刀なんぞぶらさげおって!」
「ギャーギャーギャーギャー、やかましいよ。発情期ですかコノヤロー」

猫っぽい顔をした天人にパフェの容器を見せる。

「見ろコレ……てめーらが騒ぐもんだから俺のチョコパがさー、まるまるこぼれちゃったじゃねーか!」

一人目……一匹目?を木刀で叩きのめす。一撃で意識を刈り取った。

「……きっ……貴様ァ、何をするかァァ!」
「我々を誰だと思って……」
「ただの発情期の猫だろーが!てめーら少しはお行儀良くしろよ。馬鹿見て一緒になって騒ぐとか、てめーらも馬鹿だろ!」

横に薙いで二匹同時に倒す。
突如目の前に現れすべてを壊した銀時を、新八は呆然と見ていた。白い線の入った黒の縦襟半袖の服とズボンの上に、黒地に銀の流水模様の入った長着を右袖を抜いて着た格好。帯は藍色で茶色のベルトを重ねている。足元はゴツい黒のブーツと、服装だけでも目立っていた銀時は容姿も目立つ。顔立ちは人目を引く程度に整っており、持つ色彩は珍しい。髪は白で長めの前髪から覗く目は鮮やかな赤だった。何より惹かれた目は侍というにはあまりに荒々しく、チンピラというにはあまりに真っ直ぐな目。
その格好と行動のインパクトに固まっていたとも言えるし、眼差しに魅了されていたとも言える。だからその隙を銀時に突かれたのも仕方ないのかもしれない。

「店長に言っとけ。客商売向いてねぇって」

新八に言付け、銀時は店を出た。大して食べれてないしバイトくんがひっくり返したのだから、金は払わなくていいだろう。何よりそれどころではないはずだ。客の一人が警察に通報していたから。



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