02
「第一回陣地争奪……叩いてかぶってジャンケンポン大会ぃぃぃぃぃ!!」
「「「花見関係ねーじゃん!!」」」

ツッコミの皆さんによる綺麗にハモったツッコミが入った。
しかし他に大した案も出そうにないので、沖田の案に決まる。銀時達のゴザの隣に真選組のゴザが敷かれた。神楽、銀時、妙が並んで座り、その前に沖田、土方、近藤が並ぶ。両陣営の間にはヘルメットとピコピコハンマーが置かれる。
周りを真選組の面々が囲みヤジを飛ばす。

「えー、勝敗は両陣営代表三人による勝負で決まります。新八も公平を期して、両陣営から新八君と俺山崎が務めさせてもらいます。勝った方はここで花見をする権利+お妙さんを得るわけです」
「何その勝手なルール!あんたら山賊!?それじゃ僕ら勝ってもプラマイゼロでしょーが!」

審判が揉めている時点で不安しかない。これで大丈夫なのだろうか。
まず近藤対妙は勝敗が目につく。妙の勝ちか引き分け扱いか、無効になるかだ。沖田対神楽は、沖田についてほとんど知らないため想像がつかない。となるとこの試合で勝っても負けても問題がないようにしなければならない。
銀時は平和を愛し、花見の場所がどこだろうと気にしない。だからと言って負けるのも嫌な負けず嫌いでもある。しかし勝って土方のように嫌に絡まれるのも嫌だ。

「……ふむ」

銀時は酒瓶を引き寄せ、コップに注いだ。

「オイてめェ、今から勝負って時に飲む気か」
「あん?俺は例え酔ってもてめーには負けねェよ。てめーは自信がないかもしれねーがなァ。そりゃ飲めねーわ。はっはっは」
「上等じゃねーか!!オイ、俺にもそれ寄越せ!」

銀時の挑発に乗った土方は酒瓶を奪い取りコップに注いだ。こうして陰で飲み比べが始まる。

「それでは一戦目、近藤局長VSお妙さん!ハイ!!叩いてかぶってジャンケンポン!!」

掛け声で出された手は近藤がグー、妙がパーだ。近藤はヘルメットを被る。

「おーっとセーフぅ!」
「セーフじゃない!逃げろ近藤さん!!」
「え?」

本来のルールならこの時点で近藤の勝ちだ。しかし妙はお経を唱えハンマーを振りかぶる。いち早く姉の行動に気付いた新八の警告は役に立たなかった。

「ちょっ……お妙さん?コレもうヘルメットかぶってるから……ちょっと?」

ハンマーはヘルメットに叩き落とされた。ヘルメットにはヒビが入り、近藤が昏倒する。ルール関係ない云々の前に、あのハンマーはおかしい。用意されたのはピコピコハンマーだったはずだ。誰かピコハンと普通のハンマーを入れ替えたのか。いや、妙の手にあるのは明らかにピコハンだ。なら覇気か。覇気しかない。
銀時は血の気が引いてほろ酔い気分も吹っ飛んだ。ハンマーの不思議に気付いている者は他にいないらしい。だから妙に喧嘩を売れるのだ。

「局長ォォォォォ!」
「てめェ、何しやがんだクソ女ァァ!!」
「あ"〜〜やんのかコラ」
「「「すんませんでした」」」

結局妙に食ってかかった者はすべてが土下座し、妙の恐ろしさにひれ伏した。あの行動、あの表情、すべてが恐ろしい。銀時も逆らう気にはならない。あれは魔王だ。

「えーと、局長が戦闘不能になったので一戦目は無効試合とさせていただきます」

試合結果は銀時の予想通りとなった。近藤は部下により端に寄せられ介抱される。

「二戦目の人は最低限のルールは守ってください……」

山崎が注意するのも遅く、すでに二戦目沖田対神楽が始まっていた。

「お"お"お"お"、もう始まってんぞ」
「速ェェ!ものスゲェ速ェェ!」
「あまりの速さに二人ともメットとハンマーを持ったままのよーに見えるぞ!」

今のところルールを守っているようで、残像が残る速さでジャンケンのちヘルメットとハンマー、またジャンケンと流れ作業のようにスムーズに展開している。

「ホゥ。総悟と互角にやりあうたァ、何者だあの娘?奴ァ頭は空だが腕は真選組でも最強をうたわれる男だぜ……」
「互角だァ?ウチの神楽に勝てると思ってんの?奴はなァ、絶滅寸前の戦闘種族“夜兎”なんだぜ。スゴイんだぜ〜」
「なんだと。ウチの総悟なんかなァ……」
「オイッ!ダサいから止めて!俺の父ちゃんパイロットって言ってる子供並みにダサいよ。っていうかアンタら何!?飲んでんの!?」
「あん?勝負はもう始まってんだよ」
「勝手に飲み比べ対決始めちゃってるよ……」

神楽と沖田の勝負を肴に酒を飲むが、何やら展開がおかしい。

「アレ!?ちょっと待て!!」
「二人とも明らかにメットつけたままじゃねーか?ハンマーないし!」
「なんかジャンケンもしてねーぞ!」
「ただの殴り合いじゃねーか!」
「だからルール守れって言ってんだろーがァァ!!」

互いの拳をいなすのから、いかに拳を当てれるかと防御を捨てた展開になってきている。妙のピコハン鋼鉄化より明らかにマシなので、銀時としては微笑ましい。神楽の交友関係が広がりそうで何よりだ。
しかしツッコミ体質の新八は大変である。もっとこう、おおらかに見守ることは出来ないのか。

「しょーがない、最後の対決で決めるしかない。銀さっ……」

新八が銀時に目を向けると、土方と二人酔いに呻いていた。

「オイぃぃぃ!!何やってんだ。このままじゃ勝負つかねーよ」
「心配すんじゃねーよ。俺ァまだまだやれる。シロクロはっきりつけよーじゃねーか」

自分の顔が赤くなっているのがわかるが、土方も大概赤くなっている。二人の間には濃厚な酒気が漂っている。このままならいけるかもしれない。

「このまま普通にやってもつまらねー。ここはどーだ。真剣で“斬ってかわしてジャンケンポン”にしねーか?」
「上等だコラ」
「お前さっきから『上等だ』しか言ってねーぞ。俺が言うのもなんだけど大丈夫か!?」
「上等だコラ」

注目を集める中、フラフラヨロヨロと立ち上がる。銀時の剣は地味な人が貸してくれた。

「いくぜ」
「「斬ってかわして」」
「ジャンケン」
「「ポン!!」」

出したのは銀時がチョキ、土方がパーだ。

「とったァァァァ!!」

銀時は素早く刀を振り斬った……空気を。

「心配するな、峰打ちだ。まァ、これに懲りたらもう俺にからむのは止めるこったな」
「てめェ、さっきからグーしか出してねーじゃねーかナメてんのか!!」

銀時は宙にいるらしい誰かに話しかけ、土方は定春とジャンケンしている。どう見てもただの酔っ払いですありがとうございましたな状況に、周囲は白け辺りに散らばる。各々勝手に花見を始めた。

「……はァ〜飲み比べとか酒がもったいねーわ」

誰の視線もなくなったので、銀時は弁当のあるゴザへと戻る。酒は味わって飲みたい派なので、例え安い酒でも普段ならしない飲み比べは凄く勿体無かったと思う。
団子を片手に、一人チビチビと酒を飲み始める。

「おっ。いいねェ」

花びらがひらり、酒に浮かんだ。




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