B組の朝

 
テリウス市に在るこのテリウス商業高等学校は個性的な生徒達が通っている事で有名である。
中でも2年生ーーー、特に2年B組は学校内でも特に騒々しい。



「おはよー。」
この物語の主人公である少女ユウキ。
真面目な性格で先生からの支持も厚い。
勉強も運動も秀でたところは無いが、誰にでも心優しく、穏やかな性格。
特徴は、幼い顔つきに似合わない一際大きな胸。
大きい瞳をしていて頬は常に桜色だ。


「あっ!ユウキおはようっ!!」
「きゃっ!」

挨拶をして教室に入ってきたユウキを見るなり抱き着いてきた少女はワユ。
B組のトラブルメーカーで、クラス一喧しい。
ずば抜けた運動神経の持ち主でその能力は男子にも劣らず、特に足が早い。
明るい性格で常にテンションが高い。
飛び出たあほ毛と、大きな緑色の瞳が特徴。

それと―――、

「いやぁ〜今日もユウキの胸は揉み応えがあるねぇ〜!」
「ちょっ、や、やめてぇ…。」

少々レズっ気がある。
ユウキの胸がお気に入りらしく隙あらば揉む。


「ぬぅぅぅぅぅぅん!」
「わっ?!」

独特の唸り声を上げてユウキたちの側まで猛ダッシュでやってきた巨体の男。
タオルをハチマキの様に巻き、ボサボサの蒼い髪の毛が特徴。
制服の袖を肩の方まで捲り上げ、鍛えられた筋肉が露になっている。

―――彼こそが、B組の室長であり、学校一の問題児、アイクである。
因みにユウキとは恋人同士で一年の頃から付き合ってるがとにかく彼女バカ。ユウキの事になるととにかく周りが見えなくなる。

「あっ、出たなたいしょー!」
「ワユ、ユウキの胸は俺のだ!」
「たいしょーだけズルいよ!あたしだってユウキの胸揉みたいもん!!」
「ちょ、ちょっと二人とも〜」

朝からわけのわからないやり取りで喧嘩を始める二人。
アイクとワユは同じ剣道部で、常に一緒に居るくらい仲が良いが二人ともユウキの事となると途端に張り合う。


「…じゃあ、勝負だ!たいしょーっ!ユウキを掛けた本気の勝負だー!」
「望むところだ、……向かってくる奴には容赦はせん!」

ロッカーから箒を取り出し二人は剣道の構えをとる。

「やめてよ〜。」
「朝からユウキがヒロインになってるぜ。」
けたけた笑いながらユウキを指差しているのはボーレ。
B組のムードメーカーで濃い緑色の髪が特徴だ。
制服の中に赤いTシャツを着ている。
此方もアイク並みに鍛えられた巨体が特徴。


「笑ってないで助けてよボーレぇ…。」
「ま、取り敢えずこっち来て避難しろよ。」

ユウキを手招きしたのはライ。
B組の中で独特の雰囲気のある男子だ。
変わったフードを被っており、空色の髪とオッドアイが特徴。
常に飄々とした態度だが成績は上位でこのクラスの副室長でもある。

「うん…。」
ユウキはライ達の方に避難する。

「いざ、尋常に勝負!」
「ぬぅん!」
そして、アイクとワユの戦いの火蓋が切って落とされた。
箒をカンカン叩き付けて二人は戦う。

「さぁ〜始まりました毎朝恒例のユウキ争奪戦!アイクの箒が壊れるか、ワユの箒が折られるか〜?!」
「俺はアイクの箒が壊れると思うぜ」
ボーレの実況じみた語りにライが笑いながら答える。
「も〜。」
ユウキはただただ困り果てた顔をした。

「おはようございます。……アイクもワユも何故朝から箒を振り回しているんですか。」
教室に入って来るなりアイクとワユを見て呆れ果てた顔をする美少年はセネリオ。
クラス一の秀才だがクールで現実主義者。
長い黒髪と赤い瞳が特徴。

「ぬ?セネリオか、今ユウキを掛けてワユと決闘をしている。」
「そうだよっ!覇権を掛けた勝負なんだからぁ!」
「……その勝負、昨日もやってませんでしたか。」
セネリオは盛大に溜め息をついた。

「おはようございます。」
その後ろからやって来たのはエリンシア。
クリミア市議の娘でかなりのお嬢様だが何故か公立高校であるテリウス商業に通っている。
琥珀色の大きな瞳と緑色のロングヘアーが特徴。
おしとやかな性格。

「まあ、アイク様にワユ様、朝から元気ですわ。」
「迷惑です。」
「じゃあ止めてよ〜。」
「嫌です。」
微笑ましくアイクとワユを見ているエリンシア、ユウキにさらりと返すセネリオ。

「あ…みんなおはよう……。」
フラフラした足取りで教室に入ってきたのはキルロイだ。
クラス一身体が弱く、大抵熱を出すなりなんなりで保健室に行っている。
今日も今朝から体調を崩したらしく一番遅くに教室に来た。
橙色の髪の毛が特徴で、年中長袖で過ごしている。

「あっ、キルロイ大丈夫?」
「うん…ありがとうユウキ。」
ユウキとキルロイは一年生からの親友で、普段から互いを気にかける仲だ。

「あっ!!キルロイさんおはよー!!!」
「ワユさん…元気だね。」
「うん!!!今たいしょーと覇権を掛けた勝負してんの!!!!」
「あはは…。」
「二人ともそろそろ止めないと〜」
「無駄ですよユウキ、あの二人に何を言っても聞き入れませんから。」
「うーん…。」
セネリオの制止に困った顔をするユウキ。

「キルロイさん見ててねあたしの雄姿!!」
「あの…ワユさん……あんまり張り切ると箒が…。」
ワユはキルロイが大好きなためやたら張り切る。

そして―――、
「たいしょーくらえー!あたしの奥義!!流星!!!」
「ぬぅ!!」
ワユがそう言い放って技をアイクに思いっきり箒を叩きつけた途端…。


バキイッ!!!!


ワユの箒が良い音を立てて真っ二つにへし折れた。


「「あああっ!!!!?」」
その場に居た全員のほとんどが驚嘆の声を上げた。

ワユの渾身の一撃をアイクが全力で受け止めた結果である。
二人の馬鹿力に耐えられなくなった箒は無惨な姿だ。

「折れちゃった☆」
「何やってるんですか。」
テヘッと舌を出してウインクするワユにセネリオは本気で呆れ果てた。

「もう知らないっ、二人とも先生に怒られるよ!」
ユウキは頬を膨らませながら二人を叱る。
「はは、すまんすまん。」
「まあ先生来るまでに隠しちゃえば〜。」
ユウキのお叱りに全く動じないどころか笑いながら子供をあやすような態度を取る二人。
だが、そんなアイクとワユの余裕の表情は束の間だった。

「先生がなんですって?」

「ぬ。」
「あっ。」

二人の後ろで仁王立ちになりながらどすの聞いた声を掛けたのは―――。

教師ティアマト。
情報処理の担当で、B組の担任。
生徒指導担当も兼ねており、怒らせるとかなり怖い。
赤い長髪を後ろで編み込んだ髪型が特徴。


「また箒を壊したのね、アイク、ワユ。」
「ぬ、ぬ…。」
「えーとこれはその……。」
慌てふためく二人を他所にティアマトは大きく息を吸い込んだ。


「いい加減にしなさ――――――い!!!!!」



ティアマトの怒鳴り声が朝一番、テリウス商業中に響き渡ったのだった。










(…あいつは相変わらず鬼だな。)
(ティアマト先生怖いー。)
(貴方たちが怒らせてるだけですよ。)
(セネリオも廊下拭き手伝ってよー!)
(学校中拭かないかんのだぞ!)
(まあ二人に課せられた罰ですしせいぜい頑張ってください。)










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