02
「ふざけやがって、死ねェェ!!」

思った通り、操舵室ではないが後方へ繋がる扉から顔を隠した男が入ってきた。銀時は応戦するため姿勢を低くするが、飛びかかる前に扉が勢いよく開き、男は運悪く頭を強かにぶつけ気絶した。
扉を開けたのは黒いもじゃもじゃ頭でサングラスを掛けた男だった。

「あ〜気持ち悪いの〜。酔い止めば飲んでくるの忘れたきー。アッハッハッハッ」

朗らかに笑う男は言葉通りらしく顔色が土気色をしている。

「あり?何?なんぞあったがかー?」

まさか酔っていてこの騒ぎに気付いていなかったのか。しかしこの方言といい、もじゃもじゃといい、どうにも引っ掛かる。

「こっ……こいつァ」
「銀さん知り合い?」

新八に胡散臭そうな顔で聞かれた。こういう顔で聞かれると、何と答えたものか戸惑う。
事態は急速に動いていた。銀時が問いに答えることも行動することも出来ぬ間に、爆発音が響く。操舵室へ続く扉が吹っ飛び、煙が溢れてくる。

「うわァァァ、爆発だァァ!」
「大変だァァァ、操舵室で爆発がァ!!」
「操縦士たちも全員負傷!」
「フフ、終わりだよお前ら。天人に迎合する売国奴どもなど皆死ねばよい……」

攘夷志士の一人が意識を取り戻して言った言葉に、銀時の感情がざわつく。こういった輩は嫌いだ。考えの浅い馬鹿がいるから、攘夷志士全体の質を下げる。こいつらが目立つことで桂や高杉が動きやすくなることもあるだろうが、足を引っ張られることの方が多いだろう。高杉などはそれすら利用しているようだが、外側から見ている銀時からしたら腹立たしい。だから先程の演説は聞き流していたのに。

「っうわ!」

船が大きく揺れ、銀時たちも体勢を崩し床に倒れる。

「どなたか宇宙船の操縦の経験のある方はいらっしゃいませんか!?」

一人の乗客の言葉にハッとし、一緒になって倒れていたもじゃもじゃをひっ掴む。そのまま引きずって操舵室目指し走る。

「イタタタタタ!何じゃー!!誰じゃー!?ワシをどこに連れてくがか?」
「てめー確か船大好きだったよな?操縦くらいできるだろ!!」
「なんじゃ?おんしゃ何でそげなこと知っちょうか?あり?どっかで見た……」
このもじゃもじゃ坂本辰馬よりは変わってないと思うのだが、気付くのが遅すぎる。

「おおおお!金時じゃなかか!!おんしゃ何故こんな所におるかァ!?久しぶりじゃのー金時。珍しいとこで会うたもんじゃ。こりゃめでたい!酒じゃー!酒を用意せい!」

丁度よく操舵室に着いたので、坂本を扉に叩きつける。

「銀時だろーがよォ、銀時!いつになったら覚えんだ。俺ァ銀の名の通り金ほど沸点高くねーからな?」

宴になるのは構わないが、今そんな余裕も物資もない。飲みたければ今度地球に来た時にうちに来いと、名刺を坂本の懐に押し付けた。

「これはこれはご丁寧に。ワシは快援隊の坂本辰馬と申します」
「知ってるわァァ!!」

頭を下げる角度は美しいが、その中身は非常に残念だった。
名刺はありがたく受け取り、操舵室に入る。

「フフ、これまでか。私も艦長だ。船もろとも死のう!ああ……母なる星地球よ……もう少しでお前の懐にい"い"い"い"い"!!」
「あれ?何か踏んだがか?」
「オイ、早くしろ!」
「あちこちで誘爆が起きちゅー。船に爆弾仕掛けるなんぞどーかしとーど」
「銀さん!ヤバイですよ。みんな念仏唱え出してます」

新八と神楽が合流してきた。

「心配いらねーよ、あいつに任しときゃ……。昔の馴染みでな、頭はカラだが無類の船好き。銀河を股にかけて飛び回ってる奴だ……坂本辰馬にとっちゃ、船動かすなんざ自分の手足動かすようなモンよ」
「……よーし、準備万端じゃ。行くぜよ!」
「ホントだ頭カラだ……」

舵ではなく操縦士の足を掴んでいた。
坂本は子供に頭カラと言われて恥ずかしくないのか。銀時は恥ずかしい。坂本に期待し過ぎて恥ずかしい。
もじゃもじゃをわし掴み殴る。

「おーいもう一発いくか?お前銀さんの信頼を返せ」
「アッハッハッハッ!こんなデカイ船動かすん初めてじゃき、勝手がわからんち。舵はどこにあるぜよ?」

もう、舵の場所に見当がつかない時点で終わってるだろう。今から銀時は船に関して坂本に期待しないことにした。

「オイオイやべーぞ!なんかどっかの星に落ちかけてるってオイ」
「銀さん、コレッスよコレ!ふんぐぐぐ!アレ!?ビクともしない!」

新八が舵を見つけた。舵は半二階にあった。

「ボク、でかした。あとはワシに任せ……うェぶ!」
「ギャー!!こっちくんな。アンタ船好きじゃなかったの!?思いっきり船酔いしてんじゃないスか!」
「イヤ、船は好きじゃけれども船に弱くての〜」
「何その複雑な愛憎模様!?」

新八の横から、焦れた神楽が舵を掴んだ。力加減が未だ下手な神楽だ、危ないんじゃないかと止めに入る。銀時に触れさせるのも危ないと思ったのか、新八も銀時と神楽を止める。ここへ来て薄々感じていた最近の疑念が間違いないことに気付いた。何故か銀時は、新八からイマイチ信用されていないということに。
新八の銀時に対する認識には釈然としないが、ここは操縦士を叩き起こすべきだろう。せめて指示だけでも頼みたい。

「オウオウ!素人がそんなモン触っちゃいかんぜよ。このパターンは三人でいがみ合ううちに舵がポッキリっちゅ〜パターンじゃ。それだけは阻止せねばいかん!」

まともっぽいことを言いながら坂本が近付いてきて、一瞬止まったかと思うと舵に突っ込んできた。

「ふぬを!!」

どうやら躓いて転けたらしいが、支えとして舵を掴み、舵は重さに耐えかねポッキリと折れた。

「アッハッハッハッ、そーゆーパターンできたか!どうしようハッハッハッ!!」
「アッハッハッハッじゃねーよ、このもじゃもじゃ!!」





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