▽ 俺が手に入れたかったものは
お前にあんな顔をさせたのは、俺が弱ったからだろう。
「源田!源田ッ!!」
世宇子に大敗して無様に負けた俺は自分の力では起き上がれない程ボロボロにやられていた。
薄ら目を開ければ優姫が涙をぽろぽろと零して俺を呼んでいた。
あの強気でクールな優姫が、取り乱して泣いていた。
胸が痛くなった。
俺に、俺にもっと力があればーーーー、
もうあいつにあんな顔はさせたくない。
心の弱い部分を全て不動に突かれた。
力さえあれば全てを手に入れられるーー。
あいつの笑顔も勝利も全てが掴めるなら俺は…
悪魔に魂を売ってしまった。
エイリア石を手に入れた俺は全てを掴める気分だ。
拳を握り締める。
「うるせーな、なんだよオマエ!」
「ここに源田と佐久間が居るんでしょ?!通しなさいよ!」
聞き覚えのある声に向かって歩を進めた。
「! 源田!!」
俺を見るなり優姫は声を荒らげた。
「アンタこんな所で何してんのよ?!早く帰るわよ!」
「帰らない。俺はここでサッカーをやるんだ」
「ふざけないで!アンタまさか影山に従ってるんじゃないでしょうね?!」
「優姫…何をそんなに怒っているんだ?俺は強くなった、もう以前の無様に負けるような俺じゃない。…そうだろう?」
「目を覚ましなさいよ!」
優姫の平手が頬に飛んできた。俺は優姫をじっと見つめる。
優姫は怯えたような目で見ている。
「ーーーッ…」
「俺は勝つことで今が正しいと、総帥が正しいと証明してみせる」
「……んで…」
小さく震えた声が耳に残る。
「なんで………よ………」
「ハイハイ、邪魔するならオマエには退場してもらうぜ?」
「くっ…」
「不動。優姫と二人で話がしたい。外れてくれないか?」
「ったく、何を話すことがあるやら。早くこの女を追い出してくれよな」
不動は不服そうに頭の後ろで腕を組んでどこかへふらっと消える。
「何がそんなに不満なんだ」
「全部よ…。影山に従う源田なんか…あたしの知ってる源田じゃない…っ」
俺は優姫を押し倒す。
「や……っ?!」
あっさりと優姫は床に倒れる。こんなに呆気なく、あの優姫が。
「力が全てだ」
「ぁ……」
「お前をようやく護れるだけの力が手に入ったんだ」
「やめて…」
「誰にも渡さない…鬼道にも…」
「やめ………ッ、」
首筋に唇を、舌を這わせながら秘めていた想いを露わにする。
「………っ、……う、ぅ………」
「!?」
優姫の頬から熱いものが伝う。
顔を見れば泣いていた。
「な…ぜだ……」
「っ……ひっ……こんなの………源田じゃ………ない………うぅ………」
「…………」
頭が真っ白になった。
こんなつもりじゃ…無かったのに。
「ーーーぐゥ…ッ!!」
頭が割れそうになった、俺は間違っているのか?
俺が欲しかったのはこんな優姫じゃない。
優姫にこんな顔をさせたかったんじゃない。
だが今更引き返す訳にはいかない。
考えを振り切れば頭痛は収まった。
「ッ……ハ………」
優姫から離れる。
優姫が手に入らないなら勝つだけだ。
どんな手を使ってでもな。
「げ…ん……」
起き上がる優姫を部屋に取り残して部屋を後にした。
「いやだ…うぅ………。誰か…たすけて……有人………」
やはり、優姫は鬼道を呼ぶんだな。
あいつに勝って奪うしかない。
心まで手にいられなくても…。
2019.04.22.
源田病みすぎでは????(空気ぶち壊しセルフツッコミ)
真帝国の源田夢がありますよねえ…。
もし優姫の存在があったら、きっともう一つの闇落ちの理由なんじゃないかなって昔から妄想してるんですよね。
今まで秘めてた想いが解放(爆発?)されてしまう、歪んでいく源田、正直クッソ萌えますウフ。
ちょっとわたし真帝国源田好き過ぎるんで色々また書くと思います。ハイ。
←